この銘柄は、その後高値3500円までありました。執筆時の株価が1451円ですから、実に+241%というパフォーマンスです。しっかり調査分析をし、それをよりどころに強気でホールドすることが成果をもたらすという好事例です。
自立した投資家、石川臨太郎のコンテンツをぜひ参考になさってください。
なお、内容は執筆当時の背景に基づいており、現在の状況と必ずしも一致しないことを予めご了承下さい。
==銘柄研究「帝国電機製作所(6333)」==
(有料メルマガ第210回・2013/1/15配信号)
本日は、1939年(昭和14年)創業の、キャンドモータポンプ(液漏れしないケミカルモーター)最大手で国内シェア60%、世界シェア40%と高シェアを持つ帝国電機製作所を、研究銘柄として取りあげます。
帝国電機製作所は、創業以来、鉄道信号機の製造・販売や電気自動車の開発など、常に研究開発型企業として成長を続け、1960年に完全無漏洩の帝国キャンドモータポンプの開発に成功し、これが帝国電機製作所の発展の原動力となっています。
キャンドモータポンプの「キャンド」とは「缶詰にする」という意味で、完全密閉構造を意味し、その最大の特徴は液漏れが全くないことです。従来型のポン プは原理上、取り扱い液が外部に漏れることが避けられませんでした。その問題を見事に解決したのが、帝国電機製作所の開発した「キャンドモータポンプ」で す。
キャンドモータポンプは、有害・危険な液体を絶対に外部へ漏らさないという特徴を持っており、環境を維持するために評価が高いです。その特性を活かし、 引火性のある液体や、薬品など漏れると危険な液を取り扱う石油化学や医薬品・食品業界、原子力発電所、変電所などさまざまな分野で活躍しており、JR新幹 線では帝国電機製作所の車両用の電動油ポンプが100%搭載されています。
まず、本日の研究銘柄として帝国電機製作所を選んだ理由を説明します。
1.好業績を維持していたのに、投資環境の悪化で1000円以下まで下落した株価が、円安の影響もあり回復基調が鮮明になってきているけれど、PERやPBRなどの投資指標的には、まだまだ割安の状況にあること。
1月11日の終値の株価1451円。一株純資産1572円。2013年3月期の通期の一株利益予想166.43円。自己資本比率68.8%。
以上のようにPER(8.72倍)やPBR(0.92倍)などの指標でみる、まだ充分に割安です。
帝国電機製作所の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6333&ba=1&type=year
帝国電機製作所が当初に発表した2013年3月期の業績予想は前期比増益の計画であり、第2四半期時点でも上半期の業績数字は当初予想よりも良かったのですが、通期予想については第2四半期(=上期)時点では据え置きました。
○当初の上期一部利益予想 59.83円 実績 64.43円
為替相場で円安が進んでいるので、通期業績も増益修正される可能性が高いと考えたことが本日の研究銘柄として選んだ一番大きな理由です。
2.2012年の年末にはヘッジファンドの円売りが積み上がっていたために、年が明ければ円高に戻ると予想する機関投資家のアナリストな どが多かったのですが、実際には円高には戻らずに、さらに円安方向に動いているので、業績の良い輸出銘柄への資金の流れが強くなっていること。
しかし、ほんの少し米国市場の株価が低迷したり、ドル円相場が円高方向に向かうと、株価が安くなることも多いので、安く投資するチャンスが、まだ充分にあると考えられること。
帝国電機製作所の3ヶ月間のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6333&ba=1&type=3month
ただ、右肩上がりのトレンドは続いているので、2013年3月期第3四半期の決算短信が発表されて、市場の予想(=従来の業績予想より)増益になってい ると、更に株価の上昇が早くなる可能性があるので、事前に帝国電機製作所の内容を把握して、第3四半期の決算発表を待って、その結果により投資判断を素早 く行なう準備をしておくのは意味があると考えました。
2011年11月21日の日経ニュースには、帝国電機製作所の業績の良さを期待させるような、以下のような記事がありました。引用させていただきます。
(引用開始)
『主力のポンプ事業は国内外で化学物質用が伸びる。北米や東南アジアでは自動車用の引き合いが活発。中国では脱硫装置の大型案件も獲得する。3期連続で増 収。13年から中国・大連の工場が本格稼働。部品の現地調達に努め、円高による為替差損を減らす。年配当は2円増やし24円。』
(以上で引用を終わります)
帝国電機製作所が発表したわけではないので100%信じることは危険で、帝国電機製作所の決算発表を確認する必要があります。しかし事前に帝国電機製作所をチェックしておく要因にはなると考えています。
3.帝国電機製作所は、低PERかつ低PBRかつ自己資本比率が68.8%と高いことと、世界シェアの高いキャンドモータポンプ(液漏れしないケミカルモーター)という有力商品を持っていること。
以上から帝国電機製作所を本日の研究銘柄として選びました。
まずいつものように帝国電機製作所の資産価値から確認していきます。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr2/tdnetg3/20121108/7pt6y6/140120121010015662.pdf
平成25年3月期の第2四半期の決算短信から調べました。必ず自分の眼で確認する癖をつけてください。なお、上記決算短信には、投資有価証券については 「投資その他の資産」としてまとめ書きされていること、また土地についても有形固定資産の欄に「その他(純額)」として、まとめ書きされているので、前期 末の有価証券報告書の投資有価証券の金額、土地の金額で代用しました。
現・預金30.2億円
+投資有価証券9.4億円
+受取手形及び売掛金62.3億円
+在庫39.1億円
+土地簿価16.6億円
-全部の負債(他人資本全部)64.9億円
=92.7億円
時価総額は原稿執筆時(1月11日終値)の株価1451円(9,093,885株)で計算すると、132億円になります。決算短信発表時の自己株式は株数に含めず計算しています。
創業が1939年なので、持っている土地の含み益は相応に見込めそうですが、住所が特定できたのが兵庫県たつの市の本社と、新宮工場と、埼玉県の東京 サービス工場だけでした。近隣公示地の価格を参考に推定すると、20億円程度の含み益がありそうです。他にも、日本国内に子会社所有地を含めて 52,777.65平米の土地を所有し、その簿価が9.5億円程度です。1平米当たりの簿価は18,012円です。この部分にも含み益があると推定が出来 ます。
時価総額に対する資産価値はやや低いですが、事業価値は高いです。安定的に業績を伸ばしています。
私は、投資を検討する銘柄の『本質的な企業価値』というのは『資産価値』と『事業価値(利益を稼ぎ続ける収益力)』を総合したものだと考えています。
事業価値(=利益を上げ続ける収益力)を推定するために、4つの経済サイクルのうち一番短い3年~4年でサイクルを描く在庫循環を参考に、企業の4年間 の平均経常利益を計算し、その5年分つまり5倍を事業価値と考えるようにしています。事業価値はバランス・シート上に載っていないビジネス・モデルや企業 の信用力、社長や社員の能力、ネットワークの力などで利益を稼ぎだせる力を現金換算しなければ計算できません。しかし、これを簡単に算出することは不可能 です。したがって過去の企業の経常利益で代用し、事業価値を把握するようにしています。
帝国電機製作所の経常利益は、リーマンショックを乗り越えて順調に回復してきています。2009年3月期から1708百万円→1238百万円→1523 百万円→2130百万円。4年間の平均は1649.7百万円です。この5倍の82.4億円を帝国電機製作所の事業価値と考えます。
資産価値と事業価値から考えて、帝国電機製作所は割安だと判断しました。
土地を除いた固定資産など、上記の資産価値に計上しなかった、資産を見てみます。
有形固定資産(建物等)39.3億円
+その他の資産10.6億円
=49.9億円
続いて事業価値を定性的に考えてみます。
帝国電機製作所の主要な事業はポンプ事業と電子部品事業です。
売上に占める割合は、前期の2012年3月期においては主力のポンプ事業が約84%、自動車用電子部品事業が約13%です。
http://www.teikokudenki.co.jp/history.html
帝国電機製作所は技術開発力が高く、また中国に対する進出でも同業他社より早くスタートしています。性能が重視される原発やケミカルポンプは過去の実績 が評価され、定着率が高いという特徴がありますから、日本と違い原発の新設を止めることが無いと考えられる中国での事業は、今後も期待できると考えていま す。
中国ばかりではくアメリカにおいても先行しており、2008年8月時点では、アメリカの原発の2次冷却水用キャンドモータポンプの唯一の認定業者でし た。今回も帝国電機製作所のIRに、その後ライバルの日機装などがアメリカでの認定を得たかどうか聞いてみましたが、特にそのような情報は得ていないとの ことでした。
日本の原発事故を受けて、アメリカなどの先進国では原発の新設が遅れている状況ですが、今後原発の新設などが動き出せば、いまでも業績が伸びている帝国 電機製作所の業績が更に伸びる可能性は期待できると考えています。中国と同様に、原発のように安全性を最重視しなければならないものの部品は、過去に実績 のある企業が有利であることに変わりはないと考えます。
アメリカの景気悪化も深刻でしたが、環境保護に関してはますます厳しくなっていくことが予想されます。景気が悪かったので、アメリカのケミカルポンプ市 場においては、従来の汎用型ポンプから環境保護に適した無漏洩のキャンドモータポンプへの切り替えが進んでいなかったようですが、今後はアメリカの景気も 回復していくと考えられており、この分野でも帝国電機製作所の事業に良い影響が出てくると考えられます。従来のケミカルポンプ市場の規模は600億円程度 と言われていましたが、無漏洩ポンプのシェアは10%程度のようで、まだまだ需要拡大が見込めます。
あと、シェールガスの開発に帝国電機製作所のポンプが使われているかどうかIRに質問しました。シェールガスの採掘には使用されていないとのことでし た。しかし、シェールガスを利用して新たなケミカル工業のプラントが建設されるところまで来れば、帝国電機製作所の無漏洩ポンプの利用が期待できるという ことでした。米国では価格の安いシェールガスが原料として使用できるということで、大手の化学メーカーなどの米国回帰が話題になっています。これによって 新たな化学プラントが新設されることは確実視されています。
またアメリカでも中国でも、景気浮揚策としても電力や鉄道などインフラ投資の増加が期待されていますが、原発でも鉄道向けにも帝国電機製作所の製品が求 められています。新幹線のぞみ500系・700系の全車両に、キャンドモータポンプを応用した電動用ポンプが使われています。しかし、原発や鉄道ばかりで なく、帝国電機製作所のポンプはダイキン工業など日本の大型冷凍機8メーカー全てに採用されており、現在はあまり業績が芳しくない半導体向けウエハー洗浄 用ポンプや、自動車部品もいずれは回復してくると考えられます。
【帝国電機製作所の強み】
日本国内ポンプメーカーの大部分は、ポンプ部分は自社で製造するものの、その動力源であるモータは、モータメーカーより購入しているケースがほとんどで す。帝国電機製作所は、ポンプ本体の設計とあわせてモータ設計も行う技術・生産体制をとっています。そのために高い開発・技術力を維持しており、常に最高 品質の製品を供給する力が強い点が強みです。
【キャンドモータポンプのメリット】
http://www.teikokudenki.co.jp/productstop.html
○取扱い液が外部に漏れるおそれがないので、人体に有害な液、爆発や引火しやすい液、高価な液、腐食性のある液などの取扱いに適しています。
○外気を吸い込まないので、真空系での運転、外気に触れると変質する液などの取扱いに適しています。
○軸シールがないので、系の圧力が高い、高温液、低温液、高融点液などを取扱うポンプの製作が容易です。
○潤滑油を必要としないので、取扱い液の汚染がなく、給油の手間が不要です。
○モータを冷却するファンがないので運転音が静かです。
【帝国電機製作所の経営者の問題意識と今後の方針】
2012年3月期の有価証券報告書に書かれているものをまとめておきます。
今後の経済見通しについては、欧州の財政危機の再燃懸念等、不確実な状況が依然残っていますが、中国をはじめとしたアジア、新興国の経済成長及び北米の回復基調も持続すると見られ、主に海外において、景気は好調を維持していくものと考えています。
一方、日本の国内景気は復興需要もあり、一部に復調の兆しが見られるものの、原油価格の高騰や雇用情勢の悪化懸念等、不透明な要因もあることから、景気回復には時間を要するものと予想されます。
キャンドモータポンプ業界全般としては、外需については米国やアジア諸国等で好調な景気が続くものと考えられますが、内需については東日本大震災からの 設備投資関連の復興需要が一部に見られるものの、国内の設備投資は依然として厳しく本格回復には至っていません(私としては安倍政権の誕生で、この点につ いては今後改善されていくと考えています)。
また、昨今の円高基調の中では、顧客企業の設備投資の大半が海外の生産拠点へとシフトしていく傾向があることから、内需に期待することは難しいと予想されます。
帝国電機製作所においては、このような外部環境のもと、
1)北米でのキャンドモータポンプ市場の拡大を図るための営業力強化・サービス体制の拡充
2)中国市場での更なるシェアアップを図るための営業力強化・サービス体制の拡充
3)欧州でのブランド認知度向上・代理店網の整備
4)韓国、台湾、東南アジア地域での販売力の強化
5)BRICsをはじめとした新興市場への販路拡大
等、積極的な海外戦略を推進していく方針です。
また、国内においては、長年築いてきたブランドパワーを活かしながら、継続的な技術開発・新製品の投入を行うとともに、一層のコスト低減による価格競争力強化・人材育成等に注力し、利益確保を図っていきます。
今後とも、キャンドモータポンプでのトップメーカーとして、ポンプ業界、とりわけ耐食性ポンプの分野にキャンドモータポンプの地位をより強固にすることを通じ、世界的なマーケットシェアの向上、収益構造の改善、安定成長企業としての更なる基盤の確立を目指していきます。
最後に、2012年3月期の有価証券報告書から、帝国電機製作所の研究開発の状況を見ておきます。
帝国電機製作所の研究開発は、技術開発センターが中心となり、環境調和型製品の開発、ITを駆使した制御技術開発、先進技術の開拓、新規材料を用いた機能性重要部品の評価試験などを積極的に行っています。
2012年3月期の研究開発費の総額は4億3百万円でした。
<1.ポンプ事業>
○キャンドモータポンプ安定運転のための情報監視システムの開発を行っています。これは主に超大型キャンドモータポンプに採用されますが、全てのポンプに 搭載可能となるシステムになっています。このシステムは遠隔監視が可能であり、信頼性の高い安定運転とポンプのメンテナンス時期を的確に予測することがで き、生産現場における生産コストの削減に貢献できます。
○高圧変圧器用電動油ポンプは、国内においては100%シェアを誇るものの、海外市場においては、米国のスマートグリッド(次世代送配電網)や、アジア、 アフリカ、南米の電力インフラ整備、省エネ社会に寄与する高速新幹線鉄道網等など、高圧変圧器を取り巻く市場は急速に広まっています。そこで海外市場に向 けた軽量高効率かつ従来型同等の高信頼性を有し、コストダウンを図った世界で戦える価格競争力のある電動油ポンプを開発しています。
ポンプ事業に係る研究開発費は、4億3百万円です。
<2.電子部品事業>
電子部品事業は、子会社である株式会社平福電機製作所で、自動車用電装品及び産業機器用電子基板を製造しています。具体的には、組立部門とSMT表面実 装部門があり、特にSMT表面実装部門としてはコストダウンのための最新設備への更新、実装能力向上、高品質製品への追求などの製造技術の向上に取組んで おり、特に研究開発に相当する活動は行なっておりません。従って、電子部品事業に係る研究開発費は計上されていません。
いままで見てきたように、世界中の将来有望な市場で高いシェアを確保している高技術企業である、帝国電機製作所の株価が、大きく増益基調を維持している のに、投資環境の悪化で大きく下落して回復基調に入っているときに投資を検討するのは意味があると考えて、本日の研究銘柄として取り上げました。
経済的独立ワクワク!サポーター 石川臨太郎
★有料メルマガはこのほかにも投資哲学や心理的な投資行動の考え方など、様々な投資家を取り巻く環境や、気になる銘柄にコメントする「コラム」があります。ぜひ一度ご購読下さい。
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過去サンプル(研究銘柄)
http://okuchika.jugem.jp/?eid=5007 ★NEW!(2013/1/15配信号)
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4234
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4244
過去サンプル(コラム)
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4935 ★NEW!(2014/4/1配信号)
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4222
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4235
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4245
http://okuchika.jugem.jp/?eid=4256
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