上場企業の決算が3か月ごとに開示され始めてから久しい。
 以前は中間期と本決算の2回の開示で良かったのが、2009年3月期以降は金融商品取引法で公表が義務化され、以来、企業は面倒でも公表しないとならなくなった。これによって業績発表の頻度は高まり、投資家は業績の動向を四半期ごとに知ることができるようになった。


 しかしながらこのことで株価の短期的な過剰な変動が見られるようになったのではないだろうか。

 ケースバイケースながら企業は四半期の積み重ねで1年間の決算を迎えることもあるが、一方で四半期ごとの特殊な事情で年間の決算が見通しと乖離する場合においては誤解を生じやすくなったとも言える。

 四半期の業績については進捗率で語られるようになってきたが、売上と利益(営業利益、経常利益)で通期の見通しに対して各四半期がどの程度進捗したのかを投資家が関心を持って見守る状況から企業もそのデータを開示し、進捗率が高いとか低いとかいうことで通期決算の達成確率を示すことで株価にもプラスに影響したり反対のマイナスに影響することとなり、株価の振幅が四半期開示が義務付けられる前よりも変動しやすくなったと言える。

 進捗率の場合は1Qよりも2Q、3Qの方がより信憑性は高くなる点は明らかでこの進捗率が極端に低いとか通期業績が黒字でも1Qが赤字になると一気に通期業績への不安感が台頭し投資家は下方修正する可能性を嫌気して持ち株を売却するというようなことになる。

 先日見られたAI(あい)メカテック(6227)の場合がこうしたことを示している。
 同社の1Q決算は売上高13億円に対して経常赤字5.7億円と大幅な赤字。通期の業績見通しは売上高181億円、経常利益12.9億円であるから、まずは売上の進捗率が低かった。利益面でも赤字スタートとなれば不安感が出てくる。投資家はこれを見て1500円前後まで上昇していた株を1200円台の下の方までどっと売ってきた。
 筆者はこうした状況下で、ある雑誌にテンバガー銘柄として記者と共同取材の上、掲載した。その結果として先週は1599円という年初来高値を更新。出来高も43万株と膨らみ人気株として浮上してきた。
 同社の四半期決算短信を冷静に読み返すと受注残が増加していて売上が2Q以降に計上されていくとの見方ができる。しかも今後の成長余力は高いと判断される。
 IPOしたばかりの企業にとってはビジネスの内容が十分に投資家に伝わっていないことが多い。今後もこうした四半期決算に振り回される短期投資家が出てきてもおかしくない。


 そうした中で、金融庁は四半期決算短信の開示を義務化しないで任意とすることを検討し始めたというニュースが飛び込んできた。これが実現するかどうかはまだ未定だが、業種や事業の性質などを踏まえると投資家に誤解を与えるような開示は企業のビジネスにとっても適切ではない。毎四半期ごとの積み上げで通期業績が成り立っているとしても四半期ごとの決算で誤解を生じるならばそれは企業の選択に任せるべきだし、投資家も四半期業績に過剰反応するべきではない。

 また四半期業績の評価の仕方によっても特徴的な株価変動が見られるケースもあり、通期業績が好調に推移する場合でも、四半期業績がダウントレンドになっただけでも売り圧力にさらされる事例もあったりする。

 筆者がよく引き合いに出すのはオークネット(3964)であるが、同社の場合は1Q、2Qまでの業績が3Qにダウンし、それを見た投資家が一斉に売ってくるという株価変動を見せてきた。
 昨年は特にひどく3Q決算発表前についた2540円の高値から発表後に1400円台まで売られたという変動が見られた。
 その後また今年の8月には2400円台まで上昇したが直近になって3Q発表を見て1765円まで売られてしまった。昨年と同様のパターンを想定した投資家の売りなのか、そのあたりは不明だが、四半期開示の特徴を捉えての株価変動を演出する動きとも考えられ興味深い。

 もし四半期ではなく中間期と通期の業績だけであれば、こうした株価変動を気にする必要はないだろう。今回の四半期業績の任意開示に向けた動きはこうした特徴的な四半期開示によるややいびつな株価変動をなくすことになるのかも知れません。

 投資家の皆様は今後も四半期業績だけに振り回されずに極力長期スタンスで企業の未来を予測しながら株式運用に当たって頂くことを期待しております。


(炎)


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