配当性向という言葉がありますが、期間利益に対してどの程度の配当を株主に対して行うかの比率のことを指します。配当性向10%というと利益に対して10%を配当に回しますよということで、これが一般的な比率かというとどちらかと言えば低い数値です。

 このところは配当金を増やす、ないしは配当性向を高める企業が徐々に増加しているように感じられます。


 中には夢真HD(2362)のように配当性向100%を掲げる企業も出てきました。配当性向100%で大丈夫かと投資家は質問したりしますが、彼らにとって内部留保は必要なく、人材投資を期間利益で賄う体制が整っていることが配当性向100%につながる訳です。
 結果としてはオーナー経営の場合、その配当金は20%の源泉徴収でオーナーの懐に回ることになりますが、残りの株主にとっては高利回りの金融商品となる ことになります。オーナーにとっては株価が上がれば資産評価が上がり良し、上がらなくても多額の配当金がもらえてこれも良し。利害関係は投資家と一致して いることになります。


【投資家=消費者とすれば配当金が増えると消費に回る】

 お金が増えると言う理屈が成り立てば、従業員への賃金上昇と同様に企業が配当金を増やせば景気にとってはプラスになります。
 ところが企業の施策で配当性向ではなく、これまでは多くが安定配当を指向し、収益が向上しても配当据え置きという企業が多く配当がもたらす景気への影響は限定されてきました。


 未来に訪れる企業業績の悪化に備えた内部留保や将来の投資に備えた内部留保を優先する企業もあれば、株主への利益還元を積極的に行う企業とが混在する株式市場ですが、投資先のない企業には現金がたまる一方です。
 結果として中には時価総額が保有する現金を下回っているケースも出ており、現在の株式市場には教科書的に言えば割安銘柄がたくさんあることに気がついておられる筈です。

 これは、キャッシュをうまく使えない企業としての烙印を押されている点を投資家が評価していないからと言うことができます。


 いくら割安感があっても将来の利益を生むための投資をしていないので先行きが不安だということへの投資家の評価の結果だということになります。

 利益を積み上げて手持ち資金を抱えたままの企業は、もっと配当性向を高めていく必要がありますが、経営者の多くは投資家へのリターンを怠りがちです。

 株価が上がっていれば良いですが、過去1年以上の値下がりを続けているキャッシュリッチな企業であれば増配をもって投資家に報いることが必要ではないでしょうか。


 夢真HDのような極端な事例はともかく配当性向が10%程度に留まっているようなキャッシュリッチ企業は25~50%へと高めるべきではないでしょうか。


【配当性向の低いキャッシュリッチ企業】

1)テノックス(1905)

 時価598円
 予想EPS130.25円 予想配当金22円
 配当性向16.9%

 仮に配当性向50%だと1株配当金65円(配当金4.5億円)
 配当利回り10.9%(本来の株主が主張すべき権利)

 BPS1388円、保有現預金57億円で年間65円、4.5億円の配当が経営の屋台骨を揺るがすことはない。

提言⇒株主は配当性向の引き上げを主張すべきではないか。


2)E・Jホールディングス(2153)

 時価868円
 予想EPS226.5円 予想配当金22円
 配当性向9.7%

 仮に配当性向50%だと1株配当金113円(配当金額6.3億円)
 配当利回り13.0%(本来、株主が主張すべき権利)

 期末想定BPS2737円 推定期末保有現預金80億円で年間113円、
 6.3億円の配当金が経営の屋台骨を揺るがすことはないと見られる。

提言⇒株主は配当性向の引き上げを主張すべきではないか。


 こうした事例は株式市場の中に随所に見られます。

 これからは株主の声をもっと経営者に届けていかないとなりません。


(炎)


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