産業新潮
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1月号連載記事
■その4 国王と将軍、株主と経営者
●会社はだれのものか
よくある議論のテーマですが、その際に混同されているのが、「会社はだれのものか」ということと、「会社はだれのためにあるのか」ということです。この二つの内容は全く異なっています。
まず、「会社はだれのものか」という問いに対する答えは明快です。「会社は所有者たる株主のものである」と断言してかまいません。例えば、不動産に例えれば新宿駅前のアルタビルはだれのものかといえば、(不動産登記簿に記載された)所有者のものであることに意義を唱える人はいないでしょう。もしそうでなければ、アルタビルを買いたいと思う人は一体誰から買えばよいのか皆目見当がつきません。
会社でも同じです。会社が株主名簿に記載された株主のものであることに疑いの余地はありませんし、だからこそ株式の売買が可能なのです。
しかし、「会社はだれのためにあるのか」という問いに対する答えは全く別です。例えば、前記の不動産(アルタビル)のオーナーが、「自分のものだから」と言って、好き勝手に土地を使っていいというわけではありません。まず、建築基準法などにしたがって、容積率・耐震性などの制限を受けなければなりません。また、ビルで働く人々やテナントにやってくる顧客、さらには隣接するビルの関係者などの安全を図るため、消防法などに従って適正にビルを管理しなければなりません。不動産(ビル)は所有者のためだけに存在するのではなく、関係するすべての人のためにあるからです。一戸建ての住宅の場合でもそれは変わりません。近隣の住民やコミュニティとの関係無しに生活などできませんから、日影規制やゴミ出しのルールなどを守らなければなりません。
会社も、その会社で生活の糧を得、自己実現を図る役職員はもちろん、その会社の製品やサービスを利用する顧客がいなければ成り立ちませんし、逆に言えば彼らのためのものでもあるのです。株主が所有者であることが明確ではあっても、社会あるいは市民に受け入れらない企業は価値を持ちません。さらには、ドラッカーが述べる「知識社会」での従業員は、「知識」という生産財を会社に提供しているわけですから、会社が従業員のためにあるという側面はより強まっているといえるでしょう。
●国王と将軍
さて、このような「会社はだれのものか」というという問いに対して、孫子は「軍隊はだれのものか」という形で答えています。もちろん軍隊の所有者は国王ですが、将軍がきちんと統制し、将兵がその任務を遂行しなければ役に立ちません。持っているだけでは何の意味も無いのです。
孫子はこのように述べています。
「国王にとって将軍は助け役であり、二人の関係が親密であればあるほど、良い成果を出せる。もしそのコミュニュケーションがうまくいかなければ、国家は弱くなる」。
そして、三項目の注意すべき事柄を上げています。
1)戦争のことをよく知らないのに、軍隊を直接指揮しようとしてはならない。
2)戦争のことをよく知らないのに、将軍と一緒に軍隊を動かそうとしてはならない。兵隊はどちらの指示に従うか迷うことになる。
3)実戦のことも分からないのに、最前線で軍隊の指揮を行おうとしてはならない。兵士は迷い疑うことになる。
続きは「産業新潮」
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1月号をご参照ください。
(大原 浩)
★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
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