皆様こんにちは、投資家Sと申します。
2021年1月から億の近道火曜版に、「投資家Sの今週の注目銘柄」を掲載しております。
本連載は、創業(1964年)半世紀を超える投資日報社が、毎週月曜日に発行を行っております、”週刊投資日報 金融版”に掲載しております。
今回は、2021年1月中旬までに掲載を行った、2銘柄についてご紹介させて頂きます。
■アイドママーケティングコミニケーション【9466】
流通小売業のマーケティング支援を行うアイドママーケティングコミニケーション(アイドマMC)【9466】は、2016年にマザーズ市場に上場、2017年3月に東証1部に鞍替え上場。
より具体的な業態は、スーパーの販促支援となる。
コロナ禍での流通小売り業は業績好調で、食品スーパーを始めとして好決算を連発しているが、同社の事業は販促がメインとなる為、コロナ禍では問題が出て来る。
スーパーは、密を避けるために積極的な販促は行っておらず、飲食店の休業や営業時間短縮で放っておいても来客があるため、チラシ作成や積極的な販促が必要無い状態。同社の業績にも大きな影響を受けていた。
実際、今期の業績予想は、10月末に行った第2四半期決算発表時点でもまだ未定となっており、業績への影響が見通しづらい状況となっている。
ここまでの文章を読む限りでは、同社株の買い材料は全く無いという事になるが、それでは取り上げる意味が無い。
同社は2018年、WEB開発会社のニューフォリアという会社を傘下に収めているが、この会社は、面白いサービスを開発しており、2020年12月に発表している。
ラクリという誰でも簡単にアプリを作成して運用出来るサービスを開始しており、これは年末からの株式市場での一つのテーマとなっている、“ノーコード”と呼ばれるプログラミング知識の無い方でもアプリが作れるサービスとなっている。
昨年末に、ノーコードアプリの開発を行う【4168】ヤプリという会社がマザーズ市場に上場しており、1月上旬時点での同社の時価総額は、680億円となっている。
ヤプリは、年率30%超えるペースで成長しているが、売上高は24億円、経常利益は6.5億円の赤字予想となっており、現時点で利益を生み出す事は出来ていない。
一方で、今回紹介するアイドマは、既存事業で一定程度の売上・利益規模がある会社であり、さらにヤプリと同じノーコードのアプリ開発・提供が出来る会社を傘下で持っていながら、時価総額はわずか”56億円”となっており、ヤプリの10%にも満たない。
同社の業績のボトムは、2020年4~6月期で底を打ったと思われ、繁忙期となる10~12月期は、経済活動が通常の状態に近づいていた為、スーパーの販促活動も一定程度には行われていたと考えられる。また、同社の売上の40%程度を占めているのは、中部地区を中心に食品スーパーを展開しているバローである為、1月7日に発出された、緊急事態宣言の影響は小さいと考えられる。
来期以降の業績回復、今注目のノーコードアプリ、という二つの材料を持っている同社株に最も足りないのは、投資家に自社の魅力を伝える、マーケティング力なのかもしれない。
(投資日報金融版 2021年1月12日号 掲載)
■ベガコーポレーション【3542】
ネット専売で家具「LOWYA」を展開しているベガコーポレーション【3542】は、2007年に設立、2016年にマザーズ市場に上場。
コロナショック以後の株式市場では、BASE【4477】を中心としたeコマース(電子商取引 Electric Commerce:EC)関連の銘柄が大商いを演じたが、同社株もその一つ。
昨年4月の398円の安値から僅か5カ月間で4,265円まで上昇してテンバガーを達成。コロナ禍におけるEC関連株の人気沸騰には実に驚かされる。
ただ同社の株価は、人気だけで上がった訳ではない。裏付けとなる業績の向上もセットになっている。
2021年3月期の業績予想は売上高が前期比4割増となる190億円。
営業利益が前期比16倍となる19億円。業績の猛烈な向上が見て取れる事から、今後も更なる株価の上昇余地があると見ている。
日本の家具市場におけるサプライヤーで大多数が最初に思いつくのは、「お、ねだん以上 ニトリ」で有名なニトリホールディングス【9843】かも知れない。ただ昨今、マーケティング的に同社の家具は、20代~30代を中心に、“少々面白みに欠ける”、と感じる人々も増えているらしい。
一方LOWYAの家具は、ファッション性の高い個性的な家具が多数。例えば同社が販売するいわゆる「ガーリーインテリア」は、購買者層のハートを掴んでいる。
コロナ禍での生活様式の変化で「おうち時間」が増加。居心地の良い住環境を作りたいが、引っ越しは物理的な移動が伴う。そこで模様替えによる部屋の家具の入れ替え需要が高まっている。
2010年代、ZOZO【3092】が、衣服は「店舗で試着して買う」という常識を覆し超成長株に。そして2020年代、家具は「店舗で物色して買う」という常識が覆される可能性がある。
ベガコーポレーションは、国内向けだけでなく日本の商品を海外からも購入できる「DOKODEMO」という“越境型”ECサイトを運営中。このサイトの流通総額は83%がアジア向け。中でも台湾が61%を占めている。サイト利用者の多くが日本の近隣諸国が中心であるーという点は、極めて重要なポイントだ。
数年前の日本では、“爆買い”が流行語に。良質な日本製品を目当てに来日していたのは中国を中心としたアジア勢であった。一度良い商品を使用すると、もう一度使いたくなるのが人情。そこに、人種や国籍は関係無い。
コロナ禍でヒトの往来が制限されている現在、「DOKODEMO」のような越境型ECサイトには爆買いしたくても出来ない人々のニーズがあり、分野としてはまだ伸びしろがある、
このように国内外でコロナを逆手に取った戦略は、同社を超成長株に押し上げる可能性を秘めている。
同社の創業は7月。社名はこの時期に北半球で輝く夏の大三角を構成する一等星ヴェガ(七夕のおりひめ星)に由来する。福岡は博多区に本拠地を置く同社は、2020年代の株式市場でBASEに次ぐEC関連株の一等星として光輝くかもしれない。
(投資日報金融版 2021年1月18日号 掲載)
(投資家S)
[プロフィール]
職業 投資系出版社 役員
大学卒業後、2004年から証券会社にてFXの仕事に従事。
以後、14年間に渡り、営業・企画・トレーディングの最前線で活躍。
リーマン・ショック・ユーロ危機・Brexit等々の並居る大相場の中、裏方として市場の最前線で指揮を取り、FXの表も裏も知り尽くす。
2018年秋、11年間勤めた証券会社を退社して、暗号資産(仮想通貨)の交換業者との立ち上げメンバーに加わる。
2020年5月に、相場道を究める為に同社を退職。個人投資家として株式投資を行いながら、投資に掛ける時間が限られる兼業投資家の方に有益な情報を届ける為、株式について日夜分析を行っている。
日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
相場に対するモットーは、「利食いたくなったら乗せろ」
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