有料メルマガ・石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」の過去配信ライブラリ「銘柄研究」「コラム」のうち、コラムの一部を掲載いたします。
自立した投資家、石川臨太郎のコンテンツをお楽しみ下さい。
なお、内容は執筆当時の背景に基づいており、現在の状況と必ずしも一致しないことを予めご了承下さい。
=コラム「ハイパー・インフレリスクに備え、資源企業への投資作戦検討」=
(有料メルマガ第338回・2013/4/16配信号)
※2013年4月現在の内容です。留意してお読み下さい。
【前略】
先週のコラムでは、大型株に資金が入ってくると予想して、大型株である日立や旭硝子を購入したことをコラムで書きました。
実力派のアナリストであった吉田滋氏の意見をまるのみして投資した日立の上昇率が高かったのですが、インカムゲインが欲しい私は、少しの利益で利益確定して、6月に配当の出る高配当利回りの旭硝子に資金を入れました。
配当利回りが高いこともありますが、ジョージ・ソロスが指摘していた黒田日銀の異次元の金融緩和が、もしかしたら引き起してしまうかもしれない円安の動きを止められなくなるリスクも想定し、行き過ぎた円安がもたらすインフレに対抗するには、森林などの資源を日本国内や世界中で持っている住友林業や、王子ホールディングスの株を分散で保有しておくことが、ハイパー・インフレとはいえないまでも、かなり厳しいインフレが襲ってきたときに資産を守る良い防衛策になるのではないかと考えつきました。
その点では、旭硝子は資源を持っていないと考えていましたが、調べてみると連結子会社の伊勢化学工業が、日本が世界に輸出している希少資源のヨウ素(ヨード)を世界シェア10.5%という大きさで押さえていることに気がつきました。
インフレ対策にもなり、しかも高配当利回りの旭硝子のほうが株価の上昇スピードが日立より遅くても、買い増ししやすいというメリットがあると、自分が納得できる理由を作って(=方便として、でっち上げて=日立の株価がもっと上がってから旭硝子にシフトしたほうが経済的合理性があるのに、それを無視して、とにかくいま旭硝子を買い増したいから作った理由なので「でっち上げた」という言葉が適切だと思います)資金を移しました。
ここからはポジショントークになりますが、ヨウ素(ヨード)について調べたことを書こうと思います。
昔からの購読者には懐かしい、過去の研究銘柄である関東天然瓦斯開発※のレポート(2010/10/5配信)を書くために調べたことが役に立ちました。
※現K&Oエナジーグループ(1663)
関東天然瓦斯開発は、親会社が東京電力であったこともあり、原発事故の保証金を作るために関東天然瓦斯開発が安く売却されると恐れた投資家が逃げたので、膨大な資源を持ちながら関東天然瓦斯開発の株価は下げましたが、いまでは大きく株価を回復しています。
実際に東京電力は関東天然瓦斯開発の株を売却しましたが、それほど安い売却価格ではありませんでした。市場でついていた株価より高い値段で売却しました。
関東天然瓦斯開発は、自社で生産する天然ガスだけでは足りなくて、自社生産分の数倍の天然ガスを海外から輸入しています。従って、海外から輸入するガスの価格が上がると、日本国内で自社生産した天然ガスの価格も輸入ガスの価格につられて高くなります。子会社経由で日本の消費者に販売するガス価格が、輸入価格によって決まってくるからです。生産コストは同じですから、高く売れれば利益が上がります。
ヨウ素の輸出にも円安が寄与するので、公益株とはいえ利益が増加することが好感されて、関東天然瓦斯開発の株価が上げていることを考えると、さらに円安が進んでいく状況ならば、関東天然瓦斯開発も再度、研究銘柄として取り上げても良いと考えています。
ただ、関東天然瓦斯開発は公益株なので、公益株としての役所からの規制が少ない伊勢化学工業の株価の上昇に劣後する傾向があります。配当額も伊勢化学工業のほうが大きいです。
伊勢化学工業は、ヨードとともに産出する天然ガスは、親会社の旭硝子や日本国内のガス会社に販売するので、公益株ではありません。しかし、円安が進むと、天然ガスの販売価格が輸入した天然ガスの価格に鞘よせされて高くなることは、関東天然瓦斯開発と同じです。ヨウ素(ヨード)の輸出も好影響を受けて業績が上がっているので、伊勢化学工業も研究銘柄の対象にしても良い、希少資源を持つ企業の1社だと考えています。
PERなどは親会社の旭硝子よりずっと低いです。ただ、配当利回りは旭硝子のほうが高いのですが、もし大型株から小型株への資金の還流が起こったときには伊勢化学工業も魅力的な投資対象だと考えています。
関東天然瓦斯開発のサイトには以下のことが書かれています。そして埋蔵量が年間採取量の600年分あることも書かれています。
(以下引用開始)
『当社が開発している南関東ガス田は、千葉県を中心に、茨城・埼玉・東京・神奈川県下にまたがる広大な水溶性天然ガス田です。可燃性天然ガスは、その存在している状態により、構造性天然ガス、炭田ガス、水溶性天然ガス等に分類されます。水溶性天然ガスは、微生物起源のメタンガスが、地下の地層水に溶解しているものです。
千葉県で天然ガスが産出するのは、上総層群(かずさそうぐん)という地層です。これは第四紀更新世(こうしんせい)という地質時代(今から約300~40万年前)に海底に堆積した、主に砂岩と泥岩からなる地層です。
この砂岩と泥岩の互層中にある地層水にガスが溶けた状態で存在し、ガス層を形成しています。この地層水は、「かん水」と呼ばれ、昔の海水が地層の中に閉じ込められたものです。その成分は現在の海水とよく似ていますが、現在の海水と比べて約2,000倍のヨード分を含む等の特徴があります。』
『南関東ガス田は可採埋蔵量が3,685億立方メートルにも達する、わが国最大の水溶性天然ガス田です。その中でも茂原地区は、(1)埋蔵量が豊富で、(2)鉱床の深度が浅く、(3)ガス水比(産出水量に対するガス量の容積比)が高い等、天然ガス開発に有利な条件を備えています。
当社鉱区における天然ガス可採埋蔵量は、約1,000億立方メートル。現在の年間生産量で計算すると約600年分にもなります。
(算定方法はJIS(M-1006-1992)の容積法による。)』
(以上で引用終了)
伊勢化学工業のホームページには、埋蔵量の情報が開示されていないので、同社のIRに、天然ガスなど伊勢化学工業が保有するガス田の埋蔵量について確認しました。
IRの回答は、
『関東天然瓦斯開発のホームページに開示されている情報は、南関東ガス田(千葉県を中心に、茨城・埼玉・東京・神奈川県下にまたがる広大な水溶性天然ガス田)についてのものなので、関東天然瓦斯開発の鉱区に600年分の天
然ガスがあるなら、鉱区は違うけれど伊勢化学工業の南関東ガス田の鉱区にも600年分の埋蔵量がある』
というものでした。
伊勢化学工業は、南関東ガス田ばかりではなく宮崎県や米国でも、ヨウ素と天然ガスを採取しているので、保有する埋蔵量は伊勢化学工業のほうが大きいかもしれません。
ヨウ素は元素であるため、化学合成して作ることができず、工業的にはヨウ素含有資源から抽出して取り出す以外に方法がない貴重な資源です。
伊勢化学工業のホームページには以下のことが書かれています。
(以下引用開始)
『地球上でヨウ素が生産されているのは日本やチリなど限られた数カ国。日本のヨウ素生産量は世界の約35%を占め、その中でも伊勢化学工業はトップクラスの供給を行っています。地下資源の乏しい日本にとって、ヨウ素は世界に誇るべき貴重な資源。その用途は医薬品からエレクトロニクスの分野にまで及び、ヨウ素なくして私たちの生活は成り立ちません。』
(以上で引用終了)
資源が乏しいといわれている日本ですが、ヨウ素について日本は資源大国なのです。さらに日本の生産量の約80%は、千葉県において生産されています。
ヨウ素(ヨード)は、天然ガス採取の付随水であるかん水に含まれているハロゲン属の元素で、私たちの生存、成長に不可欠な生理作用を持っており、人体の必須元素です。日本は海に囲まれた島国であるため、海藻や魚介類から必要量のヨードを摂取できますが、内陸の国等、海産物の摂取の少ないところでは、ヨードの不足による発育不全等、ヨード欠乏症に苦しんでいる人々もいます。
伊勢化学工業は主力事業がヨウ素の製造です。そしてその大部分は海外へ輸出しています。
少し古いですが、平成13年3月に国際協力事業団から発表されたODA関連の資料があります。この資料の24ページに日本の生産企業が出てきます。
2000年時点での日本におけるヨードメーカーは次の8社である。右に生産量を示す。
伊勢化学(株) 2,050 トン/年
合同資源産業(株) 1,360
関東天然瓦斯開発(株) 920
日本天然ガス(株) 700
(株)東邦アーステック 580
日宝化学(株) 520
帝国石油(株) 460
ジャパンエナジー石油開発(株)270
合計 6,860 トン/年
つまり、日本の持つ世界の35%のヨウ素(ヨード)のシェアの30%、すなわち世界の10.5%のシェアのヨウ素を、旭硝子は子会社の伊勢化学工業を通じて保有している企業ということになります。
2012年12月期の伊勢化学工業のヨウ素と天然ガスの生産金額は83億円、関東天然瓦斯開発の自社生産するヨウ素と天然ガスの合計金額は114億円です。
生産量は、若干関東天然瓦斯開発のほうが大きいですが、それほど差がありません。繰り返しになりますが、伊勢化学工業は天然ガスについては親会社の旭硝子や民間のガス会社に売っており公益株ではないので、役所からの規制は少ないです。
またヨウ素(ヨード)については、今後ますます使用価値が高まる新技術の重要な材料になる資源です。
ちょうと関東天然瓦斯開発について調べているとき、立命館大学がヨウ素を触媒に使った研究成果を発表して、ノーベル賞を取ったクロスカップリング技術なのでかなり話題になしました。2010年ごろのニュースです。
レアメタル(パラジウム、ニッケルなど)を用いないクロスカップリング反応による導電性ポリマーの開発をしたというもので、この研究には、ヨウ素反応剤を用いたグリーンケミストリーなクロスカップリグ反応を利用している
とのことでした。立命館大学の発表は立命館大学のサイトにありました。
いずれにしてもヨードは貴重な資源なので、これを伊勢化学工業を通じて押さえている旭硝子は投資していて安心できると考えました。
【後略】
経済的独立ワクワク!サポーター 石川臨太郎
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デンヨー(6517)の詳細レポートと、コラムの構成です。
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