産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
4月号連載記事
■全員一致は否決せよ。
●ユダヤの教え
私が子供のころに強い影響を受けた本の中に「日本人とユダヤ人」(イザヤ ベンダサン著・山本書店)があります。実のところ、イザヤ・ベンダサンというのは、山本書店店主である山本七平氏のペンネームのようなのですが、それはさておき、まだ狭い世界で生きていた私に、広い世界があることを教えてくれた本です。
角川書店から復刻版が文庫で出ているようですので、詳しくは是非原著をお読みいただければと思います。
さて、日本的な考えや、日本の偏った考え方の(自称)知識人やマスコミを通しての「海外」しか知らない中学生であった私に、数々の影響を与えた教えの中で最も衝撃的であったのは、「全員一致は否決せよ」です。
「全員一致のどこがいけないの?」と普通は考えるでしょうし、私も当時はそう思っていました。ただ、理論的にはうまく説明できないけれども、直感的に「正しいような気がする」という感覚があり、長い間この教えを時々思い出しては「何とか筋道を立ててこの教えの正しさを説明できないものだろうか?」と思いあぐねていました。
●アルフレッド・スローンの教え
社会人になってしばらくして、ドラッカーを読み始めたとき、その著書の中でユダヤの教えと同じ「全員一致は否決せよ」と述べられていることには驚きました。しかも、その中で全員一致を否決しなければならない理由が具体的明確に述べられているのです。
彼は、全員一致を否決しなければならい理由は、なぜ全員一致になるのかを次のように具体的に考えればすぐにわかるといいます。
1)参加者に外部・内部の圧力がかかっている=共産主義国家・独裁主義国家
では、指導者や党に反対すると命の危険があるので、物事は「全員一致」
でスムーズに運びます。ただ、その指導者・党の判断が正しいことが保証
されているわけではありません。社長が独裁的な企業の役員会、部長が部
下から恐れられている部署の会議でも同じような結果になるでしょう。
2)会議の参加者が真剣に考えていない=多数意見に付和雷同するのはとても
簡単ですし、多数派から快く思われます。逆に少数意見を述べるためには、
多数派からの反論に耐えることができるような「筋道」をしっかり考えな
ければなりませんし、会議の参加者の多数派がこちらを凝視する中で異論
を述べるのは勇気のいることです。
つまり、ドラッカーは、全員一致になるのは「誰かから脅されているとき」か、「真剣に考えていないとき」だけだから、「全員一致の意見は採用すべきでは無いと主張しているのです。
そして、「全員一致」には別の弱点があります。それは、「一つの意見しかなければ代替案(予備・保険)が無い」ということです。
全員一致の案を実行しても100%成功するわけではありません。むしろ、1)や2)の環境下で決まった案であれば、失敗する可能性が高いはずです。その時に、全員一致の案しかなければ万事休す。次の展開ができません。
それに対して、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をすれば、どのような失敗をするのかの見通しも立ちますし、失敗したときの対案も自動的に準備されることになります。
続きは、産業新潮
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4月号をご参照ください。
(大原浩)
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