前々回から3月28日に出版した本を記念して、これから本の内容を連載の形態で少しご紹介します。
本文は東洋経済Onlineにて全文公開しています。
それでは第3回は【保険とおカネ】編です。
いきなりですが、質問です。
そもそも保険とは、何のために必要なのでしょうか?
「そんなの、もしものことに備えるために決まっているではないか」
そうですよね。では、備えなくてはいけない「もしものこと」とは、どんなことでしょう??
事故、自然災害、ケガ・病気などなど、いろいろと思いつくと思いますが、実は、これらの「もしものこと」には、保険をかけるべきものと、そうでないものがあるのです。
この図をご覧ください。
http://mlplanning.co.jp/blog/assets_c/2014/04/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF-334.html
これは、リスクマネジメントの教科書にはかならず載っている図で、備えるべき「もしものこと」、すなわちリスクを、起こる頻度とダメージの大きさで分類し、それぞれの対処法を示したものです。
リスクマネジメントの世界では、それぞれのリスクに対して、取るべき対処法を以下のように考えます。
まずは、頻繁に起きるし、起きたときのダメージも大きいA型に対しては、そのリスクを「回避」するのが、正しい対処法だとされています。たとえば、雨が 降るたびに裏山が崩れて、その都度、家に大きな損害が生じてしまうような場合(現実にはあまりありえない状況ですが)、安全な場所に引っ越したり、土砂よ けの強靭な壁を作って、土砂崩れが起きても家に被害が及ばないようにするなど、リスクそのものから逃れる術を講じるのが正しい対処の方法になります。
次に、頻度は小さいけれど、一度起きてしまうと大きなダメージが生じるB型のリスクの場合ですが、このタイプのリスクに対しては、「保険」をかけておく のが正しい対処法だとされています。たとえば、火事で家が燃えてしまうということは、人生の中でそんなに何度も経験することはありませんが、一度でも起き ると数千万円レベルの損失が生じてしまいます。こういったリスクに対しては、保険をかけておき、損害を補償するようにすべきで、多くのご家庭が火災保険に 入っているのはそのためです。
次に、頻繁に起きるけれどダメージがさほど大きくないC型のリスクは、「防止」する、すなわち、なるべくそのリスクが起きないようにするのが、リスクマネジメントの王道の考え方です。C型のリスクに対しては、保険は適切
な対処法ではありません。
最後に、起きる頻度が小さく、また、起こったところでダメージも小さいD型は、要はたいしたことのないリスクなので、これに関しては何もせずに、リスクはリスクとしてそのまま「保有」するのが正しいとされています。
では、「病気」というリスクは、A型からD型のうち、どこに該当するのでしょうか。B型だと思った方、残念ですが間違いです。実は病気は、日本のサラリーマンにとってはC型、すなわち保険をかけるのではなく、「防止」するのが正しい対処法なのです。
「いや、がんみたいに重大な病気は、ダメージが大きいはずだ」と思われた方。確かに、がんのような重大な病気は、身体に対するダメージは非常に大きいです。だから、医療保険に入ることで病気になる可能性が減るというのであれば、ぜひとも医療保険に入るべきです。
でも、医療保険で補償されるのは、あくまでも「おカネ」です。そして、おカネのダメージの面から言えば、日本のサラリーマンは知らない間にすでに手厚い保険に守られているので、これ以上、医療保険をかける必要などないのです。
たとえば、病気やケガで何日間か会社を休まなくてはならなくなった場合、当初の3日間の保障はありませんが、4日目以降は標準報酬月額の3分の2が支給 されるように保障されています(標準報酬月額というのは、基本給など報酬から「臨時的に支払われるもの」を除いた部分をいいます)。これが傷病手当金で す。
傷病手当金は、最長1年半支給されます。つまり、大きな病気をして何カ月も会社を休まなくてはいけなくなったとしても、従業員が経済的な苦境に陥らないように、制度として確立されているのです。
=医療費にはキャップがかかっている=
「給料に代わって手当てが出るからといって、治療費がかかるから、やはり経済的には不安だ」と感じる人もいるかもしれませんが、その点は「高額療養費制度」が守ってくれています。
「高額療養費制度」というのは、簡単にいうと、1カ月に負担しなくてはいけない治療費の上限を決めている制度です。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf
(出所)厚生労働省
月々の上限負担額は、右の図のように所得区分によって異なります。
たとえば、月収53万円以上の上位所得者の人が、ある病気の治療で300万円かかった場合、本人の負担がいくらになるかを計算してみましょう。まず、治 療費の300万円から50万円引くと250万円。その1%である2万5000円に、ベースとなる15万円を加えた17万5000円が、この場合の月額負担 の上限です。
同じ治療を一般区分の人が受けた場合も計算すると、10万7430円。
低所得者区分の人の場合はそもそも上限が3万5400円ですので、そのままです。
このように、仮に重い病気にかかり、3カ月間、毎月300万円の治療費がかかる治療を受けたとしても、総額の負担は上位所得者で50万円ちょっと、一般の人で30万円強、低所得者の人の場合、10万円強の負担ですんでしまうのです。
この程度の負担であれば、ある程度の預貯金があれば普通に払えてしまいますので、わざわざ月に何千円か支払って、医療保険に加入する必要はないのです。
もし、この程度の医療費が支払えないくらい家計が厳しいのだとしたら、そっちのほうがよっぽど問題ですので、まずは生活全般を見直すところから始めるべきです。
【以下省略】
連載全文を読みたい方は東京経済Onlineにて公開中です。
⇒http://toyokeizai.net/articles/-/34533
書籍はAmazonにて発売中
⇒http://goo.gl/mFL4im
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
本文は東洋経済Onlineにて全文公開しています。
それでは第3回は【保険とおカネ】編です。
いきなりですが、質問です。
そもそも保険とは、何のために必要なのでしょうか?
「そんなの、もしものことに備えるために決まっているではないか」
そうですよね。では、備えなくてはいけない「もしものこと」とは、どんなことでしょう??
事故、自然災害、ケガ・病気などなど、いろいろと思いつくと思いますが、実は、これらの「もしものこと」には、保険をかけるべきものと、そうでないものがあるのです。
この図をご覧ください。
http://mlplanning.co.jp/blog/assets_c/2014/04/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF-334.html
これは、リスクマネジメントの教科書にはかならず載っている図で、備えるべき「もしものこと」、すなわちリスクを、起こる頻度とダメージの大きさで分類し、それぞれの対処法を示したものです。
リスクマネジメントの世界では、それぞれのリスクに対して、取るべき対処法を以下のように考えます。
まずは、頻繁に起きるし、起きたときのダメージも大きいA型に対しては、そのリスクを「回避」するのが、正しい対処法だとされています。たとえば、雨が 降るたびに裏山が崩れて、その都度、家に大きな損害が生じてしまうような場合(現実にはあまりありえない状況ですが)、安全な場所に引っ越したり、土砂よ けの強靭な壁を作って、土砂崩れが起きても家に被害が及ばないようにするなど、リスクそのものから逃れる術を講じるのが正しい対処の方法になります。
次に、頻度は小さいけれど、一度起きてしまうと大きなダメージが生じるB型のリスクの場合ですが、このタイプのリスクに対しては、「保険」をかけておく のが正しい対処法だとされています。たとえば、火事で家が燃えてしまうということは、人生の中でそんなに何度も経験することはありませんが、一度でも起き ると数千万円レベルの損失が生じてしまいます。こういったリスクに対しては、保険をかけておき、損害を補償するようにすべきで、多くのご家庭が火災保険に 入っているのはそのためです。
次に、頻繁に起きるけれどダメージがさほど大きくないC型のリスクは、「防止」する、すなわち、なるべくそのリスクが起きないようにするのが、リスクマネジメントの王道の考え方です。C型のリスクに対しては、保険は適切
な対処法ではありません。
最後に、起きる頻度が小さく、また、起こったところでダメージも小さいD型は、要はたいしたことのないリスクなので、これに関しては何もせずに、リスクはリスクとしてそのまま「保有」するのが正しいとされています。
では、「病気」というリスクは、A型からD型のうち、どこに該当するのでしょうか。B型だと思った方、残念ですが間違いです。実は病気は、日本のサラリーマンにとってはC型、すなわち保険をかけるのではなく、「防止」するのが正しい対処法なのです。
「いや、がんみたいに重大な病気は、ダメージが大きいはずだ」と思われた方。確かに、がんのような重大な病気は、身体に対するダメージは非常に大きいです。だから、医療保険に入ることで病気になる可能性が減るというのであれば、ぜひとも医療保険に入るべきです。
でも、医療保険で補償されるのは、あくまでも「おカネ」です。そして、おカネのダメージの面から言えば、日本のサラリーマンは知らない間にすでに手厚い保険に守られているので、これ以上、医療保険をかける必要などないのです。
たとえば、病気やケガで何日間か会社を休まなくてはならなくなった場合、当初の3日間の保障はありませんが、4日目以降は標準報酬月額の3分の2が支給 されるように保障されています(標準報酬月額というのは、基本給など報酬から「臨時的に支払われるもの」を除いた部分をいいます)。これが傷病手当金で す。
傷病手当金は、最長1年半支給されます。つまり、大きな病気をして何カ月も会社を休まなくてはいけなくなったとしても、従業員が経済的な苦境に陥らないように、制度として確立されているのです。
=医療費にはキャップがかかっている=
「給料に代わって手当てが出るからといって、治療費がかかるから、やはり経済的には不安だ」と感じる人もいるかもしれませんが、その点は「高額療養費制度」が守ってくれています。
「高額療養費制度」というのは、簡単にいうと、1カ月に負担しなくてはいけない治療費の上限を決めている制度です。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf
(出所)厚生労働省
月々の上限負担額は、右の図のように所得区分によって異なります。
たとえば、月収53万円以上の上位所得者の人が、ある病気の治療で300万円かかった場合、本人の負担がいくらになるかを計算してみましょう。まず、治 療費の300万円から50万円引くと250万円。その1%である2万5000円に、ベースとなる15万円を加えた17万5000円が、この場合の月額負担 の上限です。
同じ治療を一般区分の人が受けた場合も計算すると、10万7430円。
低所得者区分の人の場合はそもそも上限が3万5400円ですので、そのままです。
このように、仮に重い病気にかかり、3カ月間、毎月300万円の治療費がかかる治療を受けたとしても、総額の負担は上位所得者で50万円ちょっと、一般の人で30万円強、低所得者の人の場合、10万円強の負担ですんでしまうのです。
この程度の負担であれば、ある程度の預貯金があれば普通に払えてしまいますので、わざわざ月に何千円か支払って、医療保険に加入する必要はないのです。
もし、この程度の医療費が支払えないくらい家計が厳しいのだとしたら、そっちのほうがよっぽど問題ですので、まずは生活全般を見直すところから始めるべきです。
【以下省略】
連載全文を読みたい方は東京経済Onlineにて公開中です。
⇒http://toyokeizai.net/articles/-/34533
書籍はAmazonにて発売中
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代表取締役 小屋 洋一
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