産業新潮
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2月号連載記事
■その17 マネジメントの原則・最初が肝心
●最初が肝心
マイケル・ポーターは、「自社がどのような業界で、どのような位置(ポジション)を占めているのか」を知ることが、「競争戦略」を立案する上で極めて重要であると述べています。つまり、飲料業界のトップであるコカ・コーラ、自動車業界のリーディング・カンパニーであるトヨタ自動車、飲料業界の中堅であるダイドー、自動車業界の中堅であるマツダはそれぞれの位置で闘っており、そのあるべき「競争戦略」にも各社のポジションの違いが反映されるべきなのです。
孫子がそれほど長くは無い戦略書の中で「戦地の選択」に何回も言及するのは、それが戦略立案の基本であるからだというのは言うまでもありません。しかし、それ以上に「戦地は一度選択してしまえば後から変えるのは大変困難である」というのが最大の理由です。ですから、将軍(経営者)は、どこで戦うかを判断するために最大限にその能力を使わなければなりません。
経営者が判断を下す場合、すでにその企業の業種や順位などが決まっているはずです。しかし、「どの部署に限られた資源(資金・人材)を分配し強化すべきか」を判断するのは、まさに戦地を選択する行為です。もちろん、新規事業をどの分野で始めるのかを判断するのも同様です。
ウォーレン・バフェットは「投資の判断を下したら、あとは投資家がすべきことはほとんど何も無い」と述べます。彼がある企業に投資しようかどうか判断するときには徹底的にその企業や業界全体を研究します。
大変な読書家として有名なバフェットですが、業界や企業に関する知識も大概その分野のプロフェッショナルを上回ります。しかし、ある企業に投資をしてしまえば、後は企業の経営を役員たちに任せ大株主として口出しをしません。正しい戦地で正しい戦力を持っていれば負けることはまずないからです(残念ながら、ほとんどの投資家はバフェットの全く逆の戦略を採用していつも失敗しています)。
事業でも同じことです。どのような事業を始めるのかの判断が最も重要であり、一度事業を始めてしまえばできることは極めて限定的なのです。ですから「最初の選択」に経営者は全力投球をしなければならないのです。
●9つの戦地
孫子は戦いを行う土地を次の九つに分類します。
1)散地(軍の逃げ去る土地)。諸侯が自分の国の中で戦う。
2)軽地(軍の浮き立つ土地)。敵の土地に入ってまだ遠くない状態。
3)争地(敵と奪い合う土地)敵がとったら敵に有利、味方がとったら味方に有利な土地。
4)交地(往来の便利な土地)。こちらが行こうと思えば行けるし、あちらもこようと思えば来ることができる土地。
5)衝地(世の中のエネルギーの中心地)。諸侯が四方から近づいてきていて、一番乗りすれば諸侯の助けを借りて、天下万民の支援を得られる土地。
6)重地(重要な土地)。敵の土地に深く入り込んで、既に敵の城や村をたくさん背後に持っている状態。
7)土己地(軍を進めにくい土地)。山林、険しい地形、沼地などを通っていて、軍を進めるのが難しい土地。
8)囲地(軍を進めにくい土地)。道が狭く曲がりくねっていて、少人数で大軍を撃破できる土地
9)死地(死すべき土地)。力の限り戦えば脱出できるが、そうでなければ滅亡してしまう土地
(続く)
続きは「産業新潮」
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2月号をご参照ください。
(大原 浩)
★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。
★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。
(毎週木曜日連載)
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