まだ5月なのに初夏のような陽気ですね。
露木行政書士事務所・露木幸彦と申します。

寒いのか暑いのか、ハッキリして欲しいですし
いつになったら春服を着れるなんだろうと
天気予報と1日中にらめっこですね。


現在私が執筆している日経新聞の連載「男と女のマネー学」ですが
おかげ様で本日、23回目が公開されました。

今回は『離婚ではなく「別居」 どうなる生活設計』です。
ぜひぜひご覧ください。ちょっとした気分展開になれば嬉しいです。

http://www.nikkei.com/money/features/75.aspx?g=DGXMZO8698115019052015000000&n_cid=DSTPCS008



さて夫婦間でモラハラ(=モラルハラスメント。
世間一般の常識をかけ離れた言動のこと)や暴言、暴力などの被害に
遭った場合、そんなに酷い目に遭いながら、それで離婚しようと思わないのなら、
DV防止法の接近禁止命令(6ヶ月間の接触禁止)などを使って冷却期間を設けるのですが、

一方でいよいよ離婚を決断した場合、
やり直すための冷却期間を作っても仕方がありません。


それならいっそのこと、モラハラや暴言、暴力という
過去の経緯をうまい具合に活用して、なるべく損せず
早くスムーズに離婚できるようにした方が前向きでしょう。

相手方を本当に罰するのではなく、「このままでは罰せられるかも」
という感じでペナルティとして使うのですが、
具体的にはどのように行動したら良いのでしょうか?

順番に見ていきましょう。



3年前、夫は妻との口論の末、自宅にて妻に対して身体的暴力を振るい、
妻はその暴力のせいで体を強打し、病院で受診せざるを得なくなったという
暴行事件が起こったそうです。



妻の怪我については病院の医師によると「頚椎捻挫」という診断を下しており、
すでに診断書も発行済なので、これが暴行事件を証明する確たる証拠となり、
また法律上、傷害罪に該当しますが(刑法204条)
このように事実認定および違法性について夫に反論の余地はないでしょう。



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どんな経緯、理由、過去があろうと日本は法治国家であり、
日本国民はすべての法律を守ることが大前提なのだから、
暴力という違法行為の正当化が不可能なのは言うまでもありません。



参考)刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。



前述の刑法はもちろん、あらゆる法律には「違反したらどうなるのか」
懲役や罰金等の罰則を規定していますが、現時点で夫は何の罰則も
科されていません。

なぜなら、夫が反省し、改心し、二度と同じ過ちを
繰り返さないで欲しいと願い、妻が本件を警察沙汰、
裁判沙汰にせずに済ませたからです。

それなのに夫は前回の事件から3年間、事あるごとに妻に対して
暴力を振るっており、例えば、夫は妻の肩をどつき、スリッパを
蹴飛ばすという暴力行為に及んだが、それは日常茶飯事だったそう。



これは前日、妻が夫に対して買い替えのため、
洗濯機を運んでくれるよう頼んだにも関わらず、
当日まで夫が洗濯機を運ばなかったため、再度、妻が頼んだところ、
夫が約束を守らないことを棚に上げて、逆上した挙句、暴力事件に
発展したそうですが、やつ当たりもいいところです。



ただでさえ、前述の通り、暴力を正当化できる理由など存在しないのに、
暴力に至る経緯は特に悪質極まりないです。
結局、夫は恩を仇で返すような仕打ちを続けてきたのです。



だから、夫が何の反省もせず、少しも改心せず、
何度となく同じ過ちを繰り返すのなら、遅かれ早かれ、
妻が我慢の限界に達してもおかしくはないし、



これ以上、夫の違法行為を黙認せず、今後はきちんと
白黒をつけようと思えば、例えば、地方裁判所に対し、
接近禁止命令の申立(DV防止法10条)を行うという選択肢がありますが、



3年前の暴行事件および3年間の暴力を踏まえれば、
裁判所が何もしなければ夫は何回でも妻に対して
暴力を振るい続けるだろうから、再犯可能性が極めて高いという理由で、
裁判所は夫に対して接近禁止命令を発令するに違いありません。


参考)DV防止法10条



被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた者に限る。)が、
配偶者からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては



配偶者からの更なる身体に対する暴力により、配偶者からの生命等に
対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に
対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、



裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に
危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、
次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。



一 命令の効力が生じた日から起算して六月間、被害者の住居
(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)
その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、
勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。



二 命令の効力が生じた日から起算して二月間、被害者と共に生活の本拠と
している住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと

接近禁止命令とは夫が妻へ接触することを一切禁止しますが、
禁止事項には訪問、電話、メール等だけでなく、「共に生活すること(=同居)」
(DV防止法10条の2)も含まれるのです。



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暴行事件において夫が加害者、妻が被害者なので当然、
自宅から出て行くのは加害者である。だから、自宅の所有権を
すべて夫が持っているとしても、夫は自宅から退去しなければなりません。



なお、接近禁止命令は6ヶ月ごとに更新することが可能で、
3年間の経緯を踏まえると今後、夫の再犯可能性が限りなくゼロに
なることは望めないので、半永久的に更新することが可能で、
さらに夫が自宅から退去しない場合、1年の懲役又は100万円以下の罰金
(DV防止法29条)が科されるのです。


しかし、妻はわざわざ夫を追い出してまでDVの現場となった自宅に離婚後、
住み続けることを必ずしも望んでいるわけではないので、



夫が他の条件(養育費や慰謝料、財産分与)を受け入れた上で
即、離婚が成立するのなら、本来、加害者が何の咎めも受けずに居座り、
被害者が暴力を振るわれた揚句、自宅を追い出されるのはおかしいけれど、



妻は早期解決の代償として接近禁止命令の申立を行わないこと、
自宅から退去することを約束するという駆け引きが可能です。


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