2月2日に発表された米国の1月雇用統計における賃金上昇率の加速をきっかけにして、インフレ懸念→長期金利の急上昇→資産価格の割高感→水準修正の動きへと連鎖。もともと高所に居た米株式市場の大反落と共に、リスクオフの株安が世界的に広がりました。
債券安・株安の動きが支配的になってから約2週間になりますが、未だVIX(恐怖指数と呼ばれる変動率)も高値に張り付き、心理的にリスク敏感な地合いが続いています。
一般的に、投資家がリスクオフを選好する中では、為替相場は円高ドル高基調であることが多いのですが、昨日までドル円相場は108円でサポートされて不思議な位静かな動きが続いていました。不思議な静けさの後には何か来るもので、日本の連休明けを襲ったのがトランプ大統領の通商問題への言及。これで一気にドル安・円高に動きました。
元々、トランプ政権の公約の中にはアメリカ第一主義、通商問題もアメリカ優位に、という種類の公約がありますので、粛々と公約に手をつけてきている感があります。
スイス・ダボス会議でのムニューチン財務長官「ドル安政策を望む」発言では、本音をぽろっと口に出し、直後フォローして発言のインパクトを緩和した経緯もありました。
このあたりは、分かっていたことではありますが、「対抗措置検討」という武器を見せたことによる材料面への反応、またタイミング的に中国の旧正月休みを前にしたポジション手仕舞いでの需給要因もあり、昨日から今日にかけての円高、ドル安、株安に繋がったと思われます。
加えて、日銀総裁には黒田氏続投という先週出た報が、まだ正式に決まってないとの首相発言もあり、こちらも軽微ながら、円高に繋がったとも見られます。
このところ、しっかりサポートされていた108円が破られたことで下方への圧力が働きやすくなってくると思われます。昨年の北ミサイル発射ショック時の107.30水準というサポートのキープも気になります。
おりしも時期的に3月決算が目前。諸々の需給により乱高下になりやすいというのもあると思います。どちらにしても、ドルの上値の重さは当分続くものと思います。
2月に入ってからの動きは、米国のインフレ懸念が賃金上昇の加速という材料がきっかけになったわけですが、それが物価上昇にどう影響しているのかを見る上で大事な指標、消費者物価指数の今年1月分が今晩2月14日日本時間夜に発表になります。数値次第では、債券利回りの更なる上昇となる可能性があり、変動率も高まるものと思います。
10年米国債の現在の水準は2.8%台前半ですが、すぐ近くまで来た3%という大台がヒットされるのかどうかが注目されます。この3%は大きな抵抗線ですので、ヒットしたとしても簡単に定着していく水準ではないと思います。ただ、債券相場の変動率も現在高く、神経質な展開が続いています。
好調と言われるアメリカ経済ですが、長期金利が3%を上回ってくると株式市場はネガティブ反応するのではないかと思います。
年初来の主要通貨の対ドル相場は、韓国ウオンとカナダ・ドルを除いて、上昇(ドル安)の動きでした。
ドルの相対的価値を示すドル指数は1月中には88.43安値をつけ、先週対欧州通貨を中心にドルがやや戻す場面があり、90台乗せもありましたが、昨日からのドル安の動きにより90を割ってきました。
昨年来、為替相場と株式相場の相関性は薄れてきていましたが、昨日からの動きで相関度はぴくっと上がってきています。
このところのリスクオフの展開は、年末年初にかけて高速アップした株式市場の単なる調整なのか、潮目の変化なのか、等々さまざまな見方が聞かれます。
昨年来2月2日まで、平均11という異様に低位安定していたVIX(恐怖指数とも言われる変動率指数)が2月5日以来高止まり20~50で上下しながら推移(直近26)しているのを見ると、まだまだ混乱は続く可能性が高いのではないかと思います。バーゲンと思えば出向くのもありかと思いますが、しばらく慎重に見ていく時ではないかと思っています。
最後に、欧州通貨についてです。
昨年来、上昇(ドル安通貨高)してきた欧州通貨は、ユーロでいえば1.25台、ポンドも一時1.43台までタッチした後、ここ1週間程のスピード調整を経て、ドル安の流れで再び上昇しました。ユーロでは、対ドル1.22、ポンドでは1.38水準は底堅いサポートとして働き、両通貨とも上昇(ドル安)トレンドに戻るものとみています。
株式市場の激しい動きの傍らで、比較的静かだった為替市場にも春の嵐が吹き始めたのかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※2月14日東京時間17時執筆
本号の情報は2月14日の東京市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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