相変わらずの株式相場の調整にうんざりという皆さんも多いのかも知れませんが、時には視点を変えて企業を分析してみてはいかがでしょうか。
本日、取り上げるのは2つの関西系専門商社です。
3700余りの上場銘柄の中にはこうした企業の株もあるということを知って頂くと良いかと思います。
いずれも売上規模の違いこそあれそれぞれの分野で確たる地位を築いている関西に拠点を置く専門商社なのですが、資産価値に比べ投資家の評価が低いのも共通しています。関西にはこうした企業が多いですね。
筆者は過去、アズワン(旧井内盛栄堂・7476)やSPK(7466)に興味を持ちフォローしておりましたが、かつては今回取り上げる2社のような低評価に甘んじていた時代がありました(SPKはまだ低評価の印象があります)が、現在は業績の着実な向上、連続増配とともに投資家からの評価を高めています。
大手総合商社も伊藤忠など繊維から派生した関西系商社が多いのですが、このほか化学品の長瀬産業(8012)、稲畑産業(8098)、LPガスの岩谷産業(8088)、鉄鋼の阪和興業(8078)、神鋼商事(8075)、機械の山善(8051)、椿本興業(8052)といった有力専門商社が活躍しています。
さすが商人の街、大阪ならではの企業群は今だ健在なのです。
大阪本社ではこのほか切削工具の専門商社、Cominix(3173)や杉本商事(9932)などの比較的時価総額の小さな地味なイメージの中堅商社が株価意識を高めるとともに、IR活動で存在感を増しつつあります。
【関西系商社の株価、コメント】
予想経常利益(億円)/時価総額(億円)/PER/配当利回り
1)アズワン(7476)9750円、上場来高値更新中
91.2/1820/29.1倍/1.71%
2)SPK(7466)2390円、安定成長、下値模索中
19.4/120/8.2倍/2.93%
3)伊藤忠(8001)1999円、1年以上2000円前後で推移
推定5800/3兆円/6倍/4.25%
4)長瀬産業(8012)1586円、2017年11月高値から値下がり傾向続く
270/1967/9.6倍/2.77%
5)稲畑産業(8098)1349円、下値模索中 投資有価証券豊富(864億円)
145/816/4.5倍/3.55%
6)岩谷産業(8088)3555円、調整中の株価は更なる調整となるか微妙
330/1749/8.5倍/1.82%
7)阪和興業(8078)2756円、下値模索中 12月安値2491円に接近中
280/1120/5.8倍/5.44%
8)神鋼商事(8075)2264円、下値模索中、12月安値2221円に急接近中
70/200/4.4倍/4.86%
9)山善(8051)1009円、再度下値模索、12月安値908円に接近中
160/954/8.7倍/3.32%
10)椿本興業(8052)2962円、3000円前後の下値圏で1か月間推移
50/185/5.4倍/4.05%
無借金、現預金181億円、投資有証98億円
11)Cominix(3173)848円、昨年12月安値から水準切り上げ中
11.8/58.2/8.1倍/3.65%
12)杉本商事(9932)2071円、直近高値は5月27日の2103円で株高傾向
34.85/229/10倍/3.86%
来3月までの50万株(4.52%)の自己株買い発表
東京オリンピックで盛り上がってきた東京に対して停滞してきた関西のイメージは2025年に開催される大阪万博でポスト東京オリンピックという潮流を背景に良くなるものと思われます。現に関西ではインバウンド需要の高まりから様々な観光ニーズが高まりつつあるようです。
上記の関西系12銘柄は皆様に追加フォローを願うとして今回は以下の2銘柄に焦点を当ててみたいと思います。
2銘柄に共通するのは専門商社という立ち位置とともに取引先の株式を保有する投資信託的な要素を持つ点です。過去の取引の過程で自然に構築されたビジネスの結果だと言えますが、両社とも自社の株主に支払う配当金は保有する投資有価証券からの配当金でほぼ賄えている点が興味深いところです。
また、いずれも上場時期が直近3年程度しか経過しておらず認知度が低いということも共通しています。
1.昭栄薬品(3537)時価952円
昨年7月高値1300円からの調整トレンドが続いているが、2016年の安値550.7円に対してはまだ上の水準にある。
上場したのは2016年3月。その際の高値は1461.7円だが、その後株価は3か月で3分の1にまで急落。その後は2年1か月で2.36倍にまで上昇した。
前期の経常利益は4億11百万円、今期は中間期は減益ながら下期の回復を見込み、ほぼ前期並みの経常利益(4億12百万円)を見込んでいる。
今期予想PER12.5倍、配当利回りは1.89%。時価総額は34億円。
現状の市場環境下では取り立てて割安という水準ではないが、株価がこの水準で評価されている背景は保有している取引先の株式の存在が上げられる。
前期末の保有現預金は18億68百万円、これに対して投資有価証券は、72億42百万円にも上る。有利子負債は長短合わせて10億82百万円で、支払い利息1142万円に対して受取利息、配当金収入は合わせて1億2566万円で、金融収支は1億1424万円となっている。
これに対して同社の支払い配当金総額は64百万円にしか過ぎず、黙っていても社内に50百万円が残る計算だ。前期の配当性向は23.5%で今期もほぼ同水準。仮にこの50百万円を配当金に回したら年間の一株当たり配当
金は31円となる。配当利回りは3.25%となる計算だが、つまり同社は本来の事業から得られる利益は株主に対して1銭も還元していないのだ。
これは経営者の怠慢と言われても致し方ない。少なくとも事業利益で得られると想定される2億円の20%、40百万円は配当に回すことができないとおかしい。
モノ言う株主として存在するのか光通信が4番目の株主となっているが、投資家は業績の動向を見ながらそろそろ妥当な発言をしてもおかしくないだろう。
同社の場合は保有する株(2018.3期23銘柄)の80%が花王(4452)株。その花王株次第で有価証券の評価額が変動することになる。
花王株は2018年3月期末の7981円から前期末は8480円に上昇。
優良株の典型ではあるが、今後の変動はなかなか想定しにくいものの、今後も安定した業績拡大から株価も安定した推移が期待される。
結果として投資有価証券の評価額は18年3期の69億円から前期は72.4億円に増加した。今後も花王株次第と言えるが、同社株は過去花王株と似た動きをしていることから同社株に投資することは花王株に投資することとほぼ同じだと考えられる。
花王が同社株を保有しているかは不明だが、この関係を知っていれば案外安心して保有できるのかも知れません。
2019年3月期有価証券報告書はまだ未掲載ながら花王株の保有株数が前期と同じとなると今期130円配当を実施する花王から年間9000万円の配当金が入る計算だ。
花王株をコアとする会社型投信を運営している企業が昭栄薬品だとすれば、これから取り上げるオーウエル(7670)は日本ペイントや関西ペイントなどの塗料会社の株式をコアにした会社型投信だと言えるだろう。
本業はあくまで塗料や電気・電子材料の販売なのではあるが、こうした別の側面については決算説明会でも経営者からほとんど語られることはなく投資家の皆さんには昭栄薬品と同様に認識して頂きたい。
2.オーウエル(7670)時価617円
上場来安値602円 同高値926円
同社株は昨年12月に東証2部に公開価格750円で上場。公開時に保有していた自己株187万株のうち171.4万株を放出してのIPOだった。
上場後に一旦926円まで株価は上昇したが、その後は年初に604円まで急落。その後は公開価格水準まで戻ってきたが、ここに来て再び下値模索の動きで安値割れの可能性も感じられる状況。
取引先企業は3000社でメーカー系を除けば、塗料専門商社としては最大手に位置していると言える。クライアントは自動車や建機、造船、住宅など。
塗料はメンテナンスにも不可欠な商材で今後も安定した需要が期待できるが、国内需要は飽和状態だとも言える。そのことが過去の業績にも反映され、前期の決算は増収増益ながら上場時の見通しに対して小幅に下方修正されたのに続き今期は米中貿易摩擦による先行き不透明感もあり、小幅増収ながら減益を見込む。
今期の予想経常利益13億60百万円に対して時価総額は64億円。今期予想PER7.1倍、実績PBR0.37倍、今期予想配当利回り4.37%という水準で株価面では全くの不人気。
前期末の投資有価証券は95.6億円。その内容は有価証券報告書に記載されているので皆さんもチェックして頂きたい。今期の大幅な増配(前期12円から20円に増配、今期は更に27円に増配)を発表したのも頷ける内容なのです。
実はIR担当者との連絡が取れ、今週末に面談を予定しています。果たして皆さんに明るい報告ができるかは分かりませんが、ポジティブな評価ができればタイミングを見て何らかの形でご報告したいと考えます。
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(炎)
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