産業新潮 
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10月号連載記事


■その13 統制と組織

●命令と自由とブロックチェーン


 どのような人物でも他人から「命令」されることは決して楽しくないはずですし、逆に自分の考えで「自由」にふるまうことは心地よいはずです。ですから、インターネットの創世期のようにほとんどすべてのことが許される世界は人々をひきつけます。
 しかし、現在のインターネットは完全に自由とは言えません。
 チャイナ・北朝鮮・ロシアなのどの共産主義独裁国家における情報統制は別にしても、米国や日本などの先進国においても、犯罪(あるいは犯罪予備軍)、テロ行為などにかかわる情報は厳しく取り締まられるようになっています。
 ビット・コインなどの仮想通貨のおかげで脚光を浴びるようになったブロックチェーンですが、仮想通貨の未来は暗いのに対して、その仮想通貨を支えるブロックチェーン技術は、大きな革命を起こす可能性があります。

 ただし、それはビット・コインなどの管理者がいない「オープン型」ではなく、銀行などが開発を急いでいる管理者がいる「クローズ型」のはずです。
 「オープン型」のブロックチェーンは、インターネットのように管理者がいない「分散型」ですから、犯罪者はやりたい放題です。ビット・コインをはじめとする仮想通貨でも、マネー・ロンダリングや盗難などの問題が頻発しています。それに対して管理者のいる「中央集権型」ブロックチェーンでは、犯罪者集団など好ましからぬ人物たちを取り締まることができるので、安全なシステムになるというわけです。

 例えば、憲法9条教の信者たちは「軍隊などなくても日本を守れる。とことん話し合えばいいのだ」などと、いわゆる「お花畑」的な論理を展開しますが、そのようなことができるはずがありません。(日本の)軍備に反対する憲法9条教の信者たちも警察を廃止しろとは言いません。犯罪者たちから自分たちの生命や財産を守ってほしいからです。「自分に包丁を突き付けている犯罪者でも、話せば必ずわかるから警察を廃止せよ」とは言いません。
 自国の人々との間でさえ、話し合いだけで解決できないことがあるわけですから、前記の独裁国家などの敵国を含む世界中の国々と話し合いだけで物事が解決できると考えるのは狂気の沙汰です。

 さらに、(実態的に)政府が廃止された状態の国、例えばソマリアやナイジェリア、かつてのビアフラなどがどれほど悲惨な状態であるのかを考えれば、大概の場合嫌われ者である「政府」がどれほど重要であるのか分かります。

 「完全な自由」というのは、非常に聞こえの良い言葉であり、一種のあこがれでもありますが、実のところそれは西部開拓時代の「無法」状態と同じように、だれにも頼れずに「自分の命は自分で守らなければならない」という過酷な環境に置かれるということです。実際、米国では無法状態が長く続いたトラウマから、「銃を所有することに対する偏執的こだわり」を持つ人々が多数います。


●統制の重要性

 軍隊において「命令」が重要であることは言うまでもありません。命令の一つ一つに兵士や人民の命がかかっているからです。指揮系統を確立し、「命令を正確に実行する」ことが軍隊という組織の要です。
 孫子が王の寵愛する女性の首をはねたという有名な逸話も、命令を正確に実行できなければ、どのような人物でも極刑に処するという軍隊という組織の厳しさを示したものです。
 もちろん一般的な組織を考えれば「合意」や「自発的行動」に中心をおくのが望ましいわけですが、現在のように数十万人もの従業員(家族を含めれば100万人単位の集団)を抱える大企業が登場するような社会で、組織の構成員全員と意思の疎通を行うことは困難ですから、たとえ心の中で従業員が不満であっても確実に命令に従わせる「統制力」を失っては、会社という組織も安泰ではありません。

(続く・・・)


続きは「産業新潮」
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10月号をご参照ください。


(大原 浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。
★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。(毎週木曜日連載)


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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)