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小説「株仲間のぼやき(その2)」

2019/07/03 01:48 投稿

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 トリトン株同好会には会長をはじめ楽しいメンバーが集まってくる。


会長「今日から7月。皆さんのその後の運用成績はいかがでしょうか。」

 その日の株式相場はG20が終わってほっと一息かと思ったが、予想以上にダイナミックな急騰を演じていた。

 日経平均は一気に21700円台となり前日比454円高。2.13%の上昇を演じていたが、メンバーの中には心なしか元気のない顔があった。

与太「会長、先週まで強かった多摩ちゃんはもう終わり?」

 メンバーは株に愛称をつけて呼び合う習慣がある。

 もちろん多摩ちゃんは多摩川ホールディングス(6838)のこと。
 多摩ちゃんは先週2100円台の高値をつけ、1カ月もないうちに株価は倍以上にもなったのでメンバーの関心が高かった。

与太「こんなに日経平均が上がっているのに多摩ちゃん株は今日も下げているよ。」

会長「そりゃそうだろう。上がった株に利益確定売りが出るのは当り前。今日なんかは日経平均が上がってるだろう。だから投資家の関心はソフトバンクグループだのファナックだのといった指数に連動して上がりそうな銘柄に目が向くんだ。与太さん、そんなことぐらいしっかり覚えておいてよ。」

与太「はい、会長、合点承知の助。で、会長はたくさん持ってたけどどうしたの?」

会長「こっちとくりゃ、江戸っこだからな。長い間添い寝はしてきたけどな、損しちゃ売れんだろう。だけどなやっと売れる水準になってきたんだ…。ちょっとぐらい売らせてくれよ。」

与太「えっ?じゃあ売ったんですね?それじゃ、あれほど下がってぼやいてきた会長にも我が世の春ですね。それに3月決算の企業からしこたま配当金が送られてきたそうじゃないですか?」

会長「えっ!与太さん、なんでそのこと知ってるの?」

与太「実はある方から噂話で聞いたんですよ。会長と一緒にどこかの株主総会に行かれたあのアナリストからです。」

会長「でもね、与太さんね、それは単なる噂に過ぎないよ。配当金なんて知れてる知れてる。」

与太「そうですか?なんか3月期決算の凄い配当金の多い銘柄をお持ちで雨あられのような配当金が送られてきたというような話を小耳にしたんですがね。」

会長「そりゃ・・、俺のことじゃない。世間一般だろう?今日の株上げだって配当金の再投資もあったんじゃないの?」

北原「会長、そうなんですよ。今日の意外な株上げって、そんな需給がプラスに働いたとも言えそうです。明日もこの余韻が続くかどうかは天の神様のみぞ知るですがね。」

 そういう北原は若手の投資家で今日の上げを冷静に見ていた。

 個別銘柄には多摩ちゃんのようなお役目ご苦労さん的な最近の大活躍銘柄もある。その中には今日値下がりを演じた俗称、バアちゃん(バーチャレクスホールディングス)もある。
 この株には一種独特の値動きが見られるので短期投資家の関心が高い。
 ダイヤモンド・ザイでテンバガー候補銘柄とささやかれたが、AI関連の「進化計算ダーウィン」の発表で株価は雑誌の発売前から急騰を演じてしまった不運の銘柄だ。

 これに対して今旬なのはアクセル(6730)。そう、ブレーキではなくアクセル。この間つけた高値652円を今日既に射程圏に捉えてきたから勢いがある。

 この銘柄に注目するアナリストは小声で言う。

「アクセルは株主総会でもテンバガー銘柄候補で雑誌に出たと話題になったそうだ。バアちゃんも心配いらないですよ。いつとは言えないけどきっとまた来ますよ・・。」

 その言葉を聞いた会長はアクセルには乗り損ねたが、先日の高値で利益確定売りしたバアちゃんをどこで買い戻すか思案している。
 バリュー株大好きな会長も多摩ちゃんといいバアちゃんといい趣味趣向が変わったんではないか。

 こんなことをメンバーが囁いているうちに晴海トリトンの窓から見渡す街には夜のとばりがいつの間にか下りていた。


(次回に続く・・・)
(炎)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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