東京とは思えないほど自然に恵まれたこの土地で、「本当に安心できるものを都心近郊でつくる」という目標を掲げ、「T.Y.FARM」は有機農業をスタートさせた。
平均年齢30才と若いメンバーは、全員農家に生まれ……ではなく、元メッセンジャー、画家など個性豊か。代表の太田太は、ファッション業界出身者だ。
近年のファストファッション、ファストフードの躍進は目覚しいが、いつでもどこでも同じものが、不便なく手に入り消費されていく。
「今着ているこの服は、どこで作られたのか? 今食べている食べ物は、誰が作っているのか?」
異業種でも共通する、小さな疑問。
画像:無印良品
NYに長らく暮らしていた太田氏は、レストランやファーマーズマーケットで、新鮮なオーガニック食材を自然に取り入れた生活を送っていた。世界一の大都市だが、実は州の1/4は農業用地。マンハッタンから一時間ほどで、野菜や果物、酪農品の一大産地が広がっている。
食品自給率の低さ、食品廃棄率の高さ、季節を問わず手に入る形の揃った野菜が売られている日本。NYのような地産地消のサイクルを、日本一の大都市、東京でも実現できないだろうか。
画像:無印良品
帰国後、まず、約1年かけて三重県の「土の匠」のもとで土づくりを学んだ。
余った野菜くずに米ぬかやもみ殻などを加えて、半年以上発酵させ堆肥を自給していく。手間と時間をかけて植物性の原料を発酵・完熟させた環境にやさしい土は、幾重にも落ち葉が重なって時間をかけてできた山の土のよう。
美味しさには、甘くて食べやすいだけではなく、苦味や酸味も重要だ。
収穫された一番美味しい野菜から種を取り、来年その種を蒔き……を繰り返すことで、その土地に適応し、野菜本来の個性を持って育っていく。「T.Y.FARM」では、ルッコラやセルバチコなどの西洋野菜から、後関晩生小松菜や寺島ナスなどの江戸東京野菜を含む、日本の伝統野菜を多種にわたってこの方法で栽培している。
無農薬栽培は虫に悩まされそうだが、実は健康な野菜には虫がつきにいのだくそう。
農薬を使って土の中の微生物まで殺してしまうのではなく、健康な土とベストな環境で野菜を作ることで、野菜本来の強さを引き出す。また、毎年種を継いでいくことで、病気や害虫に免疫もできていく。
虫といっても、害虫ばかりではない。自然交配を行なってくれる蜂も大切な仲間だ。野菜やハーブの花から採れたはちみつは、豊かな香りと自然な甘みを生かすために、加熱処理を行わない。野菜にとっても蜜蜂にとっても快適な環境。ただ野菜を作るだけではなく、自然のサイクルを畑の中に再現している。
現在はちみつの販売は、マルシェ出店時・対面販売時・催事のみの取り扱い。
画像:無印良品
流通が発達した現代でも、東京近郊で野菜を作る意味は、旬のものを新鮮な状態で届けるところにある。「朝採った野菜を、24時間以内に食べてもらいたい。」まるで、もぎたてをそのまま食べるように、オンラインで受注後、収穫し出荷している。※オンライン注文こちらはから。
今年7月にリニューアルした無印良品有楽町店では、消費者がが生産者や生産現場に思いをはせ、食べ物と人間の関係を再度見つめなおすきっかけとなることを目指した、グロッサリーをオープン。こちらでも「T.Y.FARM」の野菜が定期的に入荷する。
無印良品 有楽町店 https://www.muji.com/jp/flagship/yurakucho/?sc_cid=pb-1710_000427
定期マルシェ出店場所『SUNDAY MORNING MARKET』LIFE son 参宮橋
所在:〒151-0053 東京都渋谷区代々木4丁目5-13 レインボービルⅢ 1F
マルシェ開催日: 第3日曜日(雨天決行)(4〜6,9〜11月) 08:30~11:00ごろ(10:30LO)
http://s-life.jp/info_son.html
No.4 麹町
所在:〒102-0081 東京都千代田区 四番町5ー9
マルシェ開催日:第2、第4土曜 (夏季を除く、また不定期にお休みが発生・雨天中止)09:00~16:00ごろ
https://www.tysons.jp/no4/
crisscross 表参道
所在:〒107-0062 東京都港区南青山5-7-28
マルシェ開催日:第2、第4日曜 (夏季を除く、また不定期にお休みが発生・雨天中止)09:00~17:00ごろ
https://www.tysons.jp/crisscross/
その他にも、イベントやマルシェにて、不定期に販売を行っている。スケジュールはFacebookにて、随時お知らせ。
農業をもっとカッコよく、無農薬無化学肥料の新鮮な野菜をなにげない日常に。業種の垣根を超えたイノベーションは、東京からはじまっている。
[T.Y.FARM]