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ファンドマネジャー、株を語る(5)

2017/02/13 16:52 投稿

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■「ファンドマネジャー、株を語る」執筆のきっかけ


現役ファンドマネジャーが株式投資について語る日々雑感です。
個別株の売り買いの推奨はありません。
それどころか、個別株についての言及はしません。

それでも、わたしは、株式投資が持つ本来の社会的意義については、
十分に伝えることができると思っています。

そして、投資のプロセスそのものが、投資家自身を幸福へ導く道標になると考えています。


わたし自身がそうでした。
投資を通して、世の中の仕組みがわかるようになりました。

投資により、経済的に恵まれるだけではなく、
投資というプロセスを通して、人としても成長できたように思うのです。


つまり、投資家とは、お金だけを企業に預けているのではありません。

投資とは、投資家自身の膨大な時間も高度な専門性も貴重な経験も
失敗から学んだ知恵もすべてを投資分析に費やすことです。

そして、その投資行為は、人を成長させます。


投資は以下の変化をもたらします。

単なる消費者から創造者に。
偏見やバイアスに支配される偏狭さを克服し、
普遍的で自由な思想を身につけることができます。
大多数の中に埋もれる受動的な存在から、
他者を導く能動的なリーダーへと変貌することができます。

ゼロサム的な思考や矛盾に悩む人は、矛盾を克服し、問題を解決し、
矛盾点を昇華する術を身につけることができます。


短期で利己的な人が、長期で意味のあることを成す人になることができます。
すぐに結果を出そうとする拙速な人も、
思慮深く、ステップ・バイ・ステップで成果を出すようになります。

たとえお金がなくても、株について考えることが、
豊かで幸せな人生を生きることに繋がっていくのです。

多少、大げさに響くかもしれませんが。



さて、わたしですが、外資系機関投資家(日本株アナリスト、日本株ファンドマネジャー)としての職歴はおよそ20年になります。

15年前に自らの運用手法を書籍「インベストメント」(北星堂書店2001年)にしましたが、多少、取材手法のみに偏った感がありました。

ファンドマネジャーが株を語ることは、
すなわち、職業について語ることでもあります。

株式ファンドマネジャーという仕事はこういう仕事である、という内容でもあります。

また、アナリストやファンドマネジャーを育成するのためのガチのガイドブックともいえるでしょう。

株式投資のもつ、社会的な価値が、あまり意識されない状況となっていることも執筆の動機のひとつです。

個別株の推奨はありませんし、具体的な運用戦略は紹介しません。

株式投資に関するノウハウは千差万別であり、どんな個別の戦略であっても、
メリットとデメリットがあるからです。

みなさんが「株式投資」についての考えを深めるための一助となるように、
株についての必要最低限の事柄を整理しました。



■ファンドマネジャー、株を語る  0005


☆☆インターネット調査の限界について


法人には寿命がありません。

グローバル企業が永遠に配当を払うのであれば、
その将来の累計金額はどれだけになるでしょうか。

配当の累計は、投資金額を相当上回ることは間違いないのですから、
長期存続できる企業に投資をするのが有利にはならないだろうか。

そんな話をしたと思います。


人間の将来は、個としての生命体としてみれば、数十年の寿命しかありません。
ですから、今日、明日のキャピタルゲイン以外に興味はないという投資家も多い、とも指摘しました。

投資家の大多数が短期志向が強いので、
勝つための戦略として長期志向で勝負をする、
というのがわたしの現時点での戦略です。


以下、私見です。


今日、明日の株価に一喜一憂することに、あまり意味はありません。

株価変動について、いくらどんなに考えても、そのことで、
何かを得ることはできないからです。

そうではなく、社会に対する企業の貢献を考えてみるとどうでしょうか。

ある会社が、なぜ、ある事業に対して、どうして、その事業に多額の投資をしたのか、を考えてみましょう。

あるいは、企業の歴史を振り返る、
企業と社会との関わりがはっきりとしてきます。
企業の果たした過去の行為がはっきりと見えてきます。

何事も、はっきりと見ることが肝心でしょう。


☆☆良い目を持つことが大切だと以前に書きました。
  良い目とは客観的観察



過去は客観的に観察できる。動かないから。
一方で、将来を見ることは難しい。
ならば、過去を観察し、将来のためのヒントを得る。


いま、大切なところに差しかかりました。

それは、「過去ははっきりと見える」という事実です。
ですが、過去の情報は普通はありません。
過去の情報は急速に失われるからです。


インターネットは投資家にとって、情報収集のためにの大切な手段です。
ですが、ネットには限界もあることを知ってください。

インターネットでは情報は一見、あふれかえっているように見えます。
でも、それらは、何かを今販売したい人たちが発信する情報が主体です。
500年前にどんな歌が流行ったか、ネットではわかりません。


☆☆情報はつぶやきでなんでも手に入るという誤解


例として、具体的に、
トヨタのクラウンをとりあげます。

現モデルについては、相当な情報がとれます。

だが、クラウンを20年前、30年前と、段階的に振り返り、
どこがどう進化したのかを分析する我々のような仕事にとっては、
インターネットでの情報収集は限界がありますね。

過去をよく眺めることで、未来に思いがはせられます。
トヨタはそのHPに過去の製品群や歴史資料館などで
昔の車種を現物で展示しています。

アナリストにとって、社史や博物館巡りや古書は大切な資料です。


少し大域的な話をします。

投資すべき会社の過去を整理して、未来に思いをはせましょう。

投資家が、自分の投じた資金が、未来へと続く素晴らしいサービスを提供する
会社に再投資され、人類の持続可能な社会の建設に一翼を担います。

株式投資の資金は人類の未来を作る原資ともといえるのです。


読者へ:

過去ははっきり見えるというが、インターネットで過去のことを調べることは
難しいものです。
たとえば、工作機械メーカーを選び、その工作機械のひとつを選び、
過去、その製品がどのように性能を向上させてきたでしょうか。
どうやって調べますか。

その値段や性能や形状などについて、年表形式でつくることは可能ですか。
どのようにして、製品の進化の歴史を書き残すべきでしょうか。



☆☆自らの言葉で語ることから始める


ネットは便利です。
もちろん、SNSもなんでもどんな情報も得られると思っている方も
沢山いらっしゃるでしょう。

あるいは、他者の評価を頼りにする人は、
「この会社はバフェットが買ったから買いだ」とか、
「このベンチャーはインテルが出資したから本物だ」
と他者の評価に依ってしまいます。

投資家は、それではダメです。

よくわかっている友人に聞いたら、この株がいいらしいぞ、
という態度では儲からないのです。

どんなに拙くとも、自分の言葉で世の中を表現する。
自分の分析で商品を評価する。
それが長い目で見れば、最短の「億の近道」です。


☆☆実際の株価と理論株価(企業実態)とを比べる。株と株とは比べない。


また、企業を評価するときに、他の企業と比べるのではなくて、
企業の業績とその企業の株価を比べるようにしてください。

トヨタの株は、トヨタの企業価値(業績や財務やそれらの見通し)と比べるものです。
トヨタの株価指標と日産の株価指標とを比べる人が多いのが非常に残念です。

株価指標というものは、会社同士を比べるものではありません。
企業の業績と株価との関係を整理するもので、
トヨタの業績と比べた株価が安ければ、
日産とは無関係にトヨタは買いとなります。


少なくとも、そういう態度で企業の株価を見るのが機関投資家の態度です。


日本株ファンドマネジャー
山本 潤


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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