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貯蓄から投資への欺瞞 その2

2016/06/10 15:17 投稿

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初めに、ここ1年近くの停滞感を踏まえれば消費増税の延期については個人的には止むを得ないかと感じるものの、社会保障費や行政予算などの見直し議論を放置したまま、あからさまに参院選や数年後の選挙対策まで考慮して2年半の延期を決めたことに落胆しました。
 サミットを選挙目当てのばら撒きに利用するなども本当にみっともない。野党も含め何と言う無策、無責任なことか。呆れるばかりです。

 これほど強い政権時にさえ若干の増税や社会保障費の見直しも出来ず、政局が全てに優先し、国家の将来を左右する財政政策までが決められてしまう(言葉では言い表せない)空恐ろしさを感じます。


 振り返れば、1990年に166兆円(当時のGDPの30%)しかなかった国債の発行残高が2000年には倍となる330兆円に膨らみ、そして「失われ た10年」と言われながら何の手も打たず、その後の15年間で560兆円も積み上げました。地方公債なども含めれば残高は1,000兆円を軽く突破してお り、いよいよプライマリーバランスの将来目標すら見えなくなりました。


 ただでさえ少子高齢化(=人口減少)などで将来が危ぶまれているのに、既得権が跋扈することで効果的な構造改革も歳出削減もできず、社会保障費も毎年数兆円単位で増えているにも関わらず僅かな薬価引き下げすら族議員の抵抗で出来ない。

 都知事の公金コソ泥事件の背景も利権行政と昼行燈議会の癒着構造にあります。
 結果として政局ばかりの先送り政治。このままでこの国の財政は耐えられるのか?日本の行く末はもう誰にも見通せない次元に進んでしまったと感じます。


 さて、ここ数年間において家計が持つ金融資産の伸びよりも企業の余剰資金の増加が著しくなっています。本来は家計が貯蓄超過になり、企業こそが「貯蓄から投資へ」を実行すべき主体であるはずなのに、そうならない。
 今や企業側の資金余剰が顕著となることで銀行の預貸率は継続して悪化し、いよいよ銀行も大きな転換期に入りつつあります。


 コーポレートガバナンス・コードが示されて早や1年が過ぎますが、前向きに実践しているのは一握りの優良企業に留まります。

「肩書きが良い割に、経営に口出ししない社外役員候補を探している」

「付き合いのある会社に頼んで、OBにきてもらった」

と言った、ガバナンス態勢を形だけ整えようとする会社が沢山あります(苦笑)。


 過去からのBSや株主還元策を調べれば大凡特定できますが、特徴としては…

1)まずは収益率の低い会社、または赤字会社
2)役員の順送り人事が定着し、消去法的に選任された昼行燈社長が続く会社
3)最も大事な若手~中堅社員の離職率が高い会社

…どれもが古い企業体質を維持している会社と言い替えられます。


 上場企業が投資もせず金を持て余しているなら株主に還元すべきであり、還元しないで放置している企業なら、強制的な還元への一手法として、買収されるな どで結果的に株主還元に繋がれば良いはずです。還元せざるを得ない仕組みを導入しないままに個人資金を都合よく誘導しようとするから可笑しなことになる訳 です。


 貯蓄から投資へ舵を切る条件として、投資がそのリスクテイクに見合うリターンを得られる建付けになっていなければなりません。株式市場がゼロサム市場では無いことを市場関係者は分かっているはずで、まずは投資家が儲かる公平な仕組みとせねば裾野は広がりません。
 中央銀行が買い上げるようなカンフル剤では無く、市場を整えることこそが急がば回れでもあります。


 今のところ我々にできることは昼行燈経営者を見抜くことなのでしょう。
 過去の業績や決算書類、企業行動を研究し、投資家メリットを打ち出す意思を持つ、投資家を向いた会社(経営陣)を探す仕事でしょうか。
 逆の例として、意味も無く買収防衛策を導入している企業や、実績も無いのに選ばれた社長が居座る会社などは鼻から投資対象とはなりませんね。


 アベノミクス、異次元緩和、コーポレートガバナンス・・・昨年年初頃までは投資家の誰もが期待した、これらの目新しい言葉。余りの変化の遅さに色褪せています。

 企業も国も昼行燈を組織トップに抱えていては衰退するのも止むを得ません。


 ところで先日は、高齢の母親の預貯金を調べていたら証券会社の言いなりに投資信託を売買し損失を被っていたことが分かった、というお話を聞きました。

 息子さんが調べたところ、アクティブ型の投資信託ばかりで3~6か月の頻度で売買が繰り返され損失が膨らんでいたことが分かったとのこと。結局は仕事も忙しいし訴えるのも大変なので全て解約して済ませた・・・と言うものでした。
 明らかな過当売買なのですが詳しく無いため対処を諦めてしまったと言う、ありがちな話です。


 一般の方は証券トラブルへの対処方法など詳しくないのでしょうけど、詳しくなくても万が一の際の対処法として、ご両親に対して、以下の事はしておいてもらうよう文書にしてお願いしておくのが良いと思います。

1)渡された販売用資料とともに、年に2回は送られてくる「残高報告書」を必ず手許に残しておくこと
2)どのような経緯と判断によってその金融商品を買ったのかなど記録をしておくこと
 ・約定の数日後に送られてくる報告書に書き留めておくだけで良いです。
 ・強く勧められ儲かりそうに見えたから。
 ・説明を受けたが良く判らなかった、不明な点があった、などです。

 金融商品販売業者(銀行や証券など)は法令等により投資家がちゃんと理解できないものを売ってはいけないとされています。つまり紛争の際には、顧客が十 分に理解し顧客自身の判断で購入したということを業者側が客観的に説明しなければならず、例えば、ある高齢者が理解出来そうもない難しい金融商品で損をし た場合には、顧客の判断であっても業者側に責任があるという事です。

 このような時には、裁判に訴えるのが費用や時間の制約があり大変と言う方の為に設置されたFINMAC「証券・金融商品あっせん相談センター」へ、上記1)~2)などの証憑を持って相談に行くのが手っ取り早いです。

 「専業主婦で80歳にもなるうちの親が、為替やデリバティブを組み込んだ商品を理解したり短期で売買するなど無理!」…と。
 もちろん証憑類が足りないと感じてもFINMACに相談して請求すれば良いだけで、大した手間ではありません。

 上記のようなケースでは損失額の20~60%くらいを取り返せる可能性があります。


(街のコンサルタント)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)

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