何事もなく平穏無事にビジネスを続けている企業が、ある日突然、株主の論理で経営権を奪われるケースが起きたりします。株式市場に巣食う投資家に翻弄される脇の甘い企業も中には出てきます。通常は対抗措置を取りますが、企業の体力を消耗させることがあります。
それはいくら経営がしっかりしていても評価不足から株主の不満の中で、巻き起こることもあります。新たな投資家や別の企業体のM&Aといった形で変化を生じることになるケースもあります。
キャッシュリッチな企業にもキャッシュプアな企業にも投資家の鋭い目線が注がれています。不特定多数の株主はそうした事象に関心を寄せて資産運用に役立てることが必要です。
未来の運用成果は今からの仕込みの結果です。
今日明日の運用ではなく、数年間にもたらされる運用成果を求めて今の内に銘柄を選定しておきたいものです。
今回は3年程度の期間でM&Aされる要素をもった価値のあるキャッシュリッチな企業や低PBRに放置されているハイテク企業に焦点を当ててみたいと思います。
【前提】
100億円から1000億円規模の資金を持つ投資家が求める典型的な敵対的M&Aのターゲットとなりそうな中規模候補企業
1.財務内容良好なキャッシュリッチ企業
2.実質保有現預金が豊富で時価総額がそれよりも小さい企業
3.業態が地味で株価が低迷している低PER、低PBR企業
4.世界的に見てもユニークな技術、知的財産を有す企業
5.株主が分散していている企業
6.大手企業が筆頭株主でありながら比較的仕事上の関係が薄い企業
【私が投資家ならこの会社を狙う】
1)大成温調(1904)
時価:500円 実質時価総額65億円
空調・給水などの設備工事中堅、クリーンルームの設計・施工も手掛ける。海外展開にも注力。財務内容良好。浮動株約3割。実質保有現預金、有価証券、投 資有価証券を合わせて126億円に対して自己株式を控除した実質時価総額は65億円で圧倒的に小さい。連結従業員数は930名と比較的豊富。売上規模 570億円で時価総額の約9倍。収益性が低いため現状の株価は評価が低いと推察されます。この点への株主の不満があると考えられます。
筆頭株主はアミーコーポレーション13.8%を含む上位10位の株主が61.6%の株式を保有しているため、M&Aに至る確率は低いが絶えず候補にはなりうる企業と言えます。
2)テノックス(1905)
時価600円 実質時価総額41億円
建設基礎工事の大手。東北大震災の復興需要もあり着実な業績拡大を続けており、今期も含めて過去3期間高収益を維持。実質時価総額は41億円で実質保有現預金58億円を大きく下回っています。オリンピックに向け今期以降の業績拡大が見込まれる中での評価不足が顕著です。
浮動株26.9%、特定株44.7%で、比較的株式が分散している点が興味深いところです。自己株を除いた筆頭株主は住商セメント5.6%でまとまった大株主は不在です。R&D型企業で技術開発にも熱心です。
3)平田機工(6258)
時価613円 時価総額 66億円
自動車などの生産設備エンジニアリング会社。グローバル展開に注力して米国の3大自動車メーカーや英国のダイソンなど世界の有力企業から受注。
筆頭株主は社員持ち株会7.8%で平田家の保有株式は20%となっており、分散されています。浮動株は12.7%しかなく、株式の流動性は低い。特定株の比率は44.7%で、その他が過半数を占めています。
BPS1843円で時価はPBR0.3倍にしか過ぎません。有利子負債が210億円と多いですが、保有現預金は85億円となっていますので実質有利子は125億円となっています。
今期の経常利益水準は10億円の見込みですが、順調なら上方修正の余地があります。財務内容の充実のためには新株発行による資金調達が求められますが、 JASDAQから東証2部、1部への昇格の際に検討されるものと見られます。世界にも類を見ない企業なのでもう少しプレミアムがつかないとM&Aの対象に なっても不思議ではありません。塗布技術やロボット技術など技術レベルも高いと見られます。
このほか、遠藤製作所(7841)、大井電気(6822)、リーダー電子(6867)などまだまだM&Aされてもおかしくない低PBRの候補企業はたくさんありますが、これらに投資するのは忍耐と割り切りが必要となり、相応の覚悟が必要だと言う点を忘れないことです。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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