ネットワーク社会が到来し、これを活用したビジネスが隆盛を極めるにつれて株式市場でもそうした潮流を背景に企業への評価に対してやや偏りが感じられます。


 多くのネットワーク活用型企業はデジタルでビジネスを推進していますが、一方においてアナログなビジネスも着実に成長を遂げつつあります。

 アナログだから評価が低い、デジタルだから評価が高いというのは恐らくは市場の判断が長い目で見ると間違っている可能性があります。


 ここで言うアナログは人の手や活動によって利益がもたらされるという意味ですが一方でデジタル型の企業はかけるコストが限定され濡れ手に泡のような利益 を生むこともあって、市場が期待する一攫千金の夢を実現させてくれることもあって、市場人気が高く、その結果評価が高くなることにつながっているように見 られます。


 株式市場には今年も既に56社が上場し投資家のリスクマネーを呼び込んでいますが、そこでもアナログ型企業とデジタル型企業とで大きく評価が異なっています。


 例えば、今年最初に上場したKeePer技研(6036)はカーコーティング材料の製造卸でサービス店舗を直営とFCで展開。着実な成長が期待される企業ながらアナログ型の事業で市場の評価は上場時にやや評価された程度でそれほど高い訳ではありません。
 また、ホクリョウ(1384)も北海道を地盤とした採卵養鶏場の大手でアナログ型の企業で上場時はほとんど人気がなく、余り注目されませんでした。

 ところが実際には業績が好調で後から注目を浴びました。

 それでもこれらの企業への評価はせいぜいがPER20倍から25倍程度でしかなく市場平均以下の銘柄が多いようです。


 一方ではデジタル型の企業の収益水準は低くてもPERが50倍と市場平均を大きく上回って評価されるケースが多いようです。

 例えば3月19日にマザーズ市場に上場したeマーケティング事業を展開するショーケースTV(3909)はまだ経常利益が3億円以下の水準ですが、時価総額は100億円にもなっており、PERは市場平均を大きく上回っています。
 ビッグデータ関連のALBERT(3906)の場合は上場直後に8160円という高値をつけましたが、これは今期予想EPS53円の154倍にもなっており、デジタル型企業の人気ぶりを伺わせます。
 ところがこのALBERTはその後株価は下落を続け先般ついに2000円を割り込み、高値から5分の1の水準にまで下落しようやく市場平均に接近してきました。

 デジタル型企業の成長期待が剥落した場合の怖さがここに露呈しました。


 先日企業訪問しました不動産FC事業とハウス・リースバック事業等を展開し成長期待が高まっているハウスドゥ(3457)はどうかと言うとこれもアナログ型の企業でPERはいまだに市場平均を下回っています。
 社長の成長意欲は高く、今後の事業拡大への自信はあふれているので、こうした評価は一変する可能性がありますが、市場はこうしたアナログ型企業への評価を見直す必要があるように思われます。


 とかくデジタル型企業がもてはやされ、幹事役を担う証券会社もそうした企業をIPOさせる傾向にありますが、その多くは事業基盤が弱く、ほとんどが数年すると消えてなくなる可能性もあります。

 これに対しアナログ型で独自のビジネスモデルを展開する企業は継続的な成長が見えており、じわじわと評価を高めると見られます。

 デジタル型の銘柄は上場後に短期的には人気化しますが、そこでPERが50倍、100倍と評価されるとその後、大きく利益が伸びないと株価は下落の運命を辿ります。

 需給に頼って株価を支える投資家がそうした企業の株価をいつまで支えられるのかは投資家自身の余裕のありなしで決まりますが、1年も維持できるかどうか、善良な投資家の多くがそうした銘柄で高値掴みをしてしまうことがありますので注意すべきではないでしょうか。


 一方では地味なアナログ型銘柄は多少の辛抱は必要ですが、その良さは収益の安定した拡大に連れて見直される筈です。


(炎)


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