■ウォルマートの仕入れ力とカンバン方式
日本企業の話に入る前に、E・D・L・Pを標榜し、(販売)価格戦争の勝者であるウォルマートについて触れます。創業者サム・ウォルトンが、1962年 に最初のウォルマート・ディスカウント・シティを、アーカンソー州ロジャーズに開いたのが、ウォルマートの起点ですが、創業者自身の事業は、ウォルトンが 1945年にアーカンソー州ニューポートにベン・フランクリン雑貨店を開いたことに始まります。バフェットの投資先としては、比較的「若い」企業と言える かもしれません・・・(バフェットの投資先には、IBM、コカ・コーラ、アメックス、ウェルズ・ファーゴなど100年を超える歴史を持つ企業がたくさんあ ります)。
ウォルマートの仕入れ力というと、その巨大な販売量にものをいわせて、メーカー(問屋)からの仕入れ値を叩くというイメージがあるかもしれません。たし かに、巨大な購買力が仕入れ価格の決定に有利に働いているのは間違いありませんが、それだけではありません。もっとも重要なのはロジスティクス=「配送・ 仕入れ管理」技術なのです。
仕入れ価格もさることながら、自社以外の関連企業も含めた、全体の商品の流通過程の中でコストを徹底的に削減し、その削減したコストを最終的にはすべて 消費者に還元する(売価に反映させる)というのが、ウォルマートのポリシーであり、そのポリシーが顧客に支持されたからこそ、世界的なビッグビジネスに成 長しました。
そのウォルマートのロジスティクスを支えているのは、どの競合よりも早くスタートしたITによる情報管理です。そして、そのITによる情報管理の核心部 分にあるのが、トヨタを始めとする日本のメーカーのお家芸である「ジャスト・イン・タイム」生産方式(=カンバン方式)です。
1980年代(バブル期)において、日本のメーカーは向かうところ世界に敵なしで、多くの欧米企業が日本企業(メーカー)をお手本として、その経営方式 を必死に学びました。残念なことに、自動車をはじめとする多くの欧米の製造業では、その日本の貴重なノウハウを有効に活用することができませんでした。し かし、欧米のサービス産業(小売業)においては日本メ―カーのノウハウを見事に吸収し、素晴らしいビジネスモデルを構築したのです。
また、ウォルマートの競争相手である、テスコ、カルフール、メトロ、ターゲットなどでも多かれ少なかれ「ジャスト・イン・タイム」生産方式(=カンバン方式)が、仕入れ力=ロジスティクス=「配送・仕入れの管理」技術向上のために活用されています。
それに対して、1980年代において、日本メーカー(の稼ぎ)に寄生して甘い汁を吸っていた日本のサービス(小売)産業、金融業は、大きく立ち遅れてしまいました。
■仕入れ力を持つ日本企業
日本でITを駆使して効率を上げているサービス(小売)企業の代表格と言えば、セブン・イレブンでしょう。弁当などの廃棄ロスを最小化するための同社の 情報システムはとても優れたものです。鮮度を維持するための1日3回配送を行うなどの作業は、一見非効率に思えるかもしれませんが、鮮度を維持する=商品 の価値を高める=売価を高く維持することは、相対的な売価に対する仕入れ値を安くすることにつながりますから、「仕入れ力を高める」ことになります。
<続く>
続きは、産業新潮
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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