今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:「蛙始鳴」草むらから聞こえてくる夏の声
七十二候:蚯蚓出(みみずいずる)
5月10日~14日ごろ
四季:夏 二十四節気:立夏(りっか)
土の中から、冬眠を終えたミミズが出てくる季節。この時期から、アスファルトで干からびているミミズを多く見かける。
言わずもがな、ミミズには目がない。そしてその身体は、ほぼ水分でできている。湿気の多いところを好み進んでいくが、目が見えないので道路に出てしまい、そのまま戻ることができずに乾いてしまうという。
旬の食材
いちごクリスマスが存在する限り、いちごが一番売れるのは12月だが、旬はこの時期。
ちなみに毎月22日は、カレンダー上、22日の上に15(いちご)日が乗っているように見えるため「ショートケーキの日」とされている。
いさき東北より南側の海において、岩礁付近で獲れる魚で、「初夏の魚」として人気。塩焼きや煮付けで食べるとおいしい。
かつて和歌山県の鍛冶屋がいさきを食べた際、骨が喉に刺さり死んでしまったことから、「鍛冶屋殺し」と言われることも。
本日の一句
苺ジャム 男子はこれを 食ふ可らず竹下しづの女
作者は高浜虚子に師事し、俳句雑誌「ホトトギス」にて女性で初めて巻頭を飾るほどの実力者で、主に女性の自我や自立をテーマに詠っていた。
この句はシンプルに、男性はいちごジャムみたいな甘いものを食べるな、というもの。作者にとっては、まさか「スイーツ男子」という言葉が出てくるとは予想もできなかっただろう。
次回は「竹笋生(たけのこしょうず)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
fresh strawberry in burlap sack on wood image via Shutterstock
Fresh chicken grunt image via Shutterstock