書評:とことんやさしい電気の本(第2版)
 山崎耕造著、日刊工業新聞社
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●宇宙を支配する四つの力とエネルギー

 宇宙に存在する力は四つに分類される。

1)強い力
2)弱い力
3)重力
4)電磁気力
である。

 いわゆるビッグ・バンの時点ではこの四つの力はまだ分離していなかったのだが、その後分離した。他の三つの力に比べて重力だけが極端に弱いことが謎の一つで「実は重力はこの宇宙の外の他の宇宙に漏れている」として、多元宇宙論を補強する証拠ともいわれる。

 重力の力の弱さは、小さな磁石一つで地球の重力すべてを受けている釘を軽々と持ち上げることができることからすぐにわかる。

 日常生活では電気と磁気は異なったものとして扱われているが、アインシュタインが「時間と空間は同じもの」と看破して「時空」と名付けたように、電気と磁力は同じものであり「電磁気力」と呼ぶわけである。

 電磁力は我々の生活に欠かせず、石油・石炭・天然ガスなどの化石エネルギーは植物の光合成や動物の代謝に関連して生成された燃料だが、実のところ「電磁気力」によって生み出されているのだ。

 また、ほとんどの自然エネルギーは、太陽の光エネルギーや熱エネルギーの活用だが、これも太陽から降り注ぐ「電磁波」のエネルギーである。また、太陽のエネルギーそのものは「核融合反応」によるものであり、「強い力」による。

 地熱は、地球内部で生じている放射性元素崩壊の弱い力を、潮汐発電は引力を活用している。

 実は、「電磁気力」をはじめとする四つの力は、エネルギーを通じて我々の生活に深くかかわっているのだ。日常のエネルギー(分子と化学)のほとんどが、この電磁気力によって生まれているといえる。


●人体にも電流が流れている

 つなぎ合わせた死体に雷の電流を流して蘇生させる「フランケンシュタイン」(メアリー・シェリー:1918年)は有名だが、イタリアの解剖学者ガルバーニが1771年に行った実験に触発されたものといわれる。
 この実験ではカエルの脚に金属片が触れると痙攣を起こすことが確認され、1791年にこの脚を収縮する力を動物電気と名付けた。後に同じくイタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタにっよって「実際には2種類の金属間に接触電圧が生じたことによる痙攣」であったことが明確化された。

 現在では、人体にも200マイクロアンペアほどの微弱な「生体電流」が流れていることが分かっている。

 心臓にも1マイクロアンペア程度の極めて弱い電流が流れており、この電流が乱れたときに、電気ショックで元に戻すのがAEDである。

 MRIは、人体に磁気を当て画像を撮影する装置であり、体内の水素電子が持つ弱い磁気を、強力な磁場で揺さぶり、原子の状態を画像にする装置である。

 電気を発生させる生物として有名なのが電気ウナギだが、興奮すると「発電器官」の細胞膜の性質が変わり、ナトリウムイオンが細胞内に入りやすくなることによって、内側の細胞の電圧が高くなる。ただし、最大600ボルトで1ミリ秒(1秒の1000分の一)しか発電できない・・・・。

 ただ、電気は2次エネルギーであり、生体の化学反応の結果電気が流れていると考えるのが自然である。

 生体の活動を知るうえで「発生した電気」について調べる(脳波計、心電図)ことは有意義だが、電気が生体を動かすと考えるのは因果関係が逆である。


(大原 浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
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