5月12日(金)に、京都信金QUESTIONで開催されたイベント
「顧客本位ってなんだ」
に参加してきましたので内容を報告したいと思います。
まず最初に講演いただいたのが、「捨てられる銀行」シリーズで有名な共同通信編集委員の橋本卓典さん。
今回、第2部パネルディスカッションで参加いただいた、北國銀行、京都信金の2つの金融機関がどのように顧客本位な体制を築いてきたかというお話でした。
北国銀行は現在ホールディングス社長の杖村修司さんが、2013年の専務時代から大きな変革を起こしたそうです。
行内での変革の合言葉としては「顧客起点か?」ということを大切にして銀行内で起こるあらゆる事を「銀行目線」ではなく「顧客目線」「顧客起点」で再構築しなおしたようです。
営業のノルマも廃止し、収益主義、成果主義から顧客主義へ大きく変えました。
この変革を支えたのは、銀行システムの変革だったそうです。
銀行のシステムの中でも特にお金のかかる勘定系のシステムを、オープン勘定系パッケージに置き換え、その後も、その勘定系をマイクロソフトのパブリッククラウドに置き換えることで、システムのコストが年間数十億円レベルで削減することに成功したそうです。
このシステム費用の削減を原資にして、上記の収益主義、成果主義から顧客主義に転換していくコスト、収益ダメージを吸収できたという話でした。
つまり、単純に掛け声だけではなく、裏にはしっかりとした収益基盤の改善要因が伴っており、これがなかなか他行では簡単にまねのできない優位性なのでしょう。
京都信金さんは2008年に理事長に就任した増田寿幸さんが、大きな変革の要因だったそうです。
「地域社会に社会紐帯を育むこと」ということをスローガンとして、内部の職員の「絆づくり」、取引先の起業との「絆づくり」を意識してコミュニケーションの量を圧倒的に増大させる活動を進めていきました。
そして、北國銀行同様に営業のノルマを廃止し、お客様の悩みの解消にフォーカスを当てるような取り組み、コミュニケーションを取るようになってきたそうです。
第2部では、上記の北國銀行さん、京都信金さんの担当者も交えてのパネルディスカッション。
北國銀行さんも、京都信金さんも、担当者が顧客目線であるのは、今では文化的にも当たり前になってしまったが当初は変革についていくのが大変だったという話が印象的でした。
それでも、やはりトップの頭取、理事長が率先垂範して、行動で正しいことを示し続けてくれたので、両社とも、変革を実行することができたという話で、やはりトップの姿勢というものが改めて大切なのだと感じました。
他独立系のアドバイザーの意見としては、金融機関というある程度規模のある組織であるからこそ、こうした顧客本位の姿勢が作れれば、それは個人事業主に近い、小規模アドバイザーの仕事よりも、量的にもコスト的にも優位性のある分野が作れるという意見が出ました。
これは、独立系のアドバイザーはやはり、そのビジネスのコストをアドバイスそのもので売上を立て、回収しなくては成立しませんが、金融機関であれば、アドバイス単体で採算性が厳しくても、他のサービスや付随するものでトータルとして顧客から収益を上げるという事が可能だという話も上がりました。
今回のイベントやディスカッションを通じて小屋が理解したところを整理すると、
・規模のある金融機関でも収益至上主義ではなく、顧客本位、顧客目線で経営することは可能である
・金融機関のカルチャーや組織を変革するには、本気で取り組むトップがいて、それで10年ほど時間がかかる
・しっかりと顧客本位の目線を持てる金融機関に変わることができれば、個人や小規模なアドバイス事務所よりも包括的なサービス提供が可能であるし、価格面での優位性も持てる可能性がある
おそらく、こうした北國銀行、京都信金をモデルとして、今後も変革を目指す金融機関は増えてくると思います。
しかし、トップが本気で取り組み、10年かけて変革するところは少ないでしょうから、小屋の立場としてはこの10年間で如何に先行者のメリットを押し出してビジネス展開できるかが勝負になりそうな気がします。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
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