産業新潮
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1月号連載記事
■その9 人間は金で動くのか?自由・市場・知識
●あなたは金で動く人間か?
「あなたは金で動く人間か?」と問われて「はい、そうです。お金さえもらえれば何でもやりますよ!」と答える読者は多くないだろう。一方、私も含めて「お金を嫌いな人間はめったにいない」のも事実である。
シンプルに言えば「お金は好きだが、お金の奴隷にはなりたくない」というのが、ごく普通の人間の感情では無いだろうか?
だから、「より金銭的に得をすることだけを考える人間=お金の奴隷」=「合理的経済人」なるものを標準モデルとする近代経済学がまったく役に立たないのも当然かもしれない。
行動経済学の実験などからも、人間の経済行動は、単なる金銭的損得だけでは無く、社会的規範や倫理基準に大きく左右されることが分かってきている。
例えば、行動経済学の有名な実験に「最後通牒ゲーム」がある。
これは、AとB二人の被験者によって行われるゲームだ。Aに1万円を渡し、Aはその1万円をどのように分けるかを決める権利がある。例えば50%ずつ仲良く分けることもある。また、強欲丸出しで1万円全部を自分のものにしてBには1円も渡さなかったり、逆に神様のように寛大になって自分は1円ももらわずに1万円すべてをBに渡してもかまわない。
ただし、BはAの提案を受け入れるかどうか決める権利がある。もし、BがAの提案を気に入らなければ、拒否してもかまわないが、その場合はゲームが不成立となりAとBのどちらも1円ももらえない。
近代経済学の標準モデルである「合理的経済人」を基準にすれば、例えばAが9500円で、Bが500円という強欲な提案でもBは受け入れるはずだ。なぜなら、Bが拒否しゲームが不成立になってしまえば、Bは1円ももらえないからたった500円でももらった方が得だからである。
しかし、これは我々の「感情」や「常識」とは一致しない。実験結果も同じで大概の場合このような提案は拒否される。
多くの人が「500円しか渡さないような強欲な奴から500円もらってもうれしくない。それよりも、ゲームを不成立にしてAがもらうはずだった9500円を取り上げて懲らしめてやれ!」と判断するのである。
結果、大概の場合5:5とか7:3などのそれなりに妥当と思われる比率でゲームが成立する。
なお、この実験結果は、先進国の間でもそれなりの差があり、人間の経済行動が「文化」によって大きく左右されることを示唆するが、ある部族では相手に大部分を渡すという極めて興味深い結果が出ている、
なぜかといえば、その部族では「もらった贈り物以上のものを相手に返さなければならない」という社会規範が成立していて、もらっても得をしないからである。日本で言えば「ただほど高いものは無い」というところだろうか?
義路人情・しがらみなどもすべて経済の一部であるのだ。
●1億円ならどうだろうか
この実験は1万円の分配であったが、1億円の分配であったらどうだろうか?
強欲なAが9500万円を独り占めにするのは悔しいが、500万円をみすみす逃すのは躊躇するのではないだろうか?
篤志家に資金を提供していただいて実験してみたいところだが、数十人を対象とするにしても数十億円の資金が必要だ・・。
<続く>
続きは「産業新潮」
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1月号をご参照ください。
(大原 浩)
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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