その名の通り、小さな家のことを指す「Tiny House(タイニーハウス)」。日本でも最近にわかに注目する人、作ってみる人も増えてきている。昨今のミニマリストにも通ずる部分はあるのではないだろうか。

今回は、私が実際に滞在したオーストラリアのメルボルン近郊ヤラバレーのファームに建つ、とあるTiny Houseの暮らしを紹介する。

Tiny Houseとは?

直訳すると「小さい家」、意味そのままのとても小さい家のこと。サブプライムローンによる金融恐慌をきっかけに、これまでの大量生産・大量消費が当たり前の生活に疑問を持ち始めた人たちによって作られるようになったという。

必要なものだけを持ち、自分の時間や家族との時間を大切にしながらシンプルに暮らしたい。そういった考えにフィットしたのが、住まいを小さくしてしまうという方法だったのだ。

広大なファームに建つ小さな家

私が滞在したのは、3家族が敷地内にそれぞれの家を持ち、共同でパーマカルチャーファームを運営するコミュニティ。Tiny Houseに住むのはその内のひと家族で、ご主人と奥様と娘さんの3人。このかわいらしい家で暮らしながら、ファームでの仕事の他にご主人は指圧院、奥様は敷地内の他の建物で週に何度かヨガ教室を開いている。

ご主人がほぼ一から建てたトレーラー型ハウス

このTiny Houseは、タイヤ付きの土台に建つトレーラー型。タイヤはあるが、移動はできないらしい。ここに来た最初の頃は、敷地内にあったワイン倉庫を改装した広い家に住んでいたそうだが、「もっとコンパクトに暮らしたい」と思いこの家を建てることに決めたそう。それから約3年かけて、ご主人がほとんど一から作ったというから驚き。

Tiny Houseはセルフビルドも一般的でその自由さも楽しみのひとつというけれど、実際に見て中に入ってみるととても完成度が高く、カルチャーショックを受けた。

機能的でかわいらしい約15㎡の室内

面積は約15㎡ほど。1階がキッチンとダイニングと娘さんの秘密基地みたいな本棚、そして小さな湯船まであり、階段をあがったロフト部分が家族3人の寝室になっている。屋根にはソーラーパネル、雨水を貯めるタンクがあり、キッチン下の小さなストーブ兼オーブンの中で薪を燃やして、部屋と水を温めている。

中は狭いけれど、必要なものがきれいに整頓されているし、お花やポストカードなどちょこちょこ飾られているのもかわいらしい。ただ必要最低限のものを所有して必要ないものを削ぎ落すというのではなく、暮らしを楽しんでいることが伝わってくる。

ひと口コンロと小さいシンク、まな板がひとつ乗るくらいの作業台がこの家のキッチンスペース。ちょうどひとり暮らし用の物件にあるミニキッチンと同じくらいの広さだろうか。横の棚には10種以上はありそうなスパイスが並び、目の前にはお玉やフライ返しなどの調理器具類がスタンバイ。コンロ上の棚にはボウルや鍋が置かれ、その下には使い込まれたフライパン。すぐ手の届く場所になんでもあるから使いやすいと奥様は言う。

そして何より、彼女がここから生み出すカレーやスープがほんとうにすばらしい。それもそのはず、ここは広大なファーム。一歩家を出れば、ケール、ネギ、キャベツ、ブロッコリーなどその季節の野菜が採り放題、あらゆるハーブもそこら中に生えていて、ニワトリが朝産んだ卵やヤギのミルクから作ったチーズもある。それらを調達してきて作るのだから、おいしいに決まっている。

部屋と同じくらいの広さのバルコニーがあるのもこの家の素敵なポイント。第二のリビングのようなものだ。ちょうど南向きで、そこから見える景色も抜群。天気の良い日は寝転がっているだけでとても気持ちがいい。

この日は娘さんが宝物の布と傘を使いカラフルでかわいい家を作ってみせてくれた。何度も試行錯誤してはやり直すこだわりよう。父のDIY精神がきちんと受け継がれているようだ。

小さく暮らす豊かさ

なるべくモノを少なくしてシンプルに暮らしたいと思ってはいるものの、理想にはいまだ遠いのが現状。とくに都会の物件に住んでいると、もっと収納があったらなと思ってしまうことがあるのではないだろうか。

しかしものは考えよう。収納がありすぎると余計なものまで持ってしまうし、家が大きいと余計な仕事が増えたりということも。持ち物や暮らし方をコンパクトにするために、まずは入れ物を小さくしてみる。これはとても理にかなった方法なのかもしれない。それに何よりも、暮らす家族が幸せそうだこと。

日本でも「Tiny House KIBAKO」などでTiny Houseの施工についての相談が可能だ。小さい家に住んでみたくなったら、一度チェックしてみてはどうだろうか。

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