2016年6月、小田急線経堂駅から歩いて数分の場所に、カフェ「FINETIME COFFEE ROASTERS」はオープンした。店を運営する近藤剛さんは、築52年の空き家をリノベーションすることで、1階をコーヒー専門のカフェスペースに、2階を家族3人で暮らす住居スペースに変えたという。
金融系の外資系企業を50歳にして退職し、コーヒーに第2の人生をかけることにした近藤さん。アイデアのつまった住居スペースのこだわりだけでなく、彼の人生を変えることになったコーヒーへの思いについてもうかがった。
名前:近藤剛さん職業:カフェ経営
場所:世田谷区経堂
面積:101㎡
家賃:非公開
築年数:築52年
お気に入りの場所
リビング2階の住居スペースは開放的なつくりで、寝室と水回り以外はすべてオープンになっている。かつてレコード収集が趣味だったという近藤さんは、ここへ引っ越すにあたりかなりのレコードを処分したのだとか。
「1階を店舗にしてしまったので、そういうのは多少覚悟してました。以前はレコードだけでも数千枚近く持っていましたね。でもいまは厳選して、ここにあるだけ。どんなジャンルでも聞きますが、70年代あたりのパブロックはいまでも好きです」
設計段階から家具の配置を決めていたこともあり、スピーカーやオーディオ類の配線は壁の中や床下を通すことでスッキリとさせている。座り心地のいいソファはイデーで購入したもの。
ソファ背面に設置されたガラス棚からは、1階の客席をのぞき見することができる。反対に客席から見上げると、ディスプレイされた小物が浮遊しているようにも見え、おもしろい視覚効果がある。
この部屋(家)に決めた理由
「何よりも駅から近いこと。商店街にも近いし、そこから少しだけ脇道に入っているところも良かった。建物の雰囲気も好きですしね。店舗兼住居でいろんなエリアを探しましたが、ここはかなりいい条件がそろっていました」
残念なところ
いまのところ不便を感じることはないそうだが、将来的に「子ども部屋」をどうするかが悩みの種。
「2階には壁で仕切るスペースがないので、つくるとしたら1階のテーブル席を子ども部屋にしようと思っています。いまでも引き戸で仕切れるようにしていて、多目的スペースとして使えるようになっています」
多目的スペースの壁にはアートピースを飾っていたり、近藤さんが好きな本を置いていたりと、現在も趣味的な要素が多いスペースになっている。
お気に入りアイテム
セミオーダーした木工家具テレビ台、コーヒーテーブル、本棚、飾り棚は、札幌の家具屋SAC WORKSでセミオーダーしたもの。階段の幅が意外と狭いことから、あまり大きな家具を運び入れることができず、ギリギリ階段を通れる寸法でオーダーしたとか。
こだわりのスピーカー「バング&オルフセン」店舗のカウンター内に設置されたスピーカーは「バング&オルフセン」。世界を代表するデンマークのテキスタイルメーカー「Kvadrat社」とのコラボアイテムだ。いい音楽を聴きながら仕事がしたいという理由からここに設置している。
アメリカ製ディードリッヒ社の焙煎機店の味を左右する焙煎機は、「アメリカ製ディードリッヒ5kg焙煎機」を使用している。アイコン的存在にしたかったこともあり、200種類以上ある色の中から鮮やかなオレンジ色をチョイス。焙煎プロファィルを日々記録し、常に安定した焙煎を心がけている。
インテリアでのこだわり
「ディスプレイやインテリアなどは、空間に統一感がでるように気をつけています。趣味が広いだけに、何でも集めたくなるのですが、家の中ではなるべく統一感を持たせるようにしています。北欧っぽいものや、木のぬくもりがあるほうが好きなので、家具のテイストも自然とそういうものが多くなってますね」
これからの暮らし
「自分の希望としては、豆の販売にも力を入れていきたいですね。ここは豆の品質だけじゃなく、焙煎方法にもかなりこだわっているので、ここのような浅煎りコーヒーをもっと広めていきたい。もともと音楽や映画といったカルチャーが好きだったことが、いまにつながってるところもあるので、そういう人たちが集まるコミュニティの場にしていけたらいいですね」
番外編:FINETIME COFFEE ROASTRESのこと
「FINETIME COFFEE ROASTERS」で提供されるコーヒーは、浅煎り豆を使ったものがメインとなる。「エアロプレス」という方法で抽出されたコーヒーは、フルーティーで甘さを伴った酸味があり、それでいて豆が持つオリジナリティをしっかりと引き出すことができる。
エアロプレスは、注射器のような装置を使い、手の圧力だけでコーヒーを抽出していく。ハンドドリップなどに比べて熟練の技術を必要としない一方、豆の挽き方・量・湯量・温度・抽出時間などの「レシピ」が味を大きく左右するそうだ。
「エアロプレスは、ドリップともエスプレッソとも違う味わいが特長ですね。ここで焙煎しているようなフルーティな豆だと、果実っぽさがさらに凝縮します。その代わり、苦味の強い豆にはあまり合わない抽出方法だと思います」
近藤さんは、昨年2月に開催された「JAPAN AEROPRESS CHAMPIONSHIP 2016」では、全国のバリスタたちを抑え、見事第3位の栄冠を獲得している。
その味を一度体験したみたいという人は、ぜひ経堂の「FINETIME COFFEE ROASTERS」に足をはこんでみてはいかがだろうか。
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