時間の概念を、時計よりもさらに表出させたインスタレーションを紹介します。
デザインオフィス「nendo」がイタリアの高級時計ブランド「PANERAI」のために手がけた空間インスタレーション「slice of time」は、「時間」を切り取ることに挑んでいます。
一筆書きの数字を用いたインデックスや、スクエアフォルムのケースといった「PANERAI」の特徴を凝縮した、透明な「抜け殻」のような時計をデザイン。
それを押出し成型によって、16mの長さに引き伸ばしました。
この細長い「抜け殻の時計」をスライスすると、ひとつずつ時計が作れます。インスタレーションを見に来た来場者の「年齢」が「㎜」に変換されて切り出され、さまざまな種類の厚さや姿をした時計が生み出されます。
まさに世界に1つだけ、その人だけの時計が完成。来場者は、完成したオリジナルの時計を持ち帰ることができます。
研磨、サンドブラスト仕上げ、組み立てなど、ひとつひとつの作業行程ごとに円形のアトリエ空間が用意されており、真上から見ると、まるで時計の歯車のようですね。
時計は5分おきに1点ずつ制作されます。
展示期間の間に少しずつ短くなる「抜け殻の時計」は、すべて消えた瞬間にインスタレーションも終了する仕掛けです。
「時間」を「長さ」に変換させ、物理的に切り取る。残念ながらこの展示は2016年10月に終了していますが、それぞれ「自分だけの時間を持ち帰る」ことができるなんて、なかなかできないおもしろい体験ですね。
slice of time [nendo]Photographed by Akihiro Yoshida / Takumi Ota (space)