東京市場の祝日が狙い撃ちされた2.11の相場波乱で、ドル円相場は111円を一瞬割る急激な円高進行となりました。
前日のイエレンFRB議長の利上げ慎重論によるドル安圧力に加えて、ドイツ銀行のリーマンショック以来の大幅赤字決算発表、欧州銀行株下落が金融不安を 連想させるユーロ発リスクオフによる円高圧力などなど、背景はいろいろありますが、複数の要因が重なったところにポジションの投げ売りや投機的動きが重な り、大きな下落力になったものと思われます。
111円~115円水準は2014年10月31日(金)の黒田バズーカ第二弾が出されたときに相場がジャンプアップしたときの空白、ギャップでした。今 回は、日柄経ってギャップを埋めてきた格好です。日経平均株価も、今年に入り、黒田第二弾のときの窓15,700円の窓を埋め、アベノミクス開始時と高値 の半値14,800円に到達しました。相当の日柄を経ても、窓埋めは、あるものだと改めて痛感します。
さて、2.11の急落後に、当局が相場のヒアリングをしているという噂が伝わり、「当局の介入があるか?」の思惑が広がり、ドル円相場は112から113円台へ。そして、さらに世界的な資本市場、商品市場の落ち着きを見て、週明けには115円直前まで戻しました。
ただ、戻りはここまでで、16日には、再び113円台へ。
この間、当局の為替介入があったかどうかは現時点では不明ですが、月末になると「外国為替の平衡操作の実施状況」として、財務省のホームページに掲載されます。
ドル円相場は、テクニカルの中長期トレンドでも下向きに転換してきたとチャートは示しているようです。2012年11月から明確に反転して上昇基調に 乗ってきましたが、昨年末あたりから微妙になり、マイナス金利発表で一時反転したものの、すぐに200日移動平均も大きく割り込んできました。
現状は、売られ過ぎでの移動平均からのかい離、介入警戒感等もあり、急落後の戻りとなっていますが、強力なエネルギーが下方に働きました。しばらくは上値を背に、基本、戻り売りが優位になっていく可能性が高そうです。
ただ、今後、日銀の質的量的緩和の長期継続+マイナス金利の拡大といった三重合わせ技は、しばらく続いていくものと思われます。これが、黒田氏の任期である再来年まで続行となると、結構大変なことになります。
日本のマネタリーベースは昨年末で356兆円、量的緩和政策で毎年80兆円増やしていますので、2年後にはGDP比100%超えになってしまいます。
為替は他の国の通貨との相対的な値段であり、一国の状態で相場が決まるわけではありませんが、外部環境の変化と相場の日柄調整が進んでいけば、地下に蓄積された円安のマグマはパワーアップして地上に吹き上げる可能性は否定できないと、個人的には、しつこく思っています。
マイナス金利採用を、今のところ評価する声は少なく、むしろ副作用を懸念する声が大きいわけですが、今後時間をかけて効いてくる可能性はあると思います。
個人投資家にとって便利な円のMMFやMRFのような円短期証券での運用商品が運用難で停止するところも出て、短期の低リスク商品を探すのが大変にな り、日本国債は長期も短期もマイナス利回りになり、機関投資家の債券のポートフォリオ構築も難しいという状況が続けば、利回りを求めて為替リスクもとって くる可能性は高くなるように思います。
日本のようなマイナス金利導入は世界初ですので、その影響については時間をかけて見ていく必要がありそうです。
資本市場に大きな影響を及ぼしている原油相場は、ロシアとサウジ他の条件つきでの増産凍結合意はあったものの減産合意にまでは至らなかったことから、またもや反落しました。
シリア問題で対立するロシアVSサウジ、そこに絡むシェールガスのアメリカ、経済制裁から復帰するイラン等、原油市場には国際政治のドロドロ、各国の思 惑が絡み合っているので、以前のOPEC時代より難しい展開が続きそうです。資本市場との相関が大きいだけに、推移を注意して見ていきたいところです。
つぎに、今後の注目点の一つ、先進国の中央銀行の金融政策決定会合についてです。
欧州中銀は、追加金融緩和(3月にも6月にも)あると予想され、一方、米国FRBは利上げの可能性は大幅に減ったとの予想が多くなってきてはいます。ま た、日銀は、前回の政策発表から日が浅くはありますが、政府も日銀も現在の状況に相当深刻な懸念を持って下支えする意向は強いと思います。3月の決定会合 も侮れません。
ユーロ圏に関連して注目しておきたいのが、ポンドです。一時は、米国の次に利上げに近い国が英国でしたが、利下げの思惑も出ています。
また、ユーロ対ポンド相場は、昨年一時0.70を割る(ポンド高ユーロ安)場面もありましたが、直近では0.78までユーロ高ポンド安基調になっています。
ポンド相場下落の背景の一つに、EU離脱問題があります。今月18日19日に行われるEUサミットでは、英国が提案したEU改革案(主に移民政策)が合 意されるかどうかが注目です。合意できれば6月に英国で国民投票でEU残留か離脱かが問われます。残留の可能性が大勢と言われますが、離脱派も結構いると 言われます。もしGREXIT、英国のEU離脱が決定された場合、新たなリスクオフ問題が起きる可能性もあります。注目しておきたいところです。
今年は申年。申年はうるさい、波乱が多いと言われます。引き続き、油断大敵で臨んでいきたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*2月17日17時執筆
本号の情報は、主に2月17日の東京市場終値水準のレートを引用しています。なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
前日のイエレンFRB議長の利上げ慎重論によるドル安圧力に加えて、ドイツ銀行のリーマンショック以来の大幅赤字決算発表、欧州銀行株下落が金融不安を 連想させるユーロ発リスクオフによる円高圧力などなど、背景はいろいろありますが、複数の要因が重なったところにポジションの投げ売りや投機的動きが重な り、大きな下落力になったものと思われます。
111円~115円水準は2014年10月31日(金)の黒田バズーカ第二弾が出されたときに相場がジャンプアップしたときの空白、ギャップでした。今 回は、日柄経ってギャップを埋めてきた格好です。日経平均株価も、今年に入り、黒田第二弾のときの窓15,700円の窓を埋め、アベノミクス開始時と高値 の半値14,800円に到達しました。相当の日柄を経ても、窓埋めは、あるものだと改めて痛感します。
さて、2.11の急落後に、当局が相場のヒアリングをしているという噂が伝わり、「当局の介入があるか?」の思惑が広がり、ドル円相場は112から113円台へ。そして、さらに世界的な資本市場、商品市場の落ち着きを見て、週明けには115円直前まで戻しました。
ただ、戻りはここまでで、16日には、再び113円台へ。
この間、当局の為替介入があったかどうかは現時点では不明ですが、月末になると「外国為替の平衡操作の実施状況」として、財務省のホームページに掲載されます。
ドル円相場は、テクニカルの中長期トレンドでも下向きに転換してきたとチャートは示しているようです。2012年11月から明確に反転して上昇基調に 乗ってきましたが、昨年末あたりから微妙になり、マイナス金利発表で一時反転したものの、すぐに200日移動平均も大きく割り込んできました。
現状は、売られ過ぎでの移動平均からのかい離、介入警戒感等もあり、急落後の戻りとなっていますが、強力なエネルギーが下方に働きました。しばらくは上値を背に、基本、戻り売りが優位になっていく可能性が高そうです。
ただ、今後、日銀の質的量的緩和の長期継続+マイナス金利の拡大といった三重合わせ技は、しばらく続いていくものと思われます。これが、黒田氏の任期である再来年まで続行となると、結構大変なことになります。
日本のマネタリーベースは昨年末で356兆円、量的緩和政策で毎年80兆円増やしていますので、2年後にはGDP比100%超えになってしまいます。
為替は他の国の通貨との相対的な値段であり、一国の状態で相場が決まるわけではありませんが、外部環境の変化と相場の日柄調整が進んでいけば、地下に蓄積された円安のマグマはパワーアップして地上に吹き上げる可能性は否定できないと、個人的には、しつこく思っています。
マイナス金利採用を、今のところ評価する声は少なく、むしろ副作用を懸念する声が大きいわけですが、今後時間をかけて効いてくる可能性はあると思います。
個人投資家にとって便利な円のMMFやMRFのような円短期証券での運用商品が運用難で停止するところも出て、短期の低リスク商品を探すのが大変にな り、日本国債は長期も短期もマイナス利回りになり、機関投資家の債券のポートフォリオ構築も難しいという状況が続けば、利回りを求めて為替リスクもとって くる可能性は高くなるように思います。
日本のようなマイナス金利導入は世界初ですので、その影響については時間をかけて見ていく必要がありそうです。
資本市場に大きな影響を及ぼしている原油相場は、ロシアとサウジ他の条件つきでの増産凍結合意はあったものの減産合意にまでは至らなかったことから、またもや反落しました。
シリア問題で対立するロシアVSサウジ、そこに絡むシェールガスのアメリカ、経済制裁から復帰するイラン等、原油市場には国際政治のドロドロ、各国の思 惑が絡み合っているので、以前のOPEC時代より難しい展開が続きそうです。資本市場との相関が大きいだけに、推移を注意して見ていきたいところです。
つぎに、今後の注目点の一つ、先進国の中央銀行の金融政策決定会合についてです。
欧州中銀は、追加金融緩和(3月にも6月にも)あると予想され、一方、米国FRBは利上げの可能性は大幅に減ったとの予想が多くなってきてはいます。ま た、日銀は、前回の政策発表から日が浅くはありますが、政府も日銀も現在の状況に相当深刻な懸念を持って下支えする意向は強いと思います。3月の決定会合 も侮れません。
ユーロ圏に関連して注目しておきたいのが、ポンドです。一時は、米国の次に利上げに近い国が英国でしたが、利下げの思惑も出ています。
また、ユーロ対ポンド相場は、昨年一時0.70を割る(ポンド高ユーロ安)場面もありましたが、直近では0.78までユーロ高ポンド安基調になっています。
ポンド相場下落の背景の一つに、EU離脱問題があります。今月18日19日に行われるEUサミットでは、英国が提案したEU改革案(主に移民政策)が合 意されるかどうかが注目です。合意できれば6月に英国で国民投票でEU残留か離脱かが問われます。残留の可能性が大勢と言われますが、離脱派も結構いると 言われます。もしGREXIT、英国のEU離脱が決定された場合、新たなリスクオフ問題が起きる可能性もあります。注目しておきたいところです。
今年は申年。申年はうるさい、波乱が多いと言われます。引き続き、油断大敵で臨んでいきたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*2月17日17時執筆
本号の情報は、主に2月17日の東京市場終値水準のレートを引用しています。なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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