真夏の河川敷には、数日後に開催される花火大会の準備をする人、日光浴をする人、散策する人などが集まっていました。
その多摩川沿いの2階建て一軒家に、大森和悦さん、陽子さん、結人くんご家族が暮らしています。
名前:大森和悦さん、陽子さん、結人くん職業:株式会社ノハナ代表取締役社長(和悦さん)
場所:東京都狛江市
面積:102.06㎡
築年数:30年(2年前にリノベーション)
住宅の形態:一軒家
費用:購入金額3,000万円台、リノベーション費用約2,500万円
築30年の物件をリノベーションした大森さんの住まいは、多摩川の穏やかな流れのようにゆったりとした時間が流れていました。
お気に入りの場所
開放感たっぷりなキッチン陽子さんのお気に入りの場所は、木とステンレスのコントラストが印象的なキッチン。
前後に窓があって、開放感たっぷりです。
「元々は普通の部屋だったところをリノベーションの際にキッチンにしたんです。広く使いたかったので、壁や柱を可能な限り抜きました。
壁や床の木が濃い色なので、シンクはsanwaのステンレスタイプのものにしました」(陽子さん)
シンクには食器用の水切りカゴがありません。代わりに使っているのは篠竹のカゴでした。
「水切りカゴは邪魔ですし、水垢問題もあってオシャレじゃないなと思っていたのですが、あるカゴ屋さんのサイトを見ていたら篠竹のカゴを水切りとして使っているのを見て真似しました。
食洗機で洗えるものは食洗機で、洗えない食器は洗った後に篠竹のカゴに入れて乾かします」(陽子さん)
デザインと実用性を両立させた棚シンクの後ろには、蒸篭が主役のように置かれた飾り棚が。
「蒸篭を置きたかったので、サイズを合わせて棚を作ってもらいました。好きな古い和物やアフリカの雑貨を中心に置いています。
意外に和物とアフリカの雑貨って相性が良いんです。この棚は、デザインと実用性を兼ねるように設計してもらいました」(陽子さん)
食器類はこの飾り棚の下にあるバックカウンターに収納しているそうです。
「ブルー系の食器が好きなんです。野田琺瑯なども持っていますが、食器はできるだけ安くていいものをと思っています。
200円とか、安くて素敵な食器を探すのも楽しいですよ」(陽子さん)
便利なカウンターテーブルそして、キッチン奥には調理スペースにもなるカウンターテーブルが!
「中に鉄板が入ったベニヤ板でできています。出窓に座れるようになっているので、ここでお茶や食事もできるんです。
でも最近は、お酒を飲みながら餃子を作ったり、何種類も食事を作っている時に料理を置いたりしていますね」(陽子さん)
部屋も川も見渡せるリビングキッチン前のダイニングチェアに座ると、正面の壁に飾ってある結人くんの写真がよく見えます。
ここが和悦さんのお気に入りの場所。
「結人が2歳か3歳のときにプロカメラマンに撮ってもらった写真を見ながら過ごしています。
仕事で帰りが遅くなるときはここで食事をしますが、写真を見ていると子供と一緒にいるような感覚を得られるんです」(和悦さん)
窓際でのひと時「朝起きると窓際に座って、ぼーっと川を見ています。窓を開けると風が通って気持ちがいいんです!」(和悦さん)
多摩川一望の屋上和悦さんが「ここが気に入って家を買った」と仰っていたのが、多摩川を一望できるこの屋上。
虫の音を聴きながら風を感じることができる自慢の屋上は、気持ち良すぎてしばらく屋上で佇んでしまうほど。
「夏は多摩川の花火大会がここから見えますし、秋も気持ちいいいですよ。眺望を邪魔しないように、屋上の柵は太さや間隔を変更しました。
週末などにはバーベキューもしますが、火は使えないので、電気式のバーベキューコンロを使っています」(和悦さん)
この取材の数日後には多摩川花火大会が行われる予定ということで、もう待ちきれないといった様子の和悦さん。
誰にも邪魔されずくつろぎながら花火を眺められるのも、ここに住んでいる人の特権ですね。
この家に決めた理由
和泉多摩川で暮らす前は東中野のタワーマンションに住んでいたという和悦さんと陽子さん。
「その頃、結人はまだ生まれていなかったのですが、これから子供を育てていくとしたら地に足をつけて、自然の多いところで暮らしたいと思ったんです。
色々見た中で和泉多摩川はどこへ行くにも便利だったので東中野から引っ越して、分譲マンションで暮らし始めました」(和悦さん)
「住んでいたマンションに不満はなかったんです。一軒家は手間がかかりそうだなぁとも思っていたくらいですから。
ただ、妻とは、『もし仮に一軒家に住むとしたら唯一無二の物件がいいね、川沿いだったらもっといいかも』と話はしていました」
「そんな中、たまたま不動産屋の前を通りかかったらこの家のチラシが出ていて。その日のうちに内見したら屋上からの眺めがすごく良くて惚れてしまいました。
都会にいるんだけれど、自然を身近に感じられるような環境だと思ったんです」(和悦さん)
「内見したものの、一軒家だと家事が増えるなぁと思ったので買うのはやめようと言ったんです。
でもそれから夫の落ち込みようがすごくて(笑)。それを見ていたら、もう買ってもいいかなぁと思うようになりました」(陽子さん)
晴れて和悦さんの念願が叶い、2016年6月に購入。
それから半年間は建築士さんとリノベーションに向けての打ち合わせを重ねました。
色々な課題を乗り越える楽しさ「子供の友達のお父さんが建築士さんで、その方にリノベーションをお願いしました。センスが良い方で、私たちの好みやセンスを察して提案してくれたのでスムーズでした。ただ、工事に入るまでが大変で……。
買ってから分かったのですが、基礎が傾いていたんですよ! でも難題にぶち当たるたびに、建築士さんが色々なアイデアを出してくれたので安心して任せられました」(陽子さん)
「当初、リノベーション費用は1,500万円の予定だったのですが、基礎の問題などもあって最終的には2,500万円になりました。
収納が少なかったので工夫しつつ、譲れないところなどを話しながら進めていきました」(和悦さん)
様々問題をクリアしながら工事を進め、2017年4月からこの家に住み始めた大森さんご一家。
その当時はまだ玄関やベランダ、外装などができていない状態だったそうです。
「以前住んでいたマンションの退去日が決まっていたこともあって、住みながら工事を進めていたんですよ。でも自分たちで作り上げていったのが楽しくて。インテリアは私主導で決めました」(陽子さん)
「マンションは決められたフォーマットの中でいかに住むかなので、自分たちができることは少ないですが、この家は好きなように作ったので居心地がいいです」(和悦さん)
残念なところ
夏は暑くて、冬は寒い「できる限り断熱してもらいましたが、もともと古い一軒家なのでマンションと比べると夏は暑くて、冬は寒いんです。
でもそれを補って余りあるほど、心が豊かになるものがこの家にはあります」(和悦さん)
「冬は寒いとはいえ、晴れた日は暖房をつけなくても暖かいんです」(陽子さん)
虫や雑草が多い「蜘蛛が多いんです。住んで1年目はびっくりしましたが、2年目からは慣れました。自然の恩恵を受けている感じ(笑)」(陽子さん)
「春には草むしりをしまくっていましたが、今年はもういいやって諦めました。自然の雑草の生命力ってすごいんですよ」(和悦さん)
お気に入りのアイテム
レトロなお裁縫箱5年ほど前にCoBRooというブランドを立ち上げ、アフリカの布を使ったアクセサリーを作っている陽子さん。
それを作る道具を入れるためのレトロなお裁縫箱は、アンティークの家具屋さんで見つけたそうです。
「ネットで買ったのですがなかなか売っているところがないんです、このお裁縫箱を作れる人が1人しかいないみたいで……。火事になったら多分これを持って逃げると思います」(陽子さん)
サンゴミズキで作った飾り奥の壁にある丸い飾りは、冬になると枝が赤くなる植物・サンゴミズキを使って陽子さんが手作りしたもの。
「もともとここに紙粘土で作った鳥を飾っていたのですが、かわいくなりすぎてしまったんです。もうちょっとかっこよくしたくてこの飾りを作りました」(陽子さん)
フォトブックケース結人くんの写真に溢れている大森さん邸。和悦さんが気に入っているのは、結人くんの写真を飾ったフォトブックケース。
実はこれ、和悦さんが代表を務める株式会社ノハナのもの。
「Hacoaさんとコラボした木のフォトブックケースは、職人さんが1個1個手作りしています。
今はもう販売はしていないのですが気に入っています。中に1年分のフォトブックが入るようになっていて、その時の気分によって表紙を入れ替えられます」(和悦さん)
アイラーセンのソファ窓際に置かれたソファはACTUSで購入した、アイラーセンのストリームライン。
座りながらゆったりと足を伸ばすことができて、とても気持ちよさそうです。
奥様がインテリアの主導権を握っていましたが、このソファだけは和悦さんが決めました。
「窓枠にお酒を置き、ソファーに座って外を見たり、テレビを見たり。夜はここでそうしていると心が落ち着きます。
河川敷を歩く人と目があうことがありますが、気にしません」(和悦さん)
「近所に住んでいる友達から、『ご主人、窓辺でお酒を飲んでたね』とLINEがきたりするんです(笑)」(陽子さん)
暮らしのアイデア
見せながら実用的に収納以前住んでいたマンションは収納が少なかったそう。その分、この家では収納を増やしたかったといいます。
「テレビ台、本棚など、収納家具をオーダーしました。以前住んでいたマンションは狭かったので見た目にこだわれなかったんです。
今は収納が2倍に増えたので、見せることも意識しています。どうしまうかより、どう見せながら実用的に収納するかがポイントですね」(陽子さん)
手紙やおもちゃなどは、カゴや箱にしまう「おもちゃなどごちゃごちゃしやすいものはカゴに入れ、上から手ぬぐいを被せて隠してしまいます」(陽子さん)
インテリアの色に合わせて、小物を柿渋で染める100均で買ったうちわ、布巾、植木鉢、ティッシュ箱などは、床や壁の色に合わせて陽子さんが柿渋で染めたそうです。
「染め物に挑戦したかったのですが、藍染は大変で。柿渋は粉を水で溶けば染められるので手軽なんです。ラワンの家具や、床に柿渋の色が合いますよね」(陽子さん)
これからの暮らし
「今回リノベーションして、家を変えていく過程が楽しかったんです。でもそれがなくなったので、今は小物をちょこちょこ変えています。
もう少し余裕がでてきたら、今回のリノベーションで変えなかった外壁も変えていきたいです」(陽子さん)
「これから子供が大きくなったら、もう少しスペースが欲しくなりそうです。できたら近くに離れでも作って、サウナとトレーニングルームが作れたら最高だなぁ。
この家も屋上はまだ色々できそうなので、うまく利用していけたらな、と思っています」(和悦さん)
インタビューの最後に、「家を考えるって、人生を考えることなんだと思いました」と話していた陽子さんの言葉が印象的でした。
都会にいながら自然とともに暮らす大森さんご一家は、想いを込めて作った家で、心豊かに過ごしていらっしゃいます。
これから結人くんが大きくなったら、また暮らし方が変わる日が来るかもしれません。
その時にどのような選択をされるのか、また取材に伺えたらと思います。
Photographed by Kenya Chiba
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