そろそろ最も株主総会の多い時期になりました。
3月中旬からは外人投資家による日本株の見直し買いが続いていたようですが、アジア系投資家を含めて、5月に入ってからはより多くの資金が値動きの良い銘柄に流れ込んでいるようです。
AIによる売買が急増しているためか、中には不可解な乱高下を繰り返す銘柄もあります。
例えば、個人投資家に人気のチェンジ(3962)やオイシックス・ラ・大地(3182)のように、良い決算を発表したと思ったら間も無く大量の売りを浴び急落した銘柄もあります。大半はアルゴリズム(自動)売買なのでしょう。
指数(主に日経平均株価)の上昇と共に、以前は目立たなかった銘柄でも株価の乱高下が増えており、空売りも増えている様子ゆえに気を付けたいところです。
さて、近年は様々な投資家から株主提案を受ける企業が増えていますが、ここで考えたいのはガバナンスコードです。本当に当該企業の株主や他のステークホルダーの利益を意識した役員陣、及び社外役員を揃えているかなども見ていかねばなりません。
中には4~5社以上の役員を兼務している方もみられますが、自身の経験からも、本業を持ちながら、そんなに沢山の経営を見ることが可能なのか?とも感じています。
株主総会を控える中、形ばかりの数合わせ、そして見た目ばかりの(お飾り)役員登用になっていないかなどを検証したいところです。
あの名門東芝でさえ、立派な肩書の大御所社外役員をずらりと揃えていたのに、無茶な投資や経営を続けた挙句に粉飾までして会社解体の憂き目に遭いました。彼ら三顧の礼で迎えられた大御所達は何をしていたのでしょう?大変な思いをした何万人もの従業員や取引先のことを真剣に考えて経営を監視していたのか?
余談ですが、以前にベネッセや日本マクドナルドのトップに就いた(巷で言われた)プロ経営者がいらっしゃいました。確かに一時的な業績回復には繋がりましたが、その殆どが無茶なリストラによる一時的な回復に過ぎなかったことが後々判明しています。
当時は飲食業界の方達とのお付き合いが増えていた時期で、日本マクドナルドのフランチャイジー経営者や幹部職員の方達から「あんな無茶なリストラをされたらマクドナルドは潰れてしまう」と言った話を何度も耳にしました。
案の定、小売業界の本質を理解しないままに強引なリストラや大幅値下げを断行した結果として、翌年度から売上げも利益も大幅減となりました。マクドナルドの大リストラの件は以前にもメルマガで取り上げましたが、想定通りの迷走となりました。
余談の余談ですが、その後そのプロ経営者は家庭内DVで話題になりメディアから姿を消しました。何とも後味の悪い結末でしたね。
経営トップ(役員陣)に誰を据えるかは企業の存続や成長において最重要の仕事になります。釈迦に説法ですが、読者の皆様も日々感じていることと思います。
さて、一流の経営経験者として東芝の経営を監視していたはずの大御所経営者や学者さん達は今の東芝をどのように見ているのか、まだ関わっているのか。最近ではお名前を見ることも減りました・・・(苦笑)。
日本では形式ばかりが優先され、実践的な(実務が分かる)経営陣を選任していない会社が多いとみています。有名企業になればなるほど、その社外役員には上級官僚OB、著名な教授、大手企業役員経験者などが名を連ねます。
年12回の取締役会に出席する前提でザックリ600万円~1,000万円台の年俸を得ているようですが、きちんとワークしているのでしょうか。
もちろん良い仕事をして三方良しとなりステークホルダーに貢献してくれるなら高い報酬でも構いませんが、開示資料を幾ら見ても仕事の成果や報酬が分かり辛い会社が多数あります。しつこいですが、皆さまご想像の通り、役所からの天下りや関連会社OBの多い企業ほど外部からは窺い辛い記述になっています。
投資判断の際には社内政治によるトップの世襲や、名ばかり(お友達)経営陣になっていないかなども検証することがとても重要です。
特にバリュー銘柄(いわゆる老舗企業)については、HPや決算短信はもちろん、最低でも2期分の有価証券報告書くらいは研究材料として使ってください。
会社の持つ資産や役員の状況などを見ることが出来ます。
老舗企業の中には膨大な不動産の含みなどを持っていることで資産額が膨らみPBRやROEを低くする要因になっている企業もあります。
そんな企業には株主からみて非効率な資産も多数ありますし、中には、それら重要な資産における開示が乏しく「この貴重な財産は、そんじょそこいらの株主には絶~~~対に渡さないからね!」ってオーラを感じることもあります(笑)。
支配株主の気持ちは分かりますが、これらは全株主の資産のはずです(苦笑)。
ここ数年の動きではアクティビストからの圧力によるものか?(嫌々の?)数%程度の自己株買いが増えています。本来、株主還元の主力は配当と考えていますため、一過性の株主還元で済む自己株買いには懐疑的です。得意の横並び意識によるものか、アクティビストに狙われないための予防策として(取りあえずの)株主還元策を打ち出した会社も多いのではないかと見ています。
であれば、足元で増えている自己株買いも総会が済んでしまえば(喉元を過ぎれば)旬を過ぎます。「日本株が見直されている!」と浮かれるのは避けたいところです。
古い企業になれば効率、非効率どちらにしても資産は溜まり易くなります。
PBRやPERなどの表面的な指標だけで割安、または割高などの判断をすることなく、企業の歴史や経営態勢、株主に対する姿勢などにも注目したいところです。
株主総会で役員の選任を否定されるケースも増えてきました。今年の総会を経て日本企業の古い体質が変わってくれることを望みますが、それにはまず、ガバナンスを強化するためにも天下りなどを十分に開示させる市場運営が望まれます。
上場企業は支配株主の経営陣やシロアリOBの私物ではありません。
(街のコンサルタント)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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