戦後の日本人はテレビで育ってきたと言って過言ではありません。
白黒テレビが出てカラーテレビに移行し日本の高度経済成長とともに発展してきたのがテレビメディアです。
私たちの情報源や娯楽、一家団欒のひと時に欠かせなかったテレビが日本人の生活の一端を担ってきたと言っても良いかと思います。
そうしたテレビに欠かせないのがハードのテレビ受像機であり、ソフトのコンテンツ番組です。
テレビ受像機ではパナソニック、日立、東芝、シャープ、ソニーなどの家電産業の隆盛を牽引しましたし、それを販売する家電販売店も大型化、多店舗化して発展してきました。また番組を制作配信する視聴者から料金を徴収するNHKやスポンサーから広告収入を得ながら運営する民間の地上波テレビ5局も業績拡大を図ってきたということになります。
日本経済の好循環を支えてきたこうしたビジネスの主役が既にテレビ受像機が安価な液晶テレビの登場や海外メーカーの台頭から衰退したことはご存知の通り。
一方、番組コンテンツを提供するテレビ局はあの手この手で視聴者に訴求する番組配信で消費者をつなぎ止めてきたと言えます。
このテレビメディアは地上波から衛星放送に広がり、更に最近はインターネットメディアに移行しつつあるという社会の潮流が生まれ、衰退産業の仲間入りなどとも言われたりしますが、その結果、株価は不人気状態となり、保有する資産内容に比べて驚くほどの時価総額に落ち込んできました。
ネットメディアでは毎日のように地上波メディアはオワコンだと叫ばれ、何か少しでもことが起きると騒がれる状態です。視聴料で成り立つNHKへの批判も高まり、テレビメディアは劣勢に立たされている状況です。
そうしたテレビメディアを運営する5局(日本テレビHD、TBSHD、フジメディアHD、テレビ朝日HD、テレビ東京HD)に宇宙関連ビジネスを展開するスカパーJSAHDを加えた6社について皆さんはどのように評価されているでしょうか。
筆者は昨年の11月頃から株価低迷中の地上波テレビメディア株に注目開始しましたが、今年は復活の年となるのではないかと期待しているところです。
確かにメディアがインターネットに移行する中なので、地上波テレビ運営会社が一般市民が参加しやすいYOUTUBEなどのインターネットの新興勢力に押されてきたとも言えますが、その劣勢を挽回しようと各社懸命に努力をしていることも事実です。
テレビ離れが起きて地上波テレビメディアへの評価(視聴率)が低下してきた一方で豊富なコンテンツや新たな視聴者受けするドラマ、バラエティ、ニュース、スポーツなどの制作・配信を担う存在感は依然として残っているのかも知れません。
また、テレビ局運営企業は蓄積した金融資産で自社の株主への配当金を賄えるだけのパワーを持つに至っていることも注目すべき点です。この点は改めて皆さんも有価証券報告書でご確認願いたいのですが、例えばTBSHD(9401)は半導体製造装置の世界的メーカーである東京エレクトロン(8035)株の4番目の株主となっており、保有する580万株(3.6%)の時価評価は26日現在で2640億円ほどになっていて、同社の時価総額と同じ水準です。しかもその配当金だけで年間86億円となっており、同社が支払う年間の配当金69億円を上回っているのです。
東京エレクトロン株は足下の業績停滞で現在は6万9170円の高値から4万5000円前後となり3割余り下落していますが、また来期以降の業績が回復するとなれば人気復活となり同社の有価証券の評価額の増加につながります。
つまりテレビメディアの運営企業とは表向きの話で、同社は東京エレクトロンという時価総額が7.2兆円にも達する世界的な半導体製造メーカーへの投資会社としても位置付けられることになります。
また、これだけに留まらず同社には赤坂という東京の一等地で膨大な土地建物を所有するデベロッパーとしての顔もあり、新年に社長が発した「赤坂エンタテインメント・シティ」構想で夢の都市づくりに乗り出しています。それは未来に向けた同社の力強いメッセージであり、投資家に期待を抱かせるものでもあります。
同社の時価総額は現在約2600億円程度ですが、保有する現預金は821億円、投資有価証券は5167億円で合計すると約6000億円にもなります。
これに保有する土地が1588億円、建物が2151億円ですから合計で3739億円。これらの資産合計約1兆円に対しての時価総額が2589億円ですから極めて割安な投資対象と言えます。
赤字経営なら仕方がないですが、しっかりと毎期黒字を計上している年間40円配当(今期予想配当性向は33%)を行う企業としてはとても不思議な評価と言えます。
逆に言うと評価の仕方を変えると株価は4倍以上になってしまう可能性がある訳ですが現実にはそうなっていません。
こうした話は同社に限った訳ではなく日テレやフジメディア、テレビ朝日などに共通した話です。
在京テレビメディア5局についてほぼ共通して言えることは新聞社が大株主として存在し、放送法や電波法で海外投資家が入ってこない位置づけになっていて、東京の一等地でのビジネス展開を行う事業体として内部資産蓄積が進んでいること。
社員はほとんど職人的な存在で給与水準が高いこと。
電通や博報堂、リクルートなど連携するビジネスパートナーとの政策投資など持合い株が極めて豊富で双方で持ちつ持たれつの関係にあることです。
産業構造の変化とともに有力なスポンサーも多少は変化していくものの、いきなり消えてなくなることは今のところ考えにくい。
有限な電波メディアが活用できる立場に対しての評価は低下しているが海外事業や他のメディアへのコンテンツ配信ビジネスなど事業の拡大余地はまだ残されているため低迷中の株価には大いに見直しのチャンスがありそうだ。
(炎)
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