本連載を初めてお読みになる方は<孫子の投資法その1>を先にご覧ください。
■投資とは詭道なり その4■
◎首を切る=将軍が私のはかりごとに従わない場合には、彼をもちいたならばきっと負けるからやめさせる
孫子のこの言葉は、次のようなエピソードでとても有名です。
呉の大臣から王に推薦された孫子は、兵法理論13巻を呉の王に献呈します。その兵法を読んで素晴らしいと思った呉王は、理論を実戦に応用できるかどうか試すために、彼に女官の訓練を命じます。
孫子は女官を「左」と「右」の両組みに分け、呉王の寵愛を受ける二人の妃を女官の訓練を担当する「左」と「右」のリーダーに任命しました。
孫子は皆の前で訓練の要領をきちんと説明します。しかし、王の寵愛を受けている女官たちは、孫子の話をきちんと聞かず、隊形が乱れてしまいます。しか し、孫子は根気よく何回も説明を繰り返します。ところが、女官たちは、孫子を馬鹿にするかのように、てんでバラバラのままです。
すると孫子は王に向かってこう言います。「王が将軍に命令をきちんと伝えずに作戦がうまくいかないのは、将軍の責任ではありません。しかし、命令をきちんと伝えたのにもかかわらず作戦がうまくいかないのは、将軍が無能な証です」
言い終わると、孫子は刀を振り上げ、王がやめるように懇願したにも関わらず、寵姫二人の首をはねてしまいます。
そして、「右」と「左」のそれぞれの組の先頭に立つ女官を新たに任命し、訓練をやり直しました。さすがに、今度は女官は遊びもせず号令に従います。
その素晴らしく整った隊形を見て、孫子の智恵を理解した呉王は、寵姫二人の首を刎ねた孫子をあたたかく迎え入れます。
実話なのかどうか疑わしいところもありますが、孫子の思想を端的に現す逸話です。孫子の兵法では、できるだけ味方の犠牲を出さないことを重視しますが、 それは勝利するための兵力を温存するためであって、争いごとはやめようというような、いわゆる「平和主義」とは根本的に違います。
争いは不可避だから、戦いの準備は常に行う。そのためには、無駄なもめごとで貴重な兵力を失ってはならないということです。
ですから、勝利する為であれば、味方(寵姫=将軍)の首をいとも簡単に刎ねるという恐ろしい側面も持っているのです。
さて、孫子の兵法で将軍として登場するのが、ビジネスの世界でいえば経営者です。そして、王として登場するのがオーナー=株主です。
現実の世界では、まるで経営者が会社を支配しているような顔をしている(もちろん経営者=大株主の場合はその通りですが)ことがよくあります。しかし会社の所有者は、120%間違いなく株主です。
例えば、マンションの場合であれば、<株主=マンションオーナー><経営者=管理組合>というイメージです。管理組合は、マンションオーナーから委託を 受けてマンションの管理等の業務を行いますが、マンションを所有しているのは管理組合では無く、あくまで各々のオーナーです。
管理組合が管理費を適正に使ってマンション管理をきちんと行うように命令して従わせるのが、各マンションオーナーの役割です。同じように、企業の経営者が株主の資産を有効に活用して会社を発展させるよう監視するのが株主の役目です。
ですから、ストックオプションを採用したり、株主のものである会社の財産を経営者自身の野望のために無駄遣いする経営者の首は即刻切るべきです。
例えば、ストックオプションは2重の意味で株主に対する背信行為です
1)株主が株式を購入する場合には、どのような場合でも(現金という)対価を支払う。
また、株主は株式を購入した後、株価が下がれば痛みを感じるが、ストックオプションを付与された役員や従業員は痛くもかゆくもない。
ただその会社に在籍をしているというだけで、(個人として)何の明確な業績も上げていないのに、例えば市場全体の株価が上昇したというだけで、オプションで利益を上げるのはお手盛り以外の何物でもない。
企業の業績と収入が連動すれば、役員や従業員のやる気が高まるというのであれば、給与の一部を株式で現物支給すれば良いだけである。そうすれば、株価が下がったときも株主と同じ痛みを感じ、一生懸命働くであろう。
2)ストックオプションの会計上の費用計上が不明確である。オプションは実行されるまで、実際のコストがわからないし、基本的に準備金を積まない。
そのため、株主から見て、実際に存在するのにバランスシートには出てこない「隠された債務」である。
ストックオプションの問題点については、私の著書、
日本株で成功する バフェット流投資術
企業情報を読み解け!、バフェット流<日本株>必勝法
「バフットからの手紙」
をご参照ください。
バフエットは、その年次報告書(バフエットからの手紙)の中で、過去数十年にわたって、何回も激しい調子でストックオプション制度を非難しています。(例えば「ストックオプションは、株主のポケットの財布に手を付ける行為だ」とも言っています)
読者がその企業の大株主であれば、背信行為を行う経営者(将軍)の首を切ることはさほど難しくはありません。それでは、1%にも満たない株式を保有して いる投資家はどうしたらよいのでしょうか?その場合は、その企業の株式を売却して、株主に誠実な経営者(将軍)が経営している企業を見つければ良いので す。
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(OH)
*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
■投資とは詭道なり その4■
◎首を切る=将軍が私のはかりごとに従わない場合には、彼をもちいたならばきっと負けるからやめさせる
孫子のこの言葉は、次のようなエピソードでとても有名です。
呉の大臣から王に推薦された孫子は、兵法理論13巻を呉の王に献呈します。その兵法を読んで素晴らしいと思った呉王は、理論を実戦に応用できるかどうか試すために、彼に女官の訓練を命じます。
孫子は女官を「左」と「右」の両組みに分け、呉王の寵愛を受ける二人の妃を女官の訓練を担当する「左」と「右」のリーダーに任命しました。
孫子は皆の前で訓練の要領をきちんと説明します。しかし、王の寵愛を受けている女官たちは、孫子の話をきちんと聞かず、隊形が乱れてしまいます。しか し、孫子は根気よく何回も説明を繰り返します。ところが、女官たちは、孫子を馬鹿にするかのように、てんでバラバラのままです。
すると孫子は王に向かってこう言います。「王が将軍に命令をきちんと伝えずに作戦がうまくいかないのは、将軍の責任ではありません。しかし、命令をきちんと伝えたのにもかかわらず作戦がうまくいかないのは、将軍が無能な証です」
言い終わると、孫子は刀を振り上げ、王がやめるように懇願したにも関わらず、寵姫二人の首をはねてしまいます。
そして、「右」と「左」のそれぞれの組の先頭に立つ女官を新たに任命し、訓練をやり直しました。さすがに、今度は女官は遊びもせず号令に従います。
その素晴らしく整った隊形を見て、孫子の智恵を理解した呉王は、寵姫二人の首を刎ねた孫子をあたたかく迎え入れます。
実話なのかどうか疑わしいところもありますが、孫子の思想を端的に現す逸話です。孫子の兵法では、できるだけ味方の犠牲を出さないことを重視しますが、 それは勝利するための兵力を温存するためであって、争いごとはやめようというような、いわゆる「平和主義」とは根本的に違います。
争いは不可避だから、戦いの準備は常に行う。そのためには、無駄なもめごとで貴重な兵力を失ってはならないということです。
ですから、勝利する為であれば、味方(寵姫=将軍)の首をいとも簡単に刎ねるという恐ろしい側面も持っているのです。
さて、孫子の兵法で将軍として登場するのが、ビジネスの世界でいえば経営者です。そして、王として登場するのがオーナー=株主です。
現実の世界では、まるで経営者が会社を支配しているような顔をしている(もちろん経営者=大株主の場合はその通りですが)ことがよくあります。しかし会社の所有者は、120%間違いなく株主です。
例えば、マンションの場合であれば、<株主=マンションオーナー><経営者=管理組合>というイメージです。管理組合は、マンションオーナーから委託を 受けてマンションの管理等の業務を行いますが、マンションを所有しているのは管理組合では無く、あくまで各々のオーナーです。
管理組合が管理費を適正に使ってマンション管理をきちんと行うように命令して従わせるのが、各マンションオーナーの役割です。同じように、企業の経営者が株主の資産を有効に活用して会社を発展させるよう監視するのが株主の役目です。
ですから、ストックオプションを採用したり、株主のものである会社の財産を経営者自身の野望のために無駄遣いする経営者の首は即刻切るべきです。
例えば、ストックオプションは2重の意味で株主に対する背信行為です
1)株主が株式を購入する場合には、どのような場合でも(現金という)対価を支払う。
また、株主は株式を購入した後、株価が下がれば痛みを感じるが、ストックオプションを付与された役員や従業員は痛くもかゆくもない。
ただその会社に在籍をしているというだけで、(個人として)何の明確な業績も上げていないのに、例えば市場全体の株価が上昇したというだけで、オプションで利益を上げるのはお手盛り以外の何物でもない。
企業の業績と収入が連動すれば、役員や従業員のやる気が高まるというのであれば、給与の一部を株式で現物支給すれば良いだけである。そうすれば、株価が下がったときも株主と同じ痛みを感じ、一生懸命働くであろう。
2)ストックオプションの会計上の費用計上が不明確である。オプションは実行されるまで、実際のコストがわからないし、基本的に準備金を積まない。
そのため、株主から見て、実際に存在するのにバランスシートには出てこない「隠された債務」である。
ストックオプションの問題点については、私の著書、
日本株で成功する バフェット流投資術
企業情報を読み解け!、バフェット流<日本株>必勝法
「バフットからの手紙」
をご参照ください。
バフエットは、その年次報告書(バフエットからの手紙)の中で、過去数十年にわたって、何回も激しい調子でストックオプション制度を非難しています。(例えば「ストックオプションは、株主のポケットの財布に手を付ける行為だ」とも言っています)
読者がその企業の大株主であれば、背信行為を行う経営者(将軍)の首を切ることはさほど難しくはありません。それでは、1%にも満たない株式を保有して いる投資家はどうしたらよいのでしょうか?その場合は、その企業の株式を売却して、株主に誠実な経営者(将軍)が経営している企業を見つければ良いので す。
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*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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