市場波乱と冬季オリンピックに揺れた2月も末日となりました。
株式市場は、2月中旬を当面の底になるのか戻りを試しているように見えます。
一方で、株式市場下げのきっかけとなった米国長期金利の利回りは大きく変化しない中で、注目されたのが昨日のFRB新議長であるパウエル氏の議会証言でした。
先週21日に発表された1月のFOMC議事録(イエレン議長最後のFOMC)の声明文では、利上げに関して『「更なる」慎重な利上げ』の継続が明記されていました。
「更なる」という言葉の追加は、景気に対する見通しの引き上げ、金利上げ路線を維持するというFRBの意図を示したのではないかとの推測が多数をしめました。
2017年の3回利上げに引き続き、2018年も3回利上げをするだろうという予想が大半を占めました。一方で、1月の雇用統計での賃金上昇から始まったとも言えるインフレ懸念は加速を見せているわけではないのではないか?それによる行き過ぎた金利上昇は景気に悪影響だとの見方もFRB内部にもあると見られます。
この辺りを踏まえて、新議長が初の議会証言でどう発言するのかが注目されていました。
先般の株式市場の下げが金利上昇であったことも意識しての発言をするだろうとの予想もありましたが、実際に行われた昨日の議会証言は「タカ派」を思わせる内容で、インフレ見通しについても加速懸念の高まりを示唆していました。
パウエル総裁発言を受けて、市場では利上げが年3回から4回になる可能性もありとの見方も出て、政策金利の見通しの影響を最も受ける2年債利回りが2008年以来の水準2.27%に上昇し、発言前まで2.85%水準だった10年債利回りは2.90%に上昇しました。
米国の足元の好調な経済に加えて、税制改正等の景気刺激政策による成長期待、完全雇用に近い労働市場の好調さが金利上昇の背景にあるわけですが、市場金利の上昇は借入金利の上昇に繋がります。金利上昇が続いた場合、大きな消費である住宅市場への影響も出るでしょう。金利に特に敏感な米国の住宅市場動向は今後よく見ていく必要があると思います。
株式相場の下落(または調整?)でリスクオフ色が高まった2月、ドル円相場はレンジの下値メドだった107円を割ると、スルスルっと2月16日に105円55銭までつけました。
昨日はパウエル発言を受けて金利上昇⇒ドル高という反応でした。しかし、このところ、為替市場は、金利市場や株式市場との相関がマチマチです。
米国の金利上昇がじわじわ始まり出した時、インフレ懸念の高まりによる債券利回り上昇⇒インフレ懸念の高まりは通貨価値の低下というドル安との解釈も多くありました。
名目金利からインフレ率を引いた金利が、ご存じのように実質金利です。
米国の実質金利の低下はドル安に繋がり、逆に実質金利上昇はドル高に繋がりやすいです。
現在、ドル安円高&米金利上昇している状況は、ドル債投資も一つの投資選択肢かと思いますが、その為には、インフレ動向、実質金利のウォッチを見ていく必要かと思います。
一方、日本サイドの材料では、日銀総裁、副総裁人事が決まりました。
総裁は事前の予想通りでしたが、副総裁人事ではリフレ派の若田部氏、黒田総裁の緩和政策を影で設計したと伝わる雨宮氏が決まったことから、金融緩和の出口は近くはないという連想に繋がり、その点からはドル円相場の下値を限定する背景になると思います。
明日からの3月は日本は年度末、海外は第1四半期末でもあり、節目に起こる諸要因に振らされることも多いと思います。と同時に、絶好のチャンスの可能性もあるわけで、資金に余裕を持って冷静に臨みたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※2月28日東京時間15時執筆
本号の情報は2月28日の東京市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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