産業新潮 
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3月号連載記事


■その18 情報収集

●情報と知識


 ピーター・F・ドラッカーは、「情報」と「知識」はまったく異なるものだと述べます。前者は現代風に言えばすべて「ビット」に置き換えることができます。つまり、「ゼロまたは一」の二進法の数字(またはランプの点滅)で表すことができ、「アルゴリズム」で計算可能算だということです。
 このゴットフリート・ライプニッツによって確立された理論に基づき、現代のコンピュータが生まれました。

 コンピュータの情報処理能力のすごさは、ここ数十年間で世界中が体感しましたが、コンピュータはあくまで情報を「処理」しているだけで、本当の意味での「判断」は行っていません。最近何回目かの「AIブーム」によって、
「AI」が人間にとって代わるとの話が喧伝されています。
 しかし、すべての人間の作業をAIがとって代わることなど読者が生きている間には起こらないはずです。

 もちろん私が「頭脳の単純労働」と呼んでいる「計算・集計・書き写し・事務連絡」などの現在のホワイトカラーの業務の大半を占めている原始的作業は、AIなどのコンピュータに置き換えられるでしょう。

 しかし、これはかつて製造業でも起こったことです。
 工場制手工業の時代は、人間がいちいち手作業で原材料から製品を製造していました。しかも、その製造ノウハウは親方から伝承され門外不出とされていました。それらの作業が、製造技術の進歩とテイラーの「科学的管理手法」にとってかわられたのです。
 それらに対して、手工業者などから激しい抵抗があったのは事実ですが、結果的に工場労働者の賃金は劇的に向上し、中学さえろくに卒業できなかった親の世代の子供たちの多くが大学に進学するという歴史上まれに見る大躍進が起こりました。
 これは、ドラッカーが指摘するように、例えば戦後の数十年間だけを考えても50倍以上という驚異的な生産性向上の恩恵なのです。

 ホワイトカラーの業務においても、原始的作業がAIに置き換わることによって生産性の劇的な向上が見込めますから、彼らはますます豊かになります。そして工場労働者が自分で木を削る代わりに、木を削る機械や生産システムの管理の仕事を行うようになったのと同じように、新しい世代のホワイトカラーたちは「計算・集計・書き写し・事務連絡」などの業務を行う機械(コンピュータ)の管理が主要な業務になります。


●知識が価値を生む

 いくら情報をたくさん集めてもそれらは原材料または半製品にしかすぎません。ですから、新たな世代のホワイトカラーたちは、「情報」を「知識」によって「完成品」にしなければならないのです。

 知識というのは「情報」と違ってビットで表すのが困難です。
 よく会議の席で「やたら表やグラフ(元をただせばビット)」を振りかざす担当者に「ところで君は何が言いたいんだね?」と突っ込みが入ることがあります。このような担当者は「情報」だけで仕事をしているのです。
 それに対して、ごく簡略な説明で、趣旨が明快で説得力のある話をする担当者もいます。彼こそが「知識」を活用する新しい世代のホワイトカラーなのです。彼が、情報を取捨選択し体系化できるのは「知識」のおかげです。そして「知識」は価値判断の重要な要素です。

(続く)


続きは「産業新潮」
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3月号をご参照ください。


(大原 浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。
★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。
(毎週木曜日連載)


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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)