産業新潮
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4月号連載記事
■その11 自由主義(民主主義)は「知識経済社会」の基礎である
●自由主義(民主主義)は世界の少数派
日本をはじめとする先進国に住んでいると「自由主義」は水や空気のようにありふれたもののように感じる。しかし、灼熱の砂漠で一人取り残されたときには水のありがたさを痛感するし、水中深く潜った時に酸素ボンベの残量を気にしない人はいないだろう。
同じように、民主主義も、香港が共産主義中国の脅威にさられているようなときに、その恩恵を強く感じる。
しかしながら、現在でも自由主義の恩恵を受けているのは欧米や日本などの先進国を中心とする少数派にとどまっている。世界一の人口を抱える共産主義中国は独裁政治を行っており、その他の国々の多くも共産主義でなければ、軍事独裁かイスラム法による独裁政治によって支配されている。
●自由主義は知識社会において生産性が高い
もちろん、私は国家とは「国民の国民による国民のための政治」を追求すべき存在であると考え、自由主義(民主主義)を全面的に支持するが、自由主義は道徳的、倫理的にファシズム、共産主義、絶対王政よりも望ましいだけでは無い。現代社会では、自由主義を維持できなければ経済発展ができないのである。
1861年~1865年の間の内戦である米国の南北戦争は社会を分断し、今でも傷跡を残している。2017年に起こった南軍の英雄であるロバート・E・リー将軍の像の撤去問題は、反対派・賛成派の間の公民権運動以来ともいわれる大規模な衝突を引き起こし、死者まで出た。南北戦争が、「奴隷解放」のための戦いであると位置づけられているからだ。
もちろん、それが主要な目的であるのは間違いないが、その時期にインディアンたちが虐殺され、黒人に対する人種差別は1964年の公民権法の成立まで「事実上」行われてきたことは無視できない。
そして、「奴隷解放」は決して道徳的な理由だけで行われたのではないのだ。
経済的観点から言えば、南部の農園主にとって奴隷は必要欠くべかざる労働力であった。農園の作業であれば、監督官が鞭を持って監視し、無理やり働かせるという非効率(奴隷のモチベーションはほぼゼロ)な手法でもビジネスとして成り立った。
ところが、工業化された北部では奴隷の使い道がほとんど無かった。確かに「女工哀史」など言われる過酷な低賃金労働は存在したが、彼女たちは奴隷では無かった。少ないながらも、給料をもらい、その給料で私有財産を保有することができた。
この点は非常に重要で、ジョン・ロックも自由主義の基礎として「私有財産の厳格な保護」をあげている。この私有財産を馬に与えるニンジンのように解放奴隷(労働者)に与えたほうが、奴隷を監督官が鞭で打つよりもはるかに効率的なのだ。
●現代の奴隷制度である共産主義は非効率
それに対して、奴隷や中世の農奴には私有財産は与えられなかった。家はもちろんのこと、収穫物、すきや鍬に至るまで主人(農園主)のものであった。
つまり、私有財産を否定する共産主義は明らかに、国民を奴隷(農奴)化する絶対王政への回帰であり、1989年に破たん(ベルリンの壁崩壊)したのは当然だ。道徳的問題もさることながら、共産主義という奴隷制度は、工業化社会においてはあまりにも非効率なのだ。
しかしながら、中国をはじめとする多くの共産主義諸国は、現代の奴隷制度の枠組みを残しながらも、一部自由主義の要素を取り入れて生き伸びてきた。先進国の先端技術を取り入れ(盗んで)、安価な労働力で大量生産するという手法であれば、共産主義独裁の枠組みの中で少しアレンジすれば実現可能であったからである。
<続く>
続きは「産業新潮」
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4月号をご参照ください。
(大原 浩)
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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