4月21日に発明塾の楠浦さんと大手エレクトロニクス研究職だった村上博士を招き、5時間に渡る特許情報セミナーを行うことになった。


 わたしも今日、特許庁の特許検索無料サイトのJ-PlatPatで10分ほど遊んでみた。
 最近、J-PlatPatの検索ページが変わったため、python pandasの読み込み方までも変えなけれならなかったからだ。

 それはどうでもいいことだが、自分なりにトヨタの開発の状況を10分だけの短時間で調べてみた。


== 一次情報を読みこなす 特許情報から==


 全文は以下のURLをお読みください。
https://double-growth.com/patent001/


 投資においては、一次情報というものをわたしは重視している。

 一次情報とは、会社のHPからの情報、会社から出している出版物や研究発表など投資対象企業からの情報である。

 たとえば、特許情報は社員が書いているものであり会社が出願したものである。よって、特許も一次情報となる。

 もちろん、会社側に取材して得た情報についても直接会社から得たという意味で一次情報となる。

 このうち、特許についてのノウハウのひとつを提示したい。


 疑問を持ったら重要な一次情報である特許を読むのだ。
 必ず、重要な新しい発見が見つかるだろう。


 さて、トヨタ自動車のEV開発はどうなっているのだろうか。

 たとえば、トヨタが出願したもので、全文検索をかける。
(出願はトヨタ自動車と指定し、あとは全文検索とした。)

 わたしは、EVになったとき、個人的にブレーキの機構がどうなってしまうのかなと興味を持っていたので、「EV」とか「ブレーキ」とかのキーワードをつけて検索してみた。

 J-PlatPatの無料検索を使ってみた。

 ここがJ-PlatPatの難点だが、検索結果を3000件以内まで絞り込む必要がある。

 わたしは、2010年以降の登録した権利だけを検索した。
 2073件まで絞ってみた。


== 10分でできる分析 ==


 以下の分析は、たったの10分でできる。
 だから、やらないと損だ。

 だが、情報の整理は、3000件の特許情報なので、テキストでは10万行以上になる。
 エクセルでは遅すぎる。だが、python pandasなら一瞬だ。

(自慢に聞こえたら申し訳ないが、リンクスの主催するPython教室は定員の2倍の申し込み状況であり、そこでこうしたプログラミングツールも配るので、個人投資家の情報処理リテラシーは大幅に上昇し始めている。)

 さて、そうした上で、FIなどのタームで整理してみた。

 トヨタらしく、やはりB60KというFI(またはIPC)が多いことがわかる。このコードはHEVを指す。
 つまり、電動を主体としつつも内燃機関を補助にというトヨタの遊星歯車プリウスでおなじみのハイブリッドだ。IPCの分類をするだけでも、トヨタの戦略がよく現れていると思うのだ。

 大(ハイブリッドHEV)は小(EV)を兼ねるとはいうが、EVになればトヨタの強みが消されるのであろうか。
 こういう懸念?が一次情報を見るとわかる。

 まあ、実際には、特許の内容をよく吟味しなければならないのだが…。


 それでは他社はどうなのか。

 登録特許の数だけでは、2010年以降、トヨタ37000件に対して日産は11000件と確かに少ない。それでは日産とトヨタの年度ごと、あるいはFIの違いを見てみようかなとなる。


== トヨタは二次電池特許の割合が急増している==


 トヨタの直近の登録2700件を見ると、燃料電池関連のものがやはり多い。
 これもトヨタらしい。

 モータのコントロールに関するものも多い。
 ただし、決め打ちせず、多くの範囲をカバーしようとしている全方位の姿勢が見えた。


 だが、トヨタ。さすがである。

 この1年で公開された2700件を次に見た。
 すると、なんと、二次電池の分類H01M10がかなり増えていることがわかる。
 この1~2年で相当、研究が加速していることがわかる。
(このように公知日、登録日、出願日別に検索可能であり、登録日の最近の2700件と公知日での最近の2700件では意味が全く違う。最新の動向は公知日にしなければわからない。。。)

 登録日での分類:まだトヨタ、ハイブリッド。
 出願日での分類:まだトヨタ、燃料電池に重きを置く。
 公知日での分類:二次電池(リチウムイオン電池等)にシフトしている。
という違いがある。


 日産は一方で、パワーアシストなどの特許が多かった。二次電池関連も多い。が、数が圧倒的にトヨタよりも少ない。


== 圧倒するトヨタの特許件数 ==


 トヨタがこの1年で数千件の公開があるのとくらべると日産のそれは数百件であり圧倒的に少ない。日産の特許の内容もgearingに関するものが多い。日産、二次電池では大丈夫なのか?という疑問も出てくるというわけだ。

 いずれにしても、この1年間のマーケットの二次電池関連への物色は研究のフォーカスからも裏付けられた、ということになる。



 このように一次情報から企業の将来の技術トレンドをたったの10分程度で整理することができる。


リンクス リサーチ アナリスト 山本 潤


NPOイノベーターズフォーラム理事。
メルマガ「億の近道」執筆17年間継続。
1997-2003年年金運用の時代は1000億円の運用でフランク・ラッ
セル社調べ上位1%の成績を達成しました。
その後、2004年から2017年5月までの14年間、日本株ロング・ショ
ート戦略ファンドマネジャー。
みんなの運用会議では、自分のおカネを10年100倍の資産運用を目指して
いる。
コロンビア大学大学院修了。
法哲学・電気工学・数学の3つの修士号を持っています。


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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)