株式市場には元気な話題性あふれる会社が集まっている。
その一つが孫社長率いるソフトバンクグループ(9984)だったり、柳井社長率いるファーストリテイリング(9983)だったりするのかも知れません。
セミナーでも取り上げておいたのですが、残念ながらセミナーではこれらの上場した年を1995年としてしまいました。実際にはいずれも1994年7月でした。この場をお借りして訂正とお詫びを申し上げます。
これら2社に遅れること2年。1996年2月に上場したのが光通信。
これらの元気あふれる企業群は今やそれぞれに市場での存在感を高めていますが、なぜここまで成長したのかを考えるとなかなか面白いですね。
ユニクロやGUといったSPA型のショップを展開するファーストリテイリングは世界の低コスト国で自社企画衣料品を製造販売することで世界2位の企業になっていますが、その成長の原動力は中国生産だったかと思います。
今や中国自体が消費国ともなっており、同社の成長の陰に中国ありという印象です。
一方、ソフトバンクグループは今や投資会社として世間や市場を騒がせています。上場した当時はコンピュータソフトウェアの卸でしたが、恐らくそうしたビジネスだけでは現在のような成長はなかったでしょう。
その後、孫氏独特の企業買収で業態を変えながらビジネス展開をしてきました。そして現在は投資した企業の価値評価の合計で時価総額が語られまともに実業をしているという印象なのは携帯ビジネスだけですが、これとて親子上場で経営は孫氏の手から離れているということになります。
同社の実体価値の多くは盟友ジャックマーが創業した中国企業、アリババ株の時価総額に支えられています。アリババ株(時価総額65兆円)は米国に上場されている企業でしたが香港にも上場する形になっており、香港上場後も4割以上の株価上昇が見られます。過去必要に応じて少しずつ切り売りされていますが、まだ依然としてアリババの大株主であることには違いありません。
つまりこれら2社は日本国のデフレによる経済的困難の中で日本に代わって経済成長を示した中国の発展の恩恵を受けながらグローバル化の中で目ざとく成長してきたと言えます。
その変化は1995年の上場後の10年程度の時期に急速に訪れた訳です。
そこには恐らく様々なビジネスチャンスがあった筈です。いずれもカリスマ経営者であり、ここまで何兆円もの時価総額企業に導いてきた卓越した経営能力があったとは思われますが孫氏の場合は、世の中の変化を先取りした経営に優れており、まず最初に米国のヤフー(ポータルサイト会社)を手に入れ、携帯電話会社を買収したことが大きかったかと思います。
日経225種平均は過去銘柄入れ替えがなされていますが、2004年にはソフトバンクが新たに採用され翌年の2005年にはファーストリテイリングが採用され今日に至っていることは皆さんもご存知かと思います。
日経平均に採用されたことで上場後10年で日本を代表する企業になったと言っても過言ではないかと思われます。
これらに対して両社の2年後に上場した光通信は国内ビジネスが中心で、ソフトバンクなどの携帯電話やシャープ製オフィス機器などの継続課金型ビジネスで成長を遂げ、毎期安定した収益を確保しており、過去18期連続して減配がなく2012年3月期以降10期連続して増配という輝かしい実績を残しています。
現在は年商が5000億円、税前利益が800億円(うち272億円がキャピタルゲイン、49億円がインカムゲイン)を超える大企業になっており、有価証券投資金額も前期末で2654億円の規模に達しています。
しかしながら、その存在自体は比較的地味な印象があります。それでも同社の時価総額は1兆円の水準となっており、株価も比較的順調な推移を辿っております。
その光通信はソフトバンクグループが10兆円規模のビジョンファンドを設立して世界のAI企業(中にはWeWorkのような不動産企業も含まれる)に投資しまくり、世の中を驚かせたのに対して日本国内の比較的内容の良い180ほどの中小型銘柄に分散投資しています。
【同社の保有株】
1.バークシャーハサウェイ
278億円 ウォーレンバフェット率いる米国企業
2.NTT
139億円 ビジネスつながり
3.レオパレス21
120億円 窮地に陥ったあの会社を買ったのはなぜ?
4.イーレックス
108億円 筆頭株主 電力小売りでビジネス関係
5.レイズネクスト
89億円 旧新興プランテック株
その他 1920億円
光通信及びその関係企業、重田氏及びその持株会社、関連企業が保有する銘柄をチェックしてみるとその多くはバリュー株となっています。
今回はその中から比較的持株比率の高い5銘柄をピックアップしてみたいと思います。
1.東京エネシス(1945)時価738円 時価総額251億円
今期予想経常利益39億円 ブロードピーク 自己株除く2位 287万株(7.7%)
投資評価額21億円
火力・原子力発電所のメンテナンス、建設工事。
東電が24%の筆頭株主。業績安定。27円配当。
前期末保有現預金(有証含む)151.8億円
投資有価証券77.6億円 合計229.4億円 有利子負債5億円
PER9.7倍 PBR0.4倍。配当利回り3.65%
2018年の高値1407円から3月安値616円まで下落。
再生可能エネルギー関係などに成長余力はあるが、火力発電の受注鈍化で業績は2016年をピークにダウントレンド。
1年前のブロードピーク持株216万株が287万株に増加した背景は?
2.神田通信機(1992)時価827円 時価総額20億円
今期予想経常利益1.1億円 株式会社光通信 1位29万株(11.1%)
投資評価額2.4億円 通信関連工事主体。
空調・照明の一括制御事業が高成長。
コロナ禍で今期は情報通信関連工事の進捗遅れ発生見通し。
新四季報は今期の営業赤字を予想。
前期の20円配当から今期は10円配当を予想。
前期末保有現預金13.6億円 投資有価証券9.45億円 合計23億円
有利子負債1.9億円
PER33倍 PBR0.5倍 配当利回り1.2%
年初の高値1395円から3月安値700円まであって一旦6月1日に979円まで戻ったが、その後また795円まで下落。
照明制御、監視カメラ、RPAなど中長期成長分野に期待。
1年前は出てこなかった光通信が筆頭株主となった狙いは?
3.幼児活動研究会(2152)時価995円 時価総額107.5億円
今期予想経常利益未発表 前期実績11.5億円
株式会社光通信 2位 137万株(11.6%) 13.6億円
株式会社ブロードピーク5位 32万株(2.7%) 3.1億円
合計 169万株(14.3%) 16.7億円
前期末保有現預金62.9億円 投資有価証券18.3億円合計81.2億円
前期PER14.7倍 PBR1.6倍 実績配当利回り1.5%
昨年10月高値1158円から3月安値712円まで下落したが、その後は戻り歩調。昨年3月末は110万株あった光通信の保有株が27万株増加。
ブロードピーク保有株が新たに32万株加わった。その狙いは?
4.フリービット(3843)時価807円 時価総額179億円
今期予想経常利益17億円(前期24.8億円)2019.10月現在
株式会社光通信 4位 216万株(9.2%)17.4億円
株式会社ブロードピーク 5位 84万株(3.5%) 6.8億円
合計 300万株(12.7%)24.2億円
通信サービス展開で連携か?
2018.10月に比べブロードピーク保有株が6万株増加。
前4月期末保有現預金157億円 投資有価証券15億円 合計172億円
有利子負債434億円で光通信の保有株の中では財務内容は悪いが、アグレッシブな石田社長の経営手腕を評価してのものと理解。
2007年の上場以来、株価は乱高下。
ピークは2013年12月の2828円。
3月安値521円はボトム圏で現在は戻り歩調。
5.オリコン(4800)時価875円 時価総額121億円
今期予想経常利益12億円(前期11.6億円)2020.3期
株式会社ブロードピーク 2位 151万株(10.0%)13.2億円
光通信株式会社 3位 68万株(4.5%)6億円
合計 219万株(14.5%)19.2億円
音楽データランキングからニュースサイト運営で再成長中。
CS調査の商標利用収入拡大。モバイル事業も展開中だが苦戦。
8月5日1Q発表予定。
前3月期末保有現預金21.6億円 投資有価証券1億円 有利子負債1.4億円
今期予想PER15.5倍 PBR4.0倍 予想配当利回り1.9%
前3月期は7.2%増収、31.2%の経常増益を達成。
経常利益は上場来の最高益を更新。
年初の高値1900円から3月安値509円まで73%の下落後6月10日に1088円まで2.1倍となるなど値動きは激しい。その後7月21日に813円まで25%調整し出直り気運。
2019.3期に比べブロードピークは20万株の買い増し。
株式会社光通信は71万株から10位外になったが光通信株式会社が68万株保有し10位以内となった。
このほか、光通信がグループ挙げて積極的な投資を行っている銘柄としては消耗品型のユニークな業態で着実な業績を上げている特殊電極(3437・トータル保有率23.2%)やデータアプリケーション(3848・同16.9%)西川計測(7500・同15.1%)、かわでん(6648・同10.9%)などがある。
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(炎)
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