かねてより注目されてきた日銀総裁人事も次期総裁に黒田氏が就任する見通しとなり、かなり踏み込んだ大胆な金融緩和が進められるとの期待が市場で増殖しています。
「できることは何でもやる」という黒田次期日銀総裁候補の国会所信聴取での発言は以前より期待が高かったせいか直球で市場に株高円安で影響はしませんで した。今後は「何を実際やるのか?」という点に関心が移ったようです。言葉尻をとって、「できることは何でもやるけど、できないことはやらない?」という ような言葉も聞かれですが、それは別として、就任後「これまでの緩和とどう違うのか?」「どのくらい大胆なのか?」に関心が注がれます。大きな期待という 発射台からのスタートなので失望という反応があることにも気をつけておきたいところです。
これで、安倍政権の経済政策の第一項目である大胆な金融緩和政策がやっと4月から始まりますが、相場は既にしっかり魚の頭の部分をしっかり食べてしまったようでもあります。相場の本番はこれからなのか?しっかり見極めていく時期でしょう。
話は少し横道にそれますが、アベノミクスという言葉はどうも違和感があります。特に目新しい内容と思えないからです。ただ、これだけ相場を動かしたの は、伝え方の上手さ、押しの強さ、そして特に国内外の環境が変化しそうな時期とのタイミングの良さではないかと思っています。
さて、新総裁体制の金融緩和策は黒田氏のコメントからはより長期の国債の買入、デリバティブ商品も使ったリスク資産購入など様々な方法を使って早期に物 価目標2%を達成するとのことです。これまでも日銀は量的には米国FRBや欧州中銀に決して負けない資金量を供給してきましたので、今度は量に加えて質を 目新しく変えて効果を上げていこうということなのでしょう。
日銀の長期債買い政策を材料に10年物日本国債は一時0.6%を割る場面もあり最近では相場下げの場面でも0.7%抵抗線でブロックされているようで す。10年米国債が2%を越えて来た一方での金利差拡大は先物ドル相場の割安感を通じて直物ドル相場でドル高円安を更に進める要素になるだろうと考えま す。
米国債券市場では、10年米債が2%を越え利回りがじわじわ上昇、雇用や住宅関連など経済指標の改善が見られる米経済。背景には、金融危機から5年の日 柄が経過。その間、FRBは徹底的に手を替え品を替え量的緩和を実施。その効果が出てきたというのもあるでしょうし、シェールガス革命という環境が将来の 米経済に与える良いインパクトが確認されつつあるというのもあるでしょう。シェールガスによる効果は米国のエネルギー政策へ影響しエネルギー資源輸入減 少、更に中東産油国やその周辺への米軍の活動を減らし軍事費削減へもつながると言われています。
米国中央銀行にあたるFRBは最近、量的緩和の出口戦略情報をちょろちょろ出して市場の反応をチェックしているように見えます。金融緩和政策を終了させ るタイミングの難しさはこれまで歴史でも見てきています。日銀は1990年代後半にゼロ金利政策で金融危機に対応しましたが、2000年8月に金利を上げ ざるを得なくなりました。ITバブル崩壊と時期が重なり、利上げには機が熟していなかったという結果となり、半年後には利下げを行ったという経緯がありま す。緩和を戻すタイミングは本当に難しいと思います。FRBの政策変更は来年という見かたが多いですが、その前に何度も慣らしのための情報で市場が揺れる 場面があるのだろうと思います。
米国FRB、欧州ECBと米欧の中央銀行総裁のコメントが最近聞かれました。景気下方修正した欧州中銀ドラギ総裁でしたが、一部予想された利下げは決定 されませんでした。ただ理事会内で議論はあったようです。ECBの政策目標は雇用と物価両方を政策目標としたFRBとは異なり物価目標を達成することなの で物価状況が落ち着いている現在、利下げを決定しなかったことは不思議ではないでしょう。昨年のユーロ危機時に「ユーロを守るために何でもやる」と力強く コミットしたドラギ総裁。今は「中央銀行としてやることはやった。後は各国政府がベストを尽くす番」が本音かもしれません。
イタリア政治の不透明感で先般マーケットは大きく動きました。ユーロ対米ドルも一時の1.35~1.36から直近1.30割れまで売られ、その水準で上下しています。金融緩和の出口への遠く、もう一段の利下げも否定できないという可能性を市場では見ています。
今年に入ってから特に目立つ対主要通貨でのドル高傾向は金融緩和の出口への距離を現しているようです。
ところで、近未来の主要通貨になるかもしれない人民元について少し触れます。人民元の対ドル相場は1月から弱含んだものの、2月中旬からドル安人民元高に推移しています。
昨日も日本の商社による人民元建ての債券起債のニュースがありましたが、起債や貿易決済で人民元建ての取引が増えています人民元の国際化を中国政府も推 し進めているのも事実です。人民元には通貨管理など不透明な部分もありますが、自由化、国際化で通貨は強くなる傾向にあることは間違いないと思います。弱 くなる円、強くなる人民元、今後注目していきたいところです。
最後に面白い話題があったのでご紹介します。カリブ海は世界でも有名な観光地ですが、米国人観光客に人気の国々と欧州観光客に人気の国々で観光産業に明 暗が出ているという話です。例えば、ドミニカ、キューバ、ジャマイカ、バルバドスの4国への欧州観光客は昨年8%強減少。特に欧州の旅行者が好む東カリブ 海諸国では二桁の落ち込みとか。一方で、ガイアナやドミニカ、ベリーズ(旧ホンジュラス)カンクンなど米国人観光客が好むところは前年比二桁の観光客数が 増加したそうです。米欧の経済状態の違いを感じてしまう興味深いデータなのでご紹介しました。(出典、ブルームバーグ・ニュース)
最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。
また、先般、ご案内した東証でのイベントにご来場頂きました皆さまにはこの場をお借りして感謝申し上げます。
*本号の情報は基本3月12日のニューヨーク市場の終値レベルをベースにしています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
「できることは何でもやる」という黒田次期日銀総裁候補の国会所信聴取での発言は以前より期待が高かったせいか直球で市場に株高円安で影響はしませんで した。今後は「何を実際やるのか?」という点に関心が移ったようです。言葉尻をとって、「できることは何でもやるけど、できないことはやらない?」という ような言葉も聞かれですが、それは別として、就任後「これまでの緩和とどう違うのか?」「どのくらい大胆なのか?」に関心が注がれます。大きな期待という 発射台からのスタートなので失望という反応があることにも気をつけておきたいところです。
これで、安倍政権の経済政策の第一項目である大胆な金融緩和政策がやっと4月から始まりますが、相場は既にしっかり魚の頭の部分をしっかり食べてしまったようでもあります。相場の本番はこれからなのか?しっかり見極めていく時期でしょう。
話は少し横道にそれますが、アベノミクスという言葉はどうも違和感があります。特に目新しい内容と思えないからです。ただ、これだけ相場を動かしたの は、伝え方の上手さ、押しの強さ、そして特に国内外の環境が変化しそうな時期とのタイミングの良さではないかと思っています。
さて、新総裁体制の金融緩和策は黒田氏のコメントからはより長期の国債の買入、デリバティブ商品も使ったリスク資産購入など様々な方法を使って早期に物 価目標2%を達成するとのことです。これまでも日銀は量的には米国FRBや欧州中銀に決して負けない資金量を供給してきましたので、今度は量に加えて質を 目新しく変えて効果を上げていこうということなのでしょう。
日銀の長期債買い政策を材料に10年物日本国債は一時0.6%を割る場面もあり最近では相場下げの場面でも0.7%抵抗線でブロックされているようで す。10年米国債が2%を越えて来た一方での金利差拡大は先物ドル相場の割安感を通じて直物ドル相場でドル高円安を更に進める要素になるだろうと考えま す。
米国債券市場では、10年米債が2%を越え利回りがじわじわ上昇、雇用や住宅関連など経済指標の改善が見られる米経済。背景には、金融危機から5年の日 柄が経過。その間、FRBは徹底的に手を替え品を替え量的緩和を実施。その効果が出てきたというのもあるでしょうし、シェールガス革命という環境が将来の 米経済に与える良いインパクトが確認されつつあるというのもあるでしょう。シェールガスによる効果は米国のエネルギー政策へ影響しエネルギー資源輸入減 少、更に中東産油国やその周辺への米軍の活動を減らし軍事費削減へもつながると言われています。
米国中央銀行にあたるFRBは最近、量的緩和の出口戦略情報をちょろちょろ出して市場の反応をチェックしているように見えます。金融緩和政策を終了させ るタイミングの難しさはこれまで歴史でも見てきています。日銀は1990年代後半にゼロ金利政策で金融危機に対応しましたが、2000年8月に金利を上げ ざるを得なくなりました。ITバブル崩壊と時期が重なり、利上げには機が熟していなかったという結果となり、半年後には利下げを行ったという経緯がありま す。緩和を戻すタイミングは本当に難しいと思います。FRBの政策変更は来年という見かたが多いですが、その前に何度も慣らしのための情報で市場が揺れる 場面があるのだろうと思います。
米国FRB、欧州ECBと米欧の中央銀行総裁のコメントが最近聞かれました。景気下方修正した欧州中銀ドラギ総裁でしたが、一部予想された利下げは決定 されませんでした。ただ理事会内で議論はあったようです。ECBの政策目標は雇用と物価両方を政策目標としたFRBとは異なり物価目標を達成することなの で物価状況が落ち着いている現在、利下げを決定しなかったことは不思議ではないでしょう。昨年のユーロ危機時に「ユーロを守るために何でもやる」と力強く コミットしたドラギ総裁。今は「中央銀行としてやることはやった。後は各国政府がベストを尽くす番」が本音かもしれません。
イタリア政治の不透明感で先般マーケットは大きく動きました。ユーロ対米ドルも一時の1.35~1.36から直近1.30割れまで売られ、その水準で上下しています。金融緩和の出口への遠く、もう一段の利下げも否定できないという可能性を市場では見ています。
今年に入ってから特に目立つ対主要通貨でのドル高傾向は金融緩和の出口への距離を現しているようです。
ところで、近未来の主要通貨になるかもしれない人民元について少し触れます。人民元の対ドル相場は1月から弱含んだものの、2月中旬からドル安人民元高に推移しています。
昨日も日本の商社による人民元建ての債券起債のニュースがありましたが、起債や貿易決済で人民元建ての取引が増えています人民元の国際化を中国政府も推 し進めているのも事実です。人民元には通貨管理など不透明な部分もありますが、自由化、国際化で通貨は強くなる傾向にあることは間違いないと思います。弱 くなる円、強くなる人民元、今後注目していきたいところです。
最後に面白い話題があったのでご紹介します。カリブ海は世界でも有名な観光地ですが、米国人観光客に人気の国々と欧州観光客に人気の国々で観光産業に明 暗が出ているという話です。例えば、ドミニカ、キューバ、ジャマイカ、バルバドスの4国への欧州観光客は昨年8%強減少。特に欧州の旅行者が好む東カリブ 海諸国では二桁の落ち込みとか。一方で、ガイアナやドミニカ、ベリーズ(旧ホンジュラス)カンクンなど米国人観光客が好むところは前年比二桁の観光客数が 増加したそうです。米欧の経済状態の違いを感じてしまう興味深いデータなのでご紹介しました。(出典、ブルームバーグ・ニュース)
最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。
また、先般、ご案内した東証でのイベントにご来場頂きました皆さまにはこの場をお借りして感謝申し上げます。
*本号の情報は基本3月12日のニューヨーク市場の終値レベルをベースにしています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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