それがいまもなお、売れ続けている。
「一澤帆布」というブランド
このかばん屋さんは元々「一澤帆布」というブランド1本だった。
三代目が亡くなったときに、それまで家業を受け継いでいた四代目の信三郎さんが解任されるという一大事が起こり、全ての職人と共に別会社として「信三郎帆布」を立ち上げた。その後、信三郎さんは「一澤帆布」に戻ることになり、四代目として元の鞘に納まった。
「信三郎帆布」を立ち上げたことで、それまでの一澤帆布にはなかった柄物を取り入れるなど、新しい試みを始めるきっかけとなり、それがそのまま新しいブランドとして、今日の「一澤信三郎帆布」が確立されたのだ。
ちなみに、現在のタグは写真左の「信三郎帆布」が主流だが、昔ながらの職人用かばんには写真右の「一澤帆布製」を、柄物や麻帆布には写真中央のタグが付いており、これで見極めができるし、ちょっと自慢したくなる。
© Y. Kubota Studio BOW
ここで少し不思議に思う。かばんという字は普通「鞄」革で包むと書くが、一澤信三郎帆布では布で包むと書く。これは常用漢字には無い字。確かに革を使ってない……。漢字まで作ってしまうとは!
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一針一針、丁寧に縫い上げられた帆布かばんは、職人さんの心意気が感じられる、丈夫で長持ちなかばん。私もいくつか持っているが、20年以上前に買ったかばんでも、一度も修理もしたことなく普通に使えている。
もちろんちゃんと修理もしてくれるので、ご安心を。
定番シリーズ
牛乳配達かばん© Y. Kubota Studio BOW
底が円形で、牛乳屋さんが自転車で運ぶ為に作られたかばんが原型になっている「牛乳配達かばん」。いまでは写真のような華やかでカラフルな柄も多い。
道具袋© Y. Kubota Studio BOW
店の屋号や電話番号を大きく印刷して、動く広告塔の役割も果たしていた「道具袋」は、100年以上も前から作り続ける定番商品。
氷袋© Y. Kubota Studio BOW
氷屋さんが氷を運ぶ為に作られた「氷袋」は、かつて大は8貫目(32キロ)小は4貫目(16キロ)入れて運んだという。アウトドア時に活躍すること間違いなし。
酒袋© Y. Kubota Studio BOW
酒屋さんが酒瓶を運ぶ為の「酒袋」は、底に厚紙が入っていて底鋲が付いてる優れもの。道具袋同様、広告塔の役目も果たした。
最新作のメジロかばん
動物や植物などの愛らしいモチーフで人気の鹿児島睦さんとのコラボレーション「メジロ柄」。通信販売でも入手可能なんだとか。
「コラボ」「柄物」「通販」など、“昔”しか知らない私は驚きどころ満載だが、これがいまの一澤帆布なのだ。
カスタマイズも可能
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内祝い・法事・記念品など、まとまった数(50個以上、要相談)の注文なら、シルクスクリーン印刷でオリジナルの文字やイラストで作ってくれる。例えば結婚式の引き出物を入れる袋だとか、このかばんに入っていたら厄介に思われがちな引き出物もうれしさ倍増だ。
実際に私も友人の結婚式で「引き出物袋」としていただいたことがあるが、なかなかの粋な計らいだと思い、その友人に対するポイントがアップしたことを覚えている。
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昔のままを残しつつも進化していく一澤信三郎帆布は、これからも目が離せないかばん屋さんだ。
一澤信三郎帆布京都市東山区東大路通古門前北
075-541-0436
9:00~18:00