今回は退職後の資産運用について考えます。
定年退職をした方々の中には、退職金を受け取って初めて、これまで現役生活では経験をしなかったほどのまとまった金融資産を手にする方もいます。
そこで、まとまった「退職金」を運用するべく、最初に銀行や証券会社に相談しに行くといったケースが後を絶ちません。しかしそれはあまり賢明な順番とは言えません。
前2回の連載でも述べてきたとおり、「老後」の資産運用はあくまで「老後」の生活費に不足する部分を補うために必要な程度を運用するということが一番大事なポイントです。
そのためには、これまで学んできたように
「自分」は老後どの程度資金が必要なのか?
年金生活だけではどの程度不足するのか?
といったことをまず検討する必要があります。
例えば、第1回目の連載で学んだように、65歳以降年金収入だけでは生活費として年間70万円の資金が不足するようであれば、90歳まで生活すると仮定して、70万円×25年間=1750万円の資金が必要であると計算できます。
もしも65歳時点で1,500万円の貯蓄があるとすれば、老後の資産運用はどのように考えればよいでしょうか?
この場合には「資本回収係数」という計算式を使って計算します。
これは今持っているお金を一定利率で運用しながら、毎年いくらずつお金を取り崩して受け取れるかを計算するときに利用します。
今回のケースで、1500万円を持っていて25年間にわたって年間70万円を取り崩すには、安定的に1.23%の利率が必要なことが計算できます。
(インフレ率に関して今回は考慮しませんが、実際にはインフレ率を考慮して、この必要な利率に予測されるインフレ率を足した合計で考えることが必要です)
次に手元に置いておく、現預金の額を検討します。
私がアドバイスをする場合には年間不足資金の5年~10年分を手元に置いておくように勧めます。するとこの場合には350万円~700万円は現金で置いておくことになります。
この理由は資産運用を始めると、運用している資産は増えたり減ったりのブレが生じますので、当面の手元資金に心配することなく取り崩しのタイミングを計るのに5年~10年程度の余裕があることが望ましいからです。
今回10年分700万円は手元に現金として置いておくとすると、800万円が運用可能な資金となります。
この800万円に対する運用ポートフォリオを考えます。
オーソドックスに国内海外の株式・債券と4資産に均等に分散投資をしたとすると、日本株式200万円、日本債券200万円、外国株式200万円、外国債券200万円となります。
この基本的な4資産を10年間(2004年~2014年各種インデックス)保有した場合のリターンは年率4.7%でした。
手元の現金700万円は、現在の状況が続けば、利回り0と考えて良いので1,500万円全体では10年間で年平均2.5%程度のリターンがあったことになります。
これであれば、当初必要だと考えていた1.23%の利回りは十分に確保していたことになります。資産運用のリスクをそれほど取りたくなければ、現預金の量を増やすことで調整ができます。今回のケースではもう少し現預金が多くても大丈夫そうです。
このように、金融機関に相談に行く前に、まずは自分で
1)自分の老後にはどの程度資金が不足しそうなのか?
(1年でどの程度の資産を取り崩していく必要があるのか?)
2)不足する金額に対して、保有している資産にどの程度の運用利回りがあれば大丈夫なのか?
3)1年間で不足する金額の5~10年分は現金で置いておく
4)残った資産を運用することで2)の運用利回りはカバーできるのか?
といったところまでは検討して、金融機関に相談する場合には1)~4)の話を伝え、運用する金額と期待するリターンを基に話を進めて行くことをお勧めします。
もしもこうしたプロセスを、重視しない金融機関担当者であれば、長期的にお付き合いするにはふさわしくありませんので、他を当たった方が良いでしょう。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
定年退職をした方々の中には、退職金を受け取って初めて、これまで現役生活では経験をしなかったほどのまとまった金融資産を手にする方もいます。
そこで、まとまった「退職金」を運用するべく、最初に銀行や証券会社に相談しに行くといったケースが後を絶ちません。しかしそれはあまり賢明な順番とは言えません。
前2回の連載でも述べてきたとおり、「老後」の資産運用はあくまで「老後」の生活費に不足する部分を補うために必要な程度を運用するということが一番大事なポイントです。
そのためには、これまで学んできたように
「自分」は老後どの程度資金が必要なのか?
年金生活だけではどの程度不足するのか?
といったことをまず検討する必要があります。
例えば、第1回目の連載で学んだように、65歳以降年金収入だけでは生活費として年間70万円の資金が不足するようであれば、90歳まで生活すると仮定して、70万円×25年間=1750万円の資金が必要であると計算できます。
もしも65歳時点で1,500万円の貯蓄があるとすれば、老後の資産運用はどのように考えればよいでしょうか?
この場合には「資本回収係数」という計算式を使って計算します。
これは今持っているお金を一定利率で運用しながら、毎年いくらずつお金を取り崩して受け取れるかを計算するときに利用します。
今回のケースで、1500万円を持っていて25年間にわたって年間70万円を取り崩すには、安定的に1.23%の利率が必要なことが計算できます。
(インフレ率に関して今回は考慮しませんが、実際にはインフレ率を考慮して、この必要な利率に予測されるインフレ率を足した合計で考えることが必要です)
次に手元に置いておく、現預金の額を検討します。
私がアドバイスをする場合には年間不足資金の5年~10年分を手元に置いておくように勧めます。するとこの場合には350万円~700万円は現金で置いておくことになります。
この理由は資産運用を始めると、運用している資産は増えたり減ったりのブレが生じますので、当面の手元資金に心配することなく取り崩しのタイミングを計るのに5年~10年程度の余裕があることが望ましいからです。
今回10年分700万円は手元に現金として置いておくとすると、800万円が運用可能な資金となります。
この800万円に対する運用ポートフォリオを考えます。
オーソドックスに国内海外の株式・債券と4資産に均等に分散投資をしたとすると、日本株式200万円、日本債券200万円、外国株式200万円、外国債券200万円となります。
この基本的な4資産を10年間(2004年~2014年各種インデックス)保有した場合のリターンは年率4.7%でした。
手元の現金700万円は、現在の状況が続けば、利回り0と考えて良いので1,500万円全体では10年間で年平均2.5%程度のリターンがあったことになります。
これであれば、当初必要だと考えていた1.23%の利回りは十分に確保していたことになります。資産運用のリスクをそれほど取りたくなければ、現預金の量を増やすことで調整ができます。今回のケースではもう少し現預金が多くても大丈夫そうです。
このように、金融機関に相談に行く前に、まずは自分で
1)自分の老後にはどの程度資金が不足しそうなのか?
(1年でどの程度の資産を取り崩していく必要があるのか?)
2)不足する金額に対して、保有している資産にどの程度の運用利回りがあれば大丈夫なのか?
3)1年間で不足する金額の5~10年分は現金で置いておく
4)残った資産を運用することで2)の運用利回りはカバーできるのか?
といったところまでは検討して、金融機関に相談する場合には1)~4)の話を伝え、運用する金額と期待するリターンを基に話を進めて行くことをお勧めします。
もしもこうしたプロセスを、重視しない金融機関担当者であれば、長期的にお付き合いするにはふさわしくありませんので、他を当たった方が良いでしょう。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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