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これからの「銭湯文化」とは?昼休み銭湯、銭湯で二次会…新しいアイデアを探る

2017/12/15 17:00 投稿

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12月9日、“銭湯文化を考える”というテーマのもと、渋谷・未来を作る実験区100BANCHにて「『東京銭湯文化夜』 混浴 with TOKYO SENTO」が開催!

ゲストとしてイベントに招かれたのは、本業であるデザインを主軸に「Tokyosento Inc.」代表取締役番頭として活躍する日野祥太郎さん、銭湯文化を世界中に広める「銭湯大使」ステファニー・コロインさん、そして、銭湯と暮らしの新しい関係を提案する「銭湯ぐらし」を立ち上げ、「銭湯つきアパート」の企画運営を行う加藤優一さんの3名。

これからの銭湯文化について、ゲスト3名と約100名の参加者、そしてROOMIE編集長である武田俊とともに考えていくイベント。今回はその模様をレポートする。



会社というかたちで、継続できる運営スタイルを示したい

武田俊(以下、武田):個人的には、「最近、銭湯って面白くなってきているな」と感じています。生活需要ではなく、銭湯を“楽しく使う”というような流れが、若者の間にも広がっていますよね。そんな、現在の銭湯のあり方について考えるために集まってもらったゲスト3名ですが、銭湯との関わり方は三者三様。まずは、それぞれの活動内容について聞いていきたいと思います。

早速ですが、トップバッターの日野さん。「東京銭湯–TOKYO SENTO –」というメディアの運営について、聞かせてください。

日野祥太郎(以下、日野):僕自身がデザインの出身なので、「東京銭湯–TOKYO SENTO–」というメディアでも、基本的にはそういった観点からの発想が多いかなと思います。例えば、改修によっては何千万という費用が掛かるこの業界で、それぞれの銭湯がなかなか特徴を出しにくいという問題がある。ただ、デザインの力で、ハードではなくソフト面の改修を行えば、それほど費用をかけずにPRや集客に繋げられます。そういった可能性を示していきたいと思っているんです。

武田:銭湯を“空間メディア”と捉え、さまざまな銭湯にデザインワークを施す活動も行っていますよね。そのようにメディアを通して銭湯に関わっていきながら、一方、「喜楽湯」では自らが銭湯を経営する側に回っています。大きなチャレンジだと思うのですが、きっかけは何だったのでしょう?

日野:メディアとして外から銭湯を訴求するだけでは変えられないことの多さに気付いたからです。内・外の両面から関わっていくことで、例えば関連業者さんだったり、銭湯を取り巻く環境自体もアップデートすることができる。また、「喜楽湯」の運営を始めることになったタイミングで「東京銭湯–TOKYO SENTO–」を法人化しています。銭湯って、ほとんどが家族経営なんです。だから、後継者や資金の不足、新しい発想の枯渇が問題になっている。うちは会社というかたちで、継続して経営していけるようなスタイルを示していきたいと思っています。外からの知見や実験的なことを、どんどん入れていきたいんです。

ひとりひとりに合う銭湯が、きっとある

武田:ゲストのなかでいちばん多くの銭湯を見てきているであろう「銭湯大使」のステファニーさんには、実際に現場で見聞きしたことなどを中心にお話を聞きたいと思います。まず、初めて入った銭湯は、どちらだったのでしょう?

ステファニー・コロイン(以下、ステファニー):豊島区の「妙法湯」でした。その頃は交換留学で日本に来ていて、銭湯が何なのかもわからないまま、友達に誘われてついていったんです。初めて行ったその日に、それから毎週リピートしてしまうほど、銭湯の魅力にどっぷりハマってしまいました(笑)。日本語がそれほどできなかった頃なのですが、まずオーナーがやさしく話しかけてくれて、すぐに常連さんともコミュニケーションをとるようになって。そうやって銭湯を好きになっていきながら、同時に、そんな素敵な場所が次々と無くなってしまっているという現状を、なんとかしたいと思うようになったんです。

武田:それで、「銭湯大使」としての活動をはじめたわけですね。個人的には、著書『銭湯は、小さな美術館』のテーマでもある“アートと銭湯との関係”には、ハッとさせられました。それまで銭湯をそんな風に見たことがなかったので……。銭湯ってどうしても、“古臭い”といったネガティブなイメージがつきまとうように思います。

ステファニー:銭湯一軒ごとに設備やインテリアの違いがあって、そういった点も、銭湯の魅力のひとつだと思っています。わたしのインスタグラムでも、アートの視点で毎日いろんな銭湯を紹介しています。特に地方の銭湯には、その土地の文化が表れていたりして、とても興味深いですよ。また、最近はデザイナーズ銭湯というのもあるので、「古臭いのが苦手」という人はそういったところから入ってみるといいかもしれません。ひとりひとりに合う銭湯が、きっと見つかるはずです。

距離感を自由に選べる、余白のあるコミュニティー

武田:高円寺「小杉湯」の隣のアパートで「銭湯ぐらし」というコミュニティーの運営を行う加藤さんには、コミュニティーや公共空間としての銭湯のあり方などについて聞いていきたいと思います。

加藤優一(以下、加藤):現在、2018年2月に解体されることが決まっている「風呂なしアパート」に、さまざまな分野のクリエイターが暮らしながら、銭湯の隣だからこそできるプロジェクトを行っています。外国人に向けた銭湯の入り方や銭湯図解をイラストで描いてSNSで発信する「描く銭湯」、銭湯にまつわるデザインをアーティストに月替わりで残してもらう「創る銭湯」、月一で音楽フェスをやる「歌う銭湯」など、たくさんのユニークなプロジェクトが動いています。

武田:“公共空間の活用”が加藤さんの専門ですが、銭湯をサードプレイスという観点で意識することはありますか?

加藤:“暮らしの一部を共有する”って、いまトレンドだと思うんですが、銭湯は、実はそういった視点でも非常にいい位置付けにあります。シェアハウスほど生活の共有を強要されないけれど、ゲストハウスよりは日常に近い、そしてシェアオフィスみたいに目的が決まっているわけでもない、カフェに近いような余白のある場所。銭湯のように自分の距離感で共有の方法を選べる場所って、町にはなかなかありません。ステファニーさんのようにしっかりコミュニティーを築きたい人もいれば、会話せずにサッと出たい人もいる。いろんなレイヤーが重なれる空間であることに、可能性を感じています。

武田:実際に、生活の場、癒しの場、コミュニティーのひとつなど、さまざまな使い方が増えてきていそうですね。フィジカルの公衆衛生じゃなくて、メンタルの公衆衛生に近づいてきているような。
さて、ゲストそれぞれの活動の紹介からいくつかのキーワードが見えてきたところで、さらに深く掘り下げていきましょう。

武田:まずは、ユーザー目線から、「こんな銭湯あったらいいな」を考えていきたいと思います。参加者のみなさまは、イベント開始前に配布したポストイットに想いやアイデアを自由に書き込んでみてください!


新規ユーザー獲得のために必要な手法

武田:参加者のみなさま、たくさんのご意見をありがとうございます。ここからは、ゲスト3名の知見や具体的なアイデアを合わせながら、銭湯文化をこれからも残し、更新していくための策を練っていきたいと思います。


日野:まず僕が選んだのは、「『LUSH(ラッシュ)』とのコラボ」というアイデアです。「LUSH」に限らず、今後、企業とのコラボ企画はやっていかなきゃなと思っていて。銭湯って、世の中的にはコンテンツ力が弱いので、なるべく有名なところとコラボすることによって知名度をあげていく必要がある。

武田:特にメディアを持っているところは、そのあたりを展開しやすいかもしれませんね。あと、もうひとつ手にとっていた「会社の昼休みに立ち寄れる銭湯」を選んだ理由についても、教えてください。

日野:やはり、個人より企業から収益を得るような仕組みがほしい。たとえば、福利厚生につながるような収益モデルができたらいいなと思っています。そしてもうひとつ、「若者が無料の銭湯」というアイデアを選んだのは、今後お客さんになるであろう層を掴んでいくには、当然そこに焦点を当てたサービスを向上させる必要があるから。

武田:高円寺はそれこそ若者の町ですが、「小杉湯」の利用者にも、やはりそういった層が多いのでしょうか?

加藤:多いですね。面白いことに、最近は飲み会の二次会に銭湯を選ぶ若者が多いんです。カラオケでオールするより、銭湯で癒されながらしゃべりたいっていう若者が。

武田:なるほど。そのように考えると、新規ユーザー獲得の方法も、“若者向け施策”と“新しい需要作り”というふたつの異なるアプローチが考えられますね。

銭湯だからこその“体験”を増やしていく

武田:加藤さんが選んだ「泊まれる銭湯」というのは、ご自身の活動にも通じるところがありそうですね。

加藤:銭湯の上に泊まれなくてもいいと思うんです。近くに泊まれれば。もともとはイタリアの“アルベルゴディフーゾ”というプロジェクトからはじまった“まち宿”という考えが、いま日本にも少しずつ広がっています。地方の衰退を止めるため、商店をレセプションにしたり、空き家を宿にしたりして、ひとつの町を“家”にするという考えです。日本人だとお風呂に入るので、その“家”には銭湯が必須。そういう意味でも、注目したい視点です。

武田:宿泊や銭湯といった体験がパッケージになっているエリアというか、銭湯がまちづくりの基幹として機能する、みたいなことでもあるのでしょうか。ステファニーさんは、「三助さんがいる銭湯」を選んでいますね。

ステファニー:“三助さん”は、銭湯で、背中を流したり肩もみをしてくれたりする職人さんのことです。素敵な文化なので、個人的にも体験してみたいと思っていて。そもそも“三助さん”に限らず、銭湯でもっといろんなことを体験できたらいいなと思っています。銭湯ならではのイベントや体験を、増やしていきたいんです。

武田:他にも、「ジェンダーレス風呂」や「子育てママ専用時間帯銭湯」など、“今の時代だからこそ考えるべき問題”も挙がっていました。

オーナー自身が、需要の変化に気づき、向き合うことの大切さと難しさ

武田:さて、参加者のみなさまからいただいた意見をいくつか掘り下げてみました。ビジネス的な視点、新規ユーザーの獲得、コミュニティーの形成、温故知新など、大まかにカテゴリー分けして考えることもできそうですね。

最後に、ゲストそれぞれが活動のなかで感じている課題や、その解決策について教えてもらうことにしましょう。加藤さんは、「銭湯ぐらし」ならではの課題や、活動の中で見えてきたものはありますか?

加藤:僕は、銭湯の位置付けが変わってきていることにちゃんと向き合えば、どんな課題も解決できると思っています。現状でいうと、多くの人が“銭湯=レジャー”という見方をしています。だから、そこに求められていることに気づけば、向き合い方も自ずと見えてくるはずです。ちなみに、いま求められているのは“綺麗さ”とか“ホスピタリティー”といったことだと考えています。

ステファニー:わたしも、見た目は大事だと思います。実際の清潔さもそうだけど、たとえば昔から貼ってあるシールが剥がれかかっていて、汚くはないけれど“汚く見える”というようなことも。問題なのは、銭湯のオーナーは、毎日見ているからこそ自分では気づけないことが意外と多いということ。外部から、コンサルみたいなことができればいいんですけど……。

日野:うんうん、ほんとにそう思う。

ステファニー:結構デリケートな問題なので、外からはなかなか言いづらいんですよね。「うちはずっとこんなだから」って、話を聞いてくれないオーナーさんも多い。

武田:利用者の意見を吸い上げる仕組み、みたいなものがあるといいかもしれませんね。

“人”や“場所”からコミュニティーをつなげていくこと

武田:ひとつ聞いてみたかったのは、もともとは地域住民や常連さんが利用してきた銭湯というひとつのコミュニティーに、若者などの新しいユーザー層が入ってきたとき、どのように関係を結んでいけばいいのか、ということ。それが網羅的な課題のように感じているのですが、いかがでしょうか?

日野:まず、コミュニティーをどのように形成するかを考えることじゃないでしょうか。「喜楽湯」の場合は、最初は“人”を立てて形成することにしたんです。お笑い芸人に番頭をやってもらって。

加藤:高円寺は、多様な世代が誰も何も気にせず共存している一方で、「おじいちゃんに怒られたい」っていうような若者の需要もあるような(笑)、かなり特殊な環境ですが、やはり「喜楽湯」同様コミュニケーターという役割は重要かなと。新規のお客さんと常連さんをつなげるコミュニケーションを、番台からはじめるようにできればいいですよね。

日野:ただ、さらに大きなコミュニティーを囲おうと思うと、もしかしたら“人”じゃなくて“場所”が大事かもしれませんね。

武田:属人性に依りすぎちゃうと、その人の感覚に近い“界隈”みたいになってしまうということですね。

ステファニー:基本的なことですが、まずは常連さんを見て、マナーを守ることもすごく大切だと思います。挨拶もそう。それさえしていれば、周りの人がやさしく見てくれるようになるものですよ。

武田:さて、イベント会場である渋谷のこのエリアも、東京全体も、日々刻々と変わっていくなかで、銭湯文化はこれからどのように広がっていくのか……。これからが、非常に楽しみになってきました!このまま延々と話せちゃいそうなんですが、今日は、このあたりで。みなさん、ありがとうございました!

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