産業新潮
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11月号連載記事
■その14 高い丘にいる敵を攻めてはならず、丘を背にして攻めてくる敵は迎え撃ってはならない
●自然淘汰で生き残るのは駆け引きにたけた生物である
チャールズ・ダーウィンに始まる(生物の)進化論は、1859年に「種の起源」の初版が発刊されてから160年ほどの歴史しかありません。サー・アイザック・ニュートンが「万有引力の法則」を1665年に「発見」(「地上の引力が月などに対しても同様に働いている可能性があることに気付いた」とされている)してから200年近く後のことです。
また、アダム・スミスの「国富論」の初版は1776年に刊行されており、こちらも「種の起源」の100年近く前のことです。チャールズ・ダーウィンは、当時知識人の必読書であった「国富論」を読んでおり、一般のイメージとは違って、国富論(神の意志を排除した、人間についての)「進化論」ともいうべき本)から、インスピレーションを受けて(生物の)「進化論」について確信を持ったともいわれます。
したがって、この歴史的に見れば新しい学説が、狂信的キリスト教徒から執拗な攻撃を受けるのもある意味当然かもしれません。実際、アルバート・アインシュタインの相対性理論や量子論は、直接的には神の存在を否定しませんが、「進化論」は神の存在と真っ向から対立します。
「種の起源」をきちんと読まずに攻撃する人々が多いこともあって、重要な事実が世の中に伝わっていません。それは「自然淘汰で生き残る生物は、地球の気温の変化などの自然環境にうまく対応した勝利者だが、それ以上に他の生物が作り出した環境に順応した勝者である」ということです。
自然淘汰では「環境」に適応した生物が生き残るとされますが、その「環境」の大部分がいわゆる自然環境ではなく「他の生物」なのです。
例えばライオンと鹿の関係を考えてみましょう。鹿が生き残るためには、ライオンなどの捕食者がうようよいる「環境」の中でうまく逃げ延びる必要があります。逆にライオンなどの捕食者が飢え死にしないためには、鹿などの獲物をうまく捕まえるための「環境」適応が必要なのです。
ですから「自然淘汰」の主要部分は、他者との闘いの結果生き残るということだといっても過言ではありません。ハーバード大学教授・マイケル・ポーターも「企業の戦略は、自社が市場の中のどのようなポジションに位置するかによって異なる」ということを強調しますが、これも企業間の競争においても「他社との闘いの結果によって自然淘汰が行われる」という重要な事実を示しています。
●組織で生き残る人物は他者との闘いで勝った人物である
企業、役所、NPO、政党、宗教団体等などでトップあるいは上層部に立つ人々も、もちろんその組織の中において「他者との闘いに勝った人物」です。孫子が述べるように「他者との闘いにおいてはどのような手段を使っても勝つべき」ですから、お世辞・ゴマすり、さらには他人の足を引っ張ることも戦術の一つです。ですから、トップや上層部であるからといって特別人格がすぐれているというわけではありません(そうあってほしいとは思いますが・・・)。
しかし、仲間内の争いに勝ち残っても、他の集団(組織)との争いに敗れれば、自分自身を含めた組織(集団)が全滅することにもなりかねません。ここに、集団(組織)が一致団結して、外部と戦わなければならない理由があります。
また、トップや上昇部が、「内部での戦いや駆け引きにたけた人」であることは、外部との競争において極めて重要です。いくら人格者であっても、単なるお人好しでは、競争相手の餌食になるだけです(日本には人格者(お人好し)が多いですが、それらの人々が邪悪な国々の餌食になっているのは、読者もよくご存じだと思います)。
(続く・・・)
続きは「産業新潮」
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11月号をご参照ください。
(大原 浩)
★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。
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