休日ともなると多くの人で賑わう自由ヶ丘。おしゃれなカフェやインテリアショップが並び、土地柄だろうか歩いているだけでも優雅な気分になってくる。そんな自由ヶ丘の駅から15分ほど歩くと、駅前のハレの雰囲気から静かな住宅地へと風景が変わる。
フードコーディネーターの町田さんが暮らすのは、そんな静かな住宅街に建つ築28年のレトロなアパート。部屋の中には、食のプロならではのアイディアがたくさん詰まっていた。
名前:町田遼平さん職業:フードコーディネーター
場所:東京都世田谷区
面積:22㎡ 間取り:1K
家賃:5万5000円
築年数:約28年
お気に入りの場所
ソファの上部屋に入ると手前にあるのが、NOCEで購入したというソファ。雑誌を読んだり映画を観たり、家でのほとんどの時間をここで過ごすという。
「雑誌『dancyu』は食べ物の見せ方も美味しそうなので仕事柄よく買います。他の雑誌も、食関係の特集をしているとつい手に取ってしまいますね」
出身だから購入したという『秩父の伝説』も気になる。
並ぶのは、食関係の本がほとんどだ。
ベランダ多肉植物が置かれたベランダ。昔ながらの雰囲気と椅子が置ける程よい広さがいい。
「東向きなので、朝日がたっぷり入ってきて自然と目覚めます。あと、正面の建物に反射した夕日が入って、部屋がオレンジ色に染まる夕方もいいですよ。ビールが大好きなので、夏はここに座って明るいうちから飲む時間が最高ですね」
この部屋に決めた理由
立地と安さ「仕事であっちこっちの現場に行くので、アクセスのよさを気にしてました。会社がある渋谷にも通いやすい東横線沿線で探し、不動産さんをはしごして、値段も安いこのアパートに決めました」
おしゃれなイメージの自由ヶ丘。街の魅力はどんなところなのだろう。
「自由ヶ丘はスーパーがいっぱいあるんです。クライアントさんやデザイナーさんがイメージする食のシーンをつくるため、食材を集めるのもフードコーディネーターの仕事のひとつ。もちろん生活用品や日常的な買い物にも利用しますが、スーパーはもうひとつの仕事場みたいなものですね。
陳列とか、値段のフォントとかを見るだけでどこのスーパーかわかるくらい、近隣のスーパーは熟知しています(笑)」
残念なところ
風呂がバランス釜部屋がひとり暮らしサイズなのに対して、浴室はファミリータイプのような広さ。たしかに最近は珍しいバランス釜だが白いタイルがいい雰囲気だ。
「この広さも原因のひとつですが、湯量が少ないので冬はとくに寒いんですよね……」
キッチンに光が入らない家でも料理をして写真を撮るという町田さん。キッチンについては後ほどじっくり紹介するとして、見るからに使いやすそうだ。
光が入る小窓があれば、さらに料理が楽しい場所になるだろう。
お気に入りのアイテム
受け継いだ業務用のアルミフライパンしっかりお手入れされているのがうかがえるアルミフライパン。町田さんが使うのは、AKAOの業務用のもの。大きいほうは会社の先輩から譲り受け、小さいほうは前のバイト先(イタリアンレストラン)を辞める時にもらったものだという。
「熱伝導性がよくソースの色がわかりやすいので、パスタによく使われるフライパンです。イタリアンレストランには欠かせない道具のひとつですよ」
受け継いだダマスカス模様入りの包丁キッチンの棚には、箱で保管されている包丁が数本。特にこのダマスカスという模様が入った牛刀は、見るからにプロの道具だ。
「これも会社の先輩が辞める時に譲り受けました。立派すぎて仕事でもあまり使わないくらいです」
500ml入る無印良品のビールグラス500ml缶がぴったり入るグラスは、ビール好きの必需品。無印良品のもの。
テレビ台にしている板一見普通のTV台に見えるが、よく見ると、収納棚の上に板を乗せている。
「近所にあるクロエンピツという家具屋さんの端っこにこの板が置いてあって、もらってきたものです」
テレビ横の置物たちテレビ横の一角は小さな置物が並ぶほっこりスポット。
「ハワイの置物は、行きつけのカフェで購入したもの。ひつじは、友人が僕の髪型に似ているからと言ってプレゼントしてくれました」
ほぼパソコンのマウス置き場になっているカホンパソコンの横から取り出したのは、れっきとした楽器「カホン」だ。ペルー発祥の打楽器で、上に座って打面や淵を素手で叩く。
「最後に叩いたのは1年前くらいです。友人と公園で演奏してたりしたんですが、今は家具の一部みたいになっていて、パソコンのマウス置き場になってます(笑)」
一眼レフカメラ「作品撮りとまではいかないですが、家でも料理写真を撮るので、その時に使っています」
暮らしのアイディア
キッチンを使いやすくする工夫時に仕事場にもなるというキッチンは、今回の取材で最も気になる場所。プロならではの使いやすくするための工夫やこだわりを聞いてみた。
「シルバーラックは最強です」と、町田さん。キッチン背後のオープンラックには、使っていくうちに決まってきた定位置に調理道具が並ぶ。また作業台として使えるよう、真ん中に何も置かないスペースを確保してある。
「特に棚板が網目状のこのタイプがオススメです。どこにでも吊るせるし、多少濡れたまま置いても乾きやすいので」
意外と置き場所に困る鍋の蓋も溝に立てかけるだけでいくらでも収納できる。
シンクやコンロまわりも吊るす収納を多用している。使いたい時にすぐ取れて洗ったらすぐに指定位置に戻せるので、いつも使いやすい状態が保てそうだ。
なんと「100均で購入した軽量スプーンは、持ち手を曲げてフック状にして掛けています」とのこと。狭くても、工夫次第で使いやすくできるというお手本のようなキッチン。ぜひ参考にしたい。
バインダーを利用した収納文具売り場にあるバインダーを、壁に取り付けて挟む収納に。散らかりがちな書類やDMなど、とりあえず挟んでおける便利なアイディアだ。
よく履くパンツは吊るすクローゼットにしている押し入れの外には、パンツが4本。シーズンごとに普段よく履くパンツ類を掛けておけば、朝の身支度も迷わない。
これからの暮らし
「実は秋に引っ越しをしようと考えています。今も週の半分くらいは彼女が家に来ているので、同棲しようかと。彼女は西小山に住んでいて、お互い東横線や目黒線沿線が気に入っているので、おそらくそう遠くない場所に住むと思います」
これぞ男子の部屋といった現在の住まいもいい雰囲気だが、女性ならではの視点も加わった次の住まいも楽しみ。きっとより使いやすくバージョンアップするであろうキッチンも気になるところだ。
フードコーディネーター・町田さん直伝 煮卵のコツ
よく家で作るという煮卵のコツをこっそり教えてもらった。
コツその1『卵はお湯から茹でること』
「沸騰したお湯から茹で始めれば毎回同じ温度からスタートできるので、茹で加減が一定になります。お好みの半熟具合が何分か探ってみてください」
コツその2『冷蔵庫に基本の「かえし」を常備』
「醤油、砂糖、みりんを合わせて煮立たせないように火を入れた自家製「かえし」を常備しておくと、煮卵以外にもいろいろ使えて便利。これに味噌や出汁を入れて漬け汁をアレンジしています」
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