そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらいました。
なぜ、「10年後も持っている」と考えるのか―――。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてきます。
タレント ユージ
1987年9月9日、アメリカ合衆国フロリダ州マイアミ出身。2004年よりファッションモデルとして活動し、現在モデル、タレント、俳優として幅広く活躍中。現在、フジテレビ「ノンストップ!」、CBC「ゴゴスマ」、文化放送「なな→きゅう」などにレギュラー出演中。3児の父でもあり2016年にベストファーザー賞、イクメンオブザイヤーをW受賞。趣味は車、DIY、イラスト、ゴルフ。
公式YouTubeチャンネル:「ユージのDIY HERO」
Instagram:yujigordon
10年後も手放さないモノ
妻からもらった“いい時計”30歳の誕生日に、妻がプレゼントしてくれたロレックスの「デイトジャスト」。
「大人になったら、いい時計を」なんて言いますが、僕の場合もともと時計は好きで、当時もこれよりいい時計しか持っていなかった(笑)。でも、どれも主張の強いものばかりだったので、「仕事では、ほどよく落ち着いたものを」と贈ってくれたわけです。
それからは、気づけば毎日着けていて。それくらい気に入っています。休みなく使っているので、これじゃ10年モタないかもしれません(笑)。
ロレックスには刻印サービスがあるので、名前や誕生日を入れることもできたのですが、やめておきました。正直に話すと、「いつか売るかも……」なんて、やましい気持ちがよぎってしまって(笑)。当然、いまとなっては、売るなんてもってのほか。なんなら、いつか息子に譲るのもいいかな。そんな風に思っています。
時計もしかり、人から人へ受け継げるモノには、とりわけ価値を感じます。また、ボロくなっていくモノにも。この時計も、気兼ねなく使って、どんどん表面に傷をつけて、ツヤをなくしていきたい。それが、僕と歩んだ人生なので!
「もし、ジョン万次郎がデニムを作ったら?」そういう意味では、デニムも好きなモノのひとつ。たくさん持っていますが、1本ウン百万もするようなヴィンテージではなく、むしろ自分で育てていくのが好き。
このデニムも、すでに価値のあるデニムというわけではありません。でも、ものすごくおもしろい1本。その名も、「ジョン万デニム」。
デニム界では名の知れた、藤原さんというレジェンドがいて。これは、とにかくデニムを愛する彼が作ったデニムなんです。コンセプトは、「もし、ジョン万次郎がデニムを作ったら」。当時使用していた機械や技術を総動員して作られた1本です。
たとえば、あえて質の劣る昔の織り機を使うことで、白い糸がほつれたような生地に。コインポケットも、本来の用途である懐中時計が入るリアルな大きさに。
また、当時はサスペンダー文化だったので、もちろんウエストにはボタンがあって。そしてベルトループは、「数年後に後付けしたイメージ」で、ボディーとは違った少し新しい生地で取り付けられている。
なんて具合に、とにかく変態的なこだわりっぷり。作業着としての当時のディテールを、完全再現しているんです!
デニムは好きとはいえ、じつは履く頻度としてはそれほど多くないんです。でも、とにかく味を出したいから、座ったときにできたシワの表面を、わざと手でさすっちゃったりなんかして(笑)。はやく育っていくといいなぁ。
所ジョージさんから、馬好きの娘たちへ
アメリカで1919年に創業した、LOUIS MARX & CO.というメーカーの、馬のおもちゃです。つまり、いま100歳になるようなひとたちが、遊んでいたモノ。夢がありますよね。
当時のプラスチックって、とても脆いんです。同じような馬のおもちゃはメルカリやAmazonで出品されていますが、たいてい、足が折れてしまっている。この保存状態は、めちゃくちゃレアだとか。
じつはこのおもちゃは、所ジョージさんにいただいたものなんです。
以前、家族で世田谷ベースにお邪魔したときのこと。
本当にいろいろな珍しいモノがあるので、小さい娘ふたりにとっては、おもちゃ屋さんさながら。娘たちは乗馬を習っているので、とくに馬のおもちゃに大はしゃぎ。「おうまさんだ~!」なんて言っていると、「馬好きなの?」と所さん。「しょうがねぇな~」と、ふたりにひとつずつプレゼントしてくれたんです。
すると、「そこにもおうまさんがあるー!」と、つぎつぎに見つけちゃって……。「あんだよぉ、見つけるね~!」なんて言いつつ、結局、そこにあった馬のおもちゃをほとんど全部くれました(笑)。
ということで、この馬以外にも、小さいのが家に10頭ほど。長女が午年(うまどし)なので、個人的にもなにか馬にまつわるモノを置きたいとは思っていましたが、所さんにこれ以上ないモノをいただいてしまった。
とはいえ、どんなに珍しいヴィンテージだろうが、娘たちにとってはただの馬のおもちゃ。家で雑に遊んでいるので、すでに4頭くらいは足が折れちゃっています……。所さん、ごめんなさい。
妻と工房で制作した結婚指輪
「長くつけるものだからできるだけシンプルなものを」と、結婚指輪は自分たちで作りました。工房に行って、僕が妻の指輪を、妻が僕の指輪を。でもこの指輪には、あるエピソードがあって……。
以前、妻と大喧嘩したときのこと。喧嘩の終盤になって、妻が「わたし、あなたのこと本当に好きじゃないの。ちなみに結婚指輪だって、もうずっと前から着けてないんだから!」と決め台詞を放ったんです。指輪はずっと前に捨ててしまって、もうどこにあるかもわからない、と。
いま起こっているこの喧嘩が、じつは妻のなかではずっと前から起こっていたこと。そして指輪をしていないことに、気づきもしなかったことに、僕はいよいよショックを受けて。
「おれひとりで指輪してるなんて、バカみたいじゃん!こんなの要らねぇ!」と、すぐさま指輪を捨てました。焦った妻が「ちょっと待って!!」と言ったときには、もう指輪の行方はわからず……。
じつは、指輪を捨てたというのは、妻のその場の思いつき。本当は捨ててなかったんです。たまたま前日外してそのままだったのを喧嘩中に思い出して、ヒートアップさせようと思って言っただけだったらしくて。
結局、僕の指輪は見つからずじまい。次の日になって、妻が「あの工房に、もう一回行こうか」と提案してくれました。
だから、これはふたつ目の結婚指輪なんです。妻によると、最初に作った指輪より上手くできたそう(笑)。“結婚指輪”っていうだけでも特別なモノですが、そんな思い出も詰まっているので、なおさらです。
いいパパになるための、意外な秘訣
ベスト・ファーザー イエローリボン賞(以下:ベストファーザー賞)を受賞したのは、2016年のこと。ちょうど、次女が生まれてすぐの頃ですね。僕は28、9歳で、じつは史上最年少での受賞でした。それだけに、ちょっと特別なうれしさもあります。
若くして受賞するのはけっこうハードルが高くて、というのも、その時点で“いいお父さん”になっていないといけないから。僕の場合はちょっと特殊で、結婚も早かったし、おまけにその時点で子どもが3人いた。もしかすると、今後10年は破られない記録かもしれません。
妻はこのトロフィーを、デザイン的に気に入っているようです。ちょっとオスカーっぽいところがお好みらしくて。ほかにもトロフィーをいくつか持っているなかで、飾られているのは、コレと僕がボーリング王決定戦で優勝したときのトロフィー。めちゃくちゃボーリング好きなひとみたいで、恥ずかしいんですよね(笑)。
でも、ベストファーザー賞を受賞したときになにが気まずいって、家族に報告するとき。受賞して家に帰った日に、「お父さん、ベストファーザー賞採ったぞ~!」なんて、さすがに胸張って言えません(笑)。
それでも、最初に妻に話したときに、「なんであなたが?」って言われたのは、けっこうショックでした(笑)。すぐに、「でも、よかったじゃん」と言ってくれたので、ホッとひと安心でしたが。
とはいえ当時は、僕自身も「おれ、“ベストファーザー”にふさわしいのかな?」とは思っていました。その反面、「もらったからには、そうならなきゃ」と背中を押されもした。急に、「掃除機かけようか?」とか無駄に張り切ったりなんかして(笑)。
いまでは、考えずにできることもあるし、ちょっとナアナアになってきて、改めてしっかりしなきゃと思う部分も。このトロフィーを見るたびに、自分を振り返ることができています。
自分で言うのもなんですが、親子関係は、けっこうハッピーなんじゃないかと思っています。5、6歳になる娘たちも、いまだに「パパ、だいすき〜」なんてしょっちゅう言ってくれていますし。子どもたちとのコミュニケーションは、本当に大切にしています。
「いいお父さんであるためには?」なんて質問も多いですが、僕が思うに、秘訣は“妻のケアをすること”だと思います。妻に気遣いをしたり、大好きと伝えたりすること。
子どもって、パパもママも好きだから、ふたりが仲良くしていれば、それだけで意外と幸せを感じられたりする。たとえパパもママも100%ずつ子どもたちに愛情を注いだからと言って、子どもがそれをぜんぶ受け取れるかというと、そうでもないんじゃないかな。
そういう意味では、子どもが生まれるまえから、“いいお父さん”になる準備はいくらでもできるんじゃないでしょうか?
タレント ユージさんの10年後
10年後というと、息子が27歳。27歳というと、僕は結婚して、娘も生まれている歳……なんだか、不思議な感じですね。
ふたりの娘たちは高校生になっています。「パパ、しゃべりかけないで」なんて、思春期の彼女たちに悩まされてるかも。「小さい頃はパパ、パパって大好きだったんだよ!」なんてザラですから、僕も油断できませんね(笑)。
仕事面では、たぶんなにかしら自分の会社を動かしているんじゃないかな。建築にまつわる会社かも。もともと鳶や土木の仕事をしていたこともあり、最近はDIY系の仕事をいただくことも多くて。
助っ人として地元の仲間たちを呼んだりもするのですが、内装ならコイツ、水道ならコイツ、なんて、なんだかアベンジャーズみたいで(笑)。会社にしたらおもしろいだろうなって、たまに考えているんです。
Photographed by Shinichiro Oroku