いつかはマイホームが欲しいけど、それはまだ少し先のこと。だからといって賃貸でも住まいには妥協したくない思いで不動産サイトを眺めてはいるものの、限られた情報だけではピンとこないのが正直なところ。理想の賃貸に出会うためには、どうしたらいいのだろう。

そして、住まい選びとともに考えなければならないのが、毎回とても面倒な「引っ越し」。もっといい方法は、本当にないのだろうか……? そんな多くの人が疑問に思っている「家探し」と「引っ越し」の問題を、住まいのプロに相談してみることに。

部屋探しサイト「goodroom」の運営や、賃貸でありながらパーツカスタマイズやフルカスタマイズができるサービス「conomy(コノミー)」を展開する会社・ハプティックの澤井博芳さんと中田すみれさんにお話をうかがってみた。

入居者の目線に立った豊富なカテゴリ分けが、探しやすさの秘訣

パッと見ただけではわかりにくい間取り図に、広さや使い勝手がイメージしづらい部屋の写真。不動産の店舗やサイトで見る多くの物件は、実際に出向くまでいくつもの「?」をクリアしなければならない。せっかく足を運んだ物件も、周辺環境の騒音や窓からの景色が気に入らない場合だってある。

goodroomは、「一人暮らし7万円以下」「二人暮らし13万円以下」「リノベーション」「デザイナーズ」「カスタマイズ可能な部屋」など豊富なカテゴリーから、満足できる部屋を探せるサイト。

中目黒の物件

賑やかな通りを抜けて、閑静な住宅街へ。
何やら香ばしい香りがします。
パン屋さんでもあるのかなぁと思っていると、ポップコーン屋さん!
とっても美味しそうな香りに誘われてしまいました。
他にもエスニックカフェや、アメリカンヴィンテージなカフェなど、住宅地の中にもステキなお店がたくさんです。

行き止まりになり、あたふたしていると、
なにやら隠れ家的な洒落た建物が。
アーチを描いたエントランス。緑もあるので、なんだか都会の喧騒から離れられます。
これは桜の木のようです。

これはgoodroomで紹介されている、とある物件の「ストーリー」。入居者目線で部屋を紹介することにこだわるgoodroomでは、スタッフが現場に出向き、部屋の間取りや使い勝手はもちろん、周辺の環境やスーパー、公園の有無、日当たりの状態まで徹底的にリサーチしている。

ストーリーを読むと、その部屋で暮らす感覚を味わった気になるから不思議だ。もちろんサイトには部屋の詳細も、写真とストーリーによって記されている。

お部屋は白を基調とした清潔感溢れる空間。
L字の居室はインテリアも配置しやすそうです。
キッチンはしっかり二口ガスコンロ。シンクも広めで使いやすそう!
水周りも十分なスペースとなっております。

左:澤井博芳さん 右:中田すみれさん

家具の配置やキッチン周りのレイアウトがイメージできるスタッフの現地レポートは、「水回りが少しレトロ」「キッチン棚が少ない」などウィークポイントをしっかり伝えているのも信頼がもてるポイントだ。

「特にキッチンの使い勝手は見た目だけではわかりずらいので、実際にキッチンに立ち、調理することを想像しながらレポートしています」(中田さん)

「お客様にはすべての情報を開示したうえで選んでいただきたいので、残念だと感じたポイントも、部屋を探す人の目線で伝えるようにしています」(澤井さん)

入居者が自由にリノベーションできる「カスタマイズ賃貸」

さらにおもしろいのが、賃貸でありながらリノベーションができるカスタマイズ賃貸サイト「conomy(コノミー)」。賃貸では珍しいほどの自由度を誇るプランで、壁紙や小物など一部を自分でチョイスできるパーツカスタマイズと、タイル張りの玄関やオリジナルキッチンなどが選べる充実のフルカスタマイズの2種類から選べる。

conomyで気に入ったカスタマイズ可能物件を見つけたら、部屋全体のテイストを「ナチュラル」「モノトーン」「パステル」からチョイス。

ナチュラル
モノトーン
パステル

パーツカスタマイズプラン対応の物件では、アクセントクロスやライティングレール、スイッチプレートを選ぶことができる。フルカスタマイズプランでは床、玄関、水回りもチョイス可能だ。工事は施工のプロにまかせられるため、DIYスキルがなくても大丈夫だし、費用はオーナー負担なので入居者は基本的に無料でカスタマイズができる仕組み。

「インテリアに合わせて部屋のパーツを選んだり、部屋に合わせて家具を新調したり。賃貸でも自分好みにカスタマイズできることで、こだわりの住まいがつくれます」(澤井さん)

プロ直伝「いい物件の見つけ方」と「チェックすべきポイント」

ありきたりな賃貸ではなく、ライフスタイルをデザインする視点で不動産を取り扱う同社。不動産のプロでない人がいい物件を探すには、どんなところに注意すべきなのだろう。

部屋探しは余裕を持って

引っ越しを決意したとたん、すぐにでも転居したい人も多いだろう。しかし、急がば回れ。時間をかけて探すことで自分に合った物件がきっと見つかるという。

「急いで決めてしまったために、収納の少なさや水回りの古さなど、チェックすべきポイントを見逃してしまうこともあります。生活の基盤となる住まいです。最低でも1ヶ月くらい時間をかけて探してくださいね」(中田さん)

物件よりも環境を見よ

部屋を探すとき、すぐに物件について調べがちだが、実は環境を知ることが大切なのだとか。

「最初に見た物件はイメージを引きずってしまいがちなんです。ちょっと乱暴かもしれませんが、物件は見なくてもいいから環境をまずは知ることで、自分に合った場所が探しやすくなると思います」(澤井さん)

また、「平米数より間取りを重視すべし」ともおっしゃっていた。物件の広さを見るとき平米数を気にしがちだが、広さの感覚はひとそれぞれな上、実際に家具を置いてみるとイメージがかなり変わるという。同居する人数や生活動線などを考慮する必要もあるということだ。

日当たりは生活リズムに合わせて

「日当たりを気にされる方は多いですが、日中はほとんど部屋にいない人の場合は、朝日が差し込めば十分なこともあります。反対に、日中のほとんどを部屋で過ごされる方は、どの部屋が一番日当たりがいいかをきちんとチェックしましょう。

また、使える壁の有無をチェックすることも重要です。家具は壁にくっつけて配置することが多いので、使える壁がどれくらいあるかで置ける家具の数や配置が変わってきます。収納スペースの扉が付いていたり、室内扉の開閉で、ほとんど使えない壁もあるんですよ」(中田さん)

「それと、キッチンやバスルームだけでなく、洗面所やトイレなどすべての水回りの水圧を確認することをオススメします。水圧が弱くても、簡単には直せないため、入居前のチェックが大切です。

最後に、共用部の管理は行き届いているか。集合住宅の場合、エントランスやエレベーターなどの共有スペースは、物件を見極める重要なポイントになります。管理が行き届いているか、きれいに保たれているかを確認しましょう」(澤井さん)

だれにでも、住まいの譲れない条件はあるはず。その優先順位をつけ、理想の住まいを探すことが重要なのだ。

面倒な引っ越しは、効率化がカギ

賃貸でDIYした方の部屋の一例

物件が決まったところで、避けて通れないのが引っ越しだ。ハプティック代表の小倉弘之さんから、効率的な引っ越しのポイントを教わった。

・小物や衣類は無印のPPボックスに詰める
・粗大ごみは引っ越しの1ヶ月前には処分しておく
・割れ物はスーツケースに入れて運ぶ
・引っ越しは土曜日がベスト
・そもそも収納が多い部屋を選ばない

荷造りは、荷物をダンボールに詰める人がほとんどだと思うが、ダンボールに詰める/引越し先で出す作業は、かなり労力が必要。そこで無印良品のPPボックスを使い、搬送時に中身が飛び出さないようガムテープを貼れば荷造り完了。すぐに中身を取り出せ、引越し先でも収納ボックスとして使用できる。

また、粗大ゴミの回収は各自治体によって回収日が決められているため、タイミングによっては新居まで粗大ごみを持っていくことになってしまう。粗大ゴミは引っ越しの1ヶ月前までに処分しておくと安心だ。

そして、食器やグラスなどの割れ物を、新聞紙や緩衝材でひとつずつ包むのは手間。旅行の荷造りのように、割れ物は衣類を緩衝材がわりに使って、隙間なくキャリーバッグに入れればOK。割れ物用のダンボールを作る必要がないので、かさばらないのもポイントだ。

2016年に開催された、「賃貸カスタマイズ」をテーマにしたオーナーと入居者の交流会の様子

新居で荷解きをしていると「なんでこんなモノを持ってきたのか」というときがたびたびある。2、3年袖を通していない衣類、使用していない物は思い切って処分しよう。引っ越しは絶好の断捨離のタイミングだ。荷物が減ればそれだけ引っ越しも楽になる。

また、引っ越しの荷解きは、先延ばしにすればするほど面倒になるもの。荷物の搬入出から荷解き、ゴミの処分まで、一連の引っ越し作業を土日で完結させるように心がけよう。

そして、物件を見る際収納スペースをチェックしがちだが、収納が多い部屋はそこに物を隠してしまい、物の絶対量が増えていく。スペースが限られていれば、自然と物を増やさない暮らしを心がけるようになる。

「手軽さ」がちょうどいい、賃貸の魅力

ライフスタイルの変化により、住まいのあり方も変わってきたといえる昨今。マイホームを購入せず、あえて賃貸を選ぶ人も増えている。そこにはどんな事情があるのだろう。

「賃貸の魅力はなんといっても手軽さではないでしょうか。転職や転勤時、賃貸なら手軽に引っ越せます。賃貸だからとあきらめるのではなく、カスタマイズやリノベーションを楽しむことができれば、暮らしはもっと豊かになるはず。そこに住む人が堂々と“わが家”と呼べる場所を提供していきたいですね」(中田さん)

「暮らしているうちに、以前は気に入っていた街の雰囲気がちょっと違うと感じることもあるかもしれません。家族が増え、今の家が手狭になることも。そんなとき、引っ越しのたびに暮らしが豊かになり、アップデートできればいいのではないでしょうか」(澤井さん)

物件そのもの機能性や品質はもちろん、環境や自然など、住まいをとりまくすべてを取り扱うgoodroomconomyなら、理想の住まいを見つけられそうだ。

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Photographed by Ryuichiro Suzuki

RSS情報:https://www.roomie.jp/2017/01/366149/