岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/09/19
今日は、2019/09/01配信の岡田斗司夫ゼミ「ブラタモリ手法でラピュタ世界を語る〜『天空の城ラピュタ』完全講座ついに第3弾!」からハイライトをお届けします。
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ラピュタ遺跡その2です。完全再現、2500年前の空中帝国ラピュタという話を、ちょっとしてみようと思います。
映画の中でムスカがシータに言うんですけど、ラピュタが捨てられたのは700年前です。シータやムスカの祖先たちは、700年前にラピュタを捨てて地上で暮らし始めました。その後、無人になったラピュタは、誰にも知られずに雲の中をさまよっていたんですね。
では、ラピュタというのは、どんな都市なのか? これを、ブラタモリ風にやってみようと思います。
さっきも話したように、これがラピュタ自体の模型なんですけど。
(模型を見せる)
【画像】ラピュタ模型
700年前に滅んだ空中国家ラピュタなんですけど。このラピュタの大きさって、ほとんどどこにも書いてないんですよ。
ジブリ作品って、たぶん数字が稼げるから、検証サイトはいっぱいあるんですけど、それでも、ラピュタ自体のサイズを書いてる人はほとんどいないんですね。
ありがたいことに、映画の中にわかりやすいシーンがあります。それが、これなんですけど。
(パネルを見せる)
【画像】ゴリアテとラピュタ © 1986 Studio Ghibli
ちょっと暗くてわかりにくいんですけど、これは空中戦艦ゴリアテという、軍が持っている最新型の空中戦艦です。それがラピュタに横付けしているシーンがあるんです。
ゴリアテの全長は312mという設定が出てるから、これを見ると、ラピュタの直径って500mくらいに見えるんですよ。
しかし、もし、ラピュタのサイズが500mだとすると、他のシーンと矛盾するんですよね。
その矛盾というのは何かというと、シータとパズーがラピュタに上陸して「あ、池がある」と言って覗き込んて、「うわー」とビックリするシーンなんですけど。なぜ、ビックリするのかというと、実は、それは池ではなかったからなんです。
(パネルを見せる)
【画像】パズーと池 © 1986 Studio Ghibli
上から見て行ってください。ここにシータとパズーが小さくいるんですけども。池かと思った狭い隙間から下を覗いて見ると、ずーっと下まで続いていて、古代の石造りの都市が水の中に沈んでいて、その中になんか不思議な深海魚みたいなのが泳いでいるという、すごい壮大なパノラマの風景があったんですね。
【画像】池の中 © 1986 Studio Ghibli
こんな超巨大なビル群が水の中に沈んでいた。つまり、この水深は、どう見ても100m以上はあるんです。これ、果てしなく底の方まであるんですけど。
ということは、もしラピュタの直径が500mだとすると、そんなラピュタの池の中に水深100m以上あるような水中都市というのはどうやっても入らないんですよ。
じゃあ、なぜ、こんなゴリアテのシーンが出ているのかというと、これはもう簡単で、実は、このシーンではゴリアテをわざと大きく描いているんですね。
小さく描いちゃうと「ゴリアテが来た!」っていう恐怖感が出ないんですよ。「ゴリアテに横付けされてしまった! 軍に見つかってしまった!」という緊迫感や絶望感を出すために、わざと絵で嘘をついているわけですね。だから、大きく描いてるんですよ。
・・・
実は、今回用意したこのラピュタの模型というのは、ペーパートイなんですね。超精密にレーザーカットされた紙を重ねて作る模型なんですけど。
これを企画制作している「さんけい」っていう会社の担当者の人と、以前、偶然に話をしたことがあるんですね。
本当に偶然なんですよ。大阪に、日本橋という、秋葉原に次ぐ大オタクタウンというのがあって。その日本橋のど真ん中に、ジョーシンスーパーキッズランドというビルがあるんです。
だいたい5階建てか6階建てくらいで、全てのフロアがオモチャや模型で埋まっているという、もう夢のようなところなんですけど。僕、日本中にいろんなオモチャ屋があるんですけど、たぶん、日本で一番楽しいのは、このジョーシンスーパーキッズランドじゃないかと思ってるんですけども。
そのジョーシンスーパーキッズランドに行った時に、偶然、さんけいさんの「みにちゅあーとキット」の、かなり精密な完成品がいっぱい飾ってあったんですね。
「うわ、すごい!」と思って見てたら、それぞれに時間が書いてあるんですよ。このラピュタの模型だったら「7時間」って書いてあって。さっきの軽便鉄道の模型だったら、だいたい「7時間」とか「8時間」くらいなんですよ。
ところが、それよりちょっと大きい、キキとジジの家とかになってくると、「13時間」とか「17時間」になってきて、『千と千尋』に出てくる湯屋は「170時間」って書いてあるんですよ。もう、目眩がして。170時間(笑)。
『千と千尋』に関しては、湯屋だけでなくて、湯屋の向こうにある時計台とか、あとは街の全てがペーパートイで出てるんですよ。で、それぞれが全部「23時間」とか「40時間」とか書いてあって。
担当者の方から「私、担当なんです」って言われたので、「これは、素人だったらこれくらいかかるけど、慣れてきたらもっと早く作れるんですよね?」って聞いたら、「いえ、かなり慣れている人で170時間です」って言われて。もう本当に、頭がクラクラしたんですけど(笑)。
なんでこんな時間が掛かるのかというと、この株式会社さんけいって、もともとはオモチャの会社ではなくて、建築模型の会社なんですね。
建築模型の会社が「ジブリの建物って面白い」ということで、わざわざジブリに対して「あなたの映画の中に出てくるものを精密な建築模型として再現したい」と企画を持ちかけたんです。
ジブリはジブリで「いや、実は宮崎駿って、映画の中でいっぱい嘘をついてます。正確に作ろうとしても、困ったことが出ますよ?」と言ったんですけど、さんけいさんの方は「いや、それは映画のセットとしては当たり前ですから、そこら辺は、ちょっと話し合って作っていきましょう」と。
ということで、ジブリから資料をもらって「ちょっとここに矛盾があります」と、ジブリ側に質問状を出して、そうして出来たのがこのシリーズなんですね。
なので、実はかなり正確なんですよ。いろんな嘘や矛盾はあるんですけども、それを現実的な部分にまで落とし込んで作っているんです。
何が言いたいかというと、これは、縮尺模型としてかなり正確なんです。
例えば、このラピュタ、真上から見ると、ラピュタの中心にあると思っていたガラスドームが、中心からややズレた位置にあるのがわかるんですね。
(模型を見せる)
【画像】ラピュタ模型
こういうのも、やっぱり模型を作ってみないとわかんないんですよ。
・・・
さて、ここに小さい丸い部分ありますよね? この緑の部分。
(模型の一部を指す)
【画像】ラピュタ模型のテラス
この小さい丸い部分が、今回のラピュタのサイズの算出の全ての基礎になります。
この丸い部分は何かというと、パズーとシータが乗っている凧が不時着した、あのテラスなんですね。
というわけで、ここからはブラタモリ形式で「じゃあ、ラピュタのサイズはどれくらいなのか?」というのを測ってみようと思います。
全ての基礎はこのカットです。
(パネルを見せる)
【画像】ラピュタのテラスと凧 © 1986 Studio Ghibli
もう数字を色々と書き込んでいるんですけども。墜落した凧の翼の幅に注目してみましょう。
これは翼がひん曲がっているんですけど、実は翼が折れているわけではないんですね。というのは、最後にパズーとシータが乗る時に、パズーが「ワイヤーを張り直せは大丈夫だ」と言ってるので、曲がっているだけで、折れてはいないんです。
この凧のサイズがわかれば、このテラスの直径が、ほぼわかるようになります。
では、この凧のサイズはどれくらいか?
凧のサイズが一番ハッキリわかるのが、このカットなんですけど。
(パネルを見せる)
【画像】アンリとパズー © 1986 Studio Ghibli
これは「タイガーモス号の上で、ドーラ家の3番目の弟のアンリがしゃがんでいるところに、パズーが梯子を登って来る」というシーンです。
このコックピットには、後にパズーとシータが2人で乗るんですけど。だいたい子供2人が身体をぴったりくっつけないと乗れないようなサイズです。
なので、この凧のコックピットの幅を、僕は100cm、1mだと考えました。自分でも、「ドーラ一家としては小柄なアンリが、しゃがんでこれくらいの幅になる感じってどれくらいかな?」と思ったら100cm、1mだと考えました。
このコックピットのサイズがわかると、後に翼を伸ばすシーンがあるので、コックピットと翼の比率から凧のサイズがわかります。
(パネルを見せる)
【画像】凧 © 1986 Studio Ghibli
この凧、翼長が、なんと12mもあります。かなり大きいんですよ。
翼長12mというのは日本海軍のゼロ式戦闘機とほぼ同じ大きさですね。零戦の翼長が11mだから、それよりちょっと大きいくらいなんですよ。
2人乗りで、パズーが操縦して、動力もない凧を飛ばすには、確かに翼長12mくらい必要なんですね。これくらいの翼の面積が必要。「さすが宮崎駿」って思いました。
僕ね、7mか8mくらいだと思ってたんですけど、でも、2人乗りで、最後、ゴンドアの辺までシータを送っていくとか、いろんなことを考えると、ちょっと苦しいなと思ってたんですけど。この12mというのは良いサイズだと思います。それをワイヤーで固定しているというのもにくいですね。
この12mがわかったことで、これで、クラッシュして翼がやや畳まれている状態の凧が落ちているテラスのサイズがほぼ特定できます。
(パネルを見せる)
【画像】凧のサイズ © 1986 Studio Ghibli
クラッシュしているので、この翼の幅を8mと仮定して、僕はテラスの直径を30mと計算しました。
これで、やっとラピュタ全体のサイズに取りかかれるわけです。
……すみません、こんな話でみんな大丈夫? 本当に、俺はすごい楽しいんだけど(笑)。
(パネルを見せる)
【画像】テラスのサイズ © 1986 Studio Ghibli
テラスが直径30mだとしたら、このテラスとラピュタ本体を繋ぐ橋の長さが、おそらく44m。意外なことに、テラスよりちょっと長いだけなんですね。
すると、ラピュタ全景が引きで見えるシーンがあって。
(パネルを見せる)
【画像】ラピュタの半径 © 1986 Studio Ghibli
この長さが40mだとすると、このラピュタの中心部からの半径が、ほぼ335mということがわかります。
ここの半径が335mとわかると、ラピュタ回廊まで、つまり一番外側までの半径は、テラスも通路のほぼ20倍というのがわかります。
つまり、ラピュタの半径は880m。ラピュタの直径は1760mというのがわかるわけですね。
直径1.7kmの構造物なんですよ。思ったよりデカいんですね。
では、そんなラピュタが東京上空に現れるとどれくらいのサイズになるのか?
(パネルを見せる)
【画像】ラピュタと東京
けしからんことに、皇居の真上に「日本人よ、降伏しなさい」と言ってラピュタが現れてしまった場合、皇居がほぼすっぽり入る大きさなんですね。かなり大きいんですよ。
ちょうど皇居と同じくらいのサイズで「これ、下手したらわざとかな?」と思ったんですけども。
実はこれ、大阪城の上に浮かべても、大阪城の本丸周辺と同じ大きさなんですね。
(パネルを見せる)
【画像】ラピュタと大阪城
つまり、デカい城を作ったら……もともと皇居も江戸城ですから。デカい城というのを作ったら、リアリティを持って考えると、だいたい直径1.7kmのラピュタくらいのサイズになるというのがわかります。
なんかね、この辺はわかりにくいので……いや、「わかりにくい」って、どうやってもわかりにくいんですけど。一応、新宿上空にも浮かべてみました。
(パネルを見せる)
【画像】ラピュタと新宿
新宿上空、アルタ前にラピュタが浮かんでいると、上の方は、もう大久保・新大久保の辺りになって、西の方は都庁まで、南の方は代々木を超えて新宿御苑が半分くらい隠れて、東の方は花園通りですから、ちょうどここら辺が吉本興業の本社がある辺りですね。新宿3丁目の辺りまでも覆ってしまうくらい巨大なのが、ラピュタのサイズです。
・・・
まあ、「ラピュタはやっぱりデカいよな」と思うんですけど。このラピュタは、実は本来のサイズではないんですよ。
さっきも話したように、ラピュタというのは裏側が崩れている。じゃあ、ここが復元されたら、ラピュタは本来の姿になるのかというと、そうじゃない。本来は、これよりももっと大きいんですね。
実際のラピュタというのは何かと言うと。
映画に出てくるラピュタというのは、パズーとシータが散々歩いていたんですけど、住人が生活していた感じのところが一箇所もないんですね。花壇があったり、木が生えてたり、お墓があったりとか、そればっかりなんですよ。
なぜかというと、このラピュタの一番上の部分というのは神殿なんですね。つまり、神様を奉るための場所。ギリシャで言うアクロポリスのパルテノン神殿みたいな神殿構造が、上の方にちょこんと乗っかってるだけなんです。
そして、その下の第1層と言われる、緑がいっぱいある芝生みたいな部分って、王様達の憩いの場、王族の住処でしかないんですね。なので、ラピュタって、これだけだったら、王族しかいられないんですよ。
じゃあ、実際のラピュタというのは、本来どんなものだったのか?
700年前、シータたちのご先祖がラピュタを捨てた時には、このサイズまで縮まっていたんですけども、その下には、さらに第2層に騎士たち戦士たちの住む城下町があって、第3層にはエデンの園と言われる巨大な湖と農園がある自給自足出来るような農園が広がっていて、第4層には一般のラピュタの住人たちが住んでいる、下の世界の人達が訪れることもできるような巨大な構造物がついていたわけですね。
この3層が、すでに失われているわけです。だから、どれくらい巨大だったかというと、これが本来のラピュタの姿です。
(パネルを見せる)
【画像】本来のラピュタ © 1986 Studio Ghibli
このイメージボードは、ラピュタの模型とほぼ同サイズになるように拡大しました。
つまり、この神殿構造と第1層の王様が住んでいるところがちょこんと乗っているだけで、ここが1.7kmなんですよ。この下に、これくらいデカいものが付いたまま空中に浮いてたのが、本来のラピュタだったんですね。
で、残っている第1層のみのラピュタのサイズが、さっきも話したように直径1760m、1.7kmです。
じゃあ、本来のラピュタのサイズはどれくらいかというと、この模型を元に換算してみると、直径5.8km、高さに至っては3.7km。ほぼ富士山と同サイズです。
この巨大な世界をブラタモリをしてみるというのは……すみません。これは後半の方で考察していこうと思います。
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