岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/16
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7月16日(火) 20:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第16回」
ニコ生テキスト全文公開
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2019/07/02 マンガ・アニメ夜話 #14 「ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1」
- ホワイトベースに遠回りさせて、地球全部が戦争状態にあることを見せる
- 「弱者と強者」という避難民の構造とアムロの「やる気」
- 避難民についての補足
- ホワイトベース内のパワーバランスについて
- ジオンのガンダム分析とガルマの驚きの意味
- ガンダムの分析補足
ホワイトベースに遠回りさせて、地球全部が戦争状態にあることを見せる
おはようございます。岡田斗司夫です。
岡田斗司夫の機動戦士ガンダム講座、今日は第14回。「コアファイター脱出せよ」ということになってますけども。
……というか、おはようじゃないですね。もう夜の8時だわ。はいはい、すみません。
今日はね、もう1日家の中にいたもんで、季節感がわからなくなって来て。
1日家の中にいたんじゃないですね。正確に言うと、夕方に一度、睡眠呼吸科に行って、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)の機械を取り替えたんですけど。
これまではPhilipsだった機械を、TEIJINの機械に取り替えるというのをやってたんですけども。
そんなこんなで7月2日の火曜日です。
最初は、福井県のハンドルネームこうこうさんのお便りからいきましょう。
岡田さん、こんばんは。ガンダム講座を見て疑問がわきました。
「ホワイトベースの大気圏突入は、シャアによって妨害され、ジオン軍が支配する北米カリフォルニア付近に降下した」とのことですが、ロサンゼルスからブラジル・サンパウロは1万キロですので、そのまま南下して南米大陸に行けばいいと思うのです。
なぜ、わざわざ西回りで地球を一周4万キロの旅をしてジャブローに行ったのでしょうか?
これ、なぜかと言うと。ここに簡単な世界地図を用意したんですけど。
(世界地図を使って図説する)
ホワイトベースは、南米のジャブロー、この辺に行きたいわけですよ。なのに、シャアに妨害されて北米カリフォルニアに着いてしまった。
「だったら、そこから真っ直ぐ南に行きゃあいいじゃないか。なんで真っ直ぐ行かずに、こんなふうに日本の鳥取砂丘に行って、その後、モンゴルを突っ切って、黒海付近のオデッサに行って、イギリスのベルファストに行く、みたいに、がーっと行ったのか?」ということなんですけど。
これ、まあ簡単に言うと、南米の辺りというのは、ジオンの防衛線というのがメチャクチャ堅いからですね。
連邦軍の最大の主力が残っているジャブローを包囲するためのジオンの包囲戦力があるので、ホワイトベースとしては、例えば「一旦、太平洋に出て、東からジャブローに入る」というコースであろうとなんだろうと、難攻不落で通れない。
そういう設定上の理由があります。
この設定上の理由以外には、『機動戦士ガンダム』って、実は、高畑勲と宮崎駿が作った『母をたずねて三千里』をモデルにしているんですね。
『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』の時に、富野由悠季監督は絵コンテをやってたんですけど、高畑勲から散々ダメを出された。「これではダメだ。これではリアリティがない」と言われたんです。まあ、『赤毛のアン』もそうなんですけど。
そうやって、高畑勲に散々鍛えられた富野由悠季が、「じゃあ、俺が作れるものは何なんだろう?」と考えた時に、モデルに選んだのが『母をたずねて』なんです。
『母をたずねて三千里』って、もともと原作の小説は、確かね3、40ページくらいしかない、かなり短い話なんですよ。
それを、1年間のドラマにした高畑勲の手腕というのに、富野由悠季はものすごく感動して、「ああ、そうなのか! これがドラマ作りというものなのか!」というのがわかったわけですね。
主人公の少年に世界中を旅させることによって、「戦争状態というのは何か?」ということを見せる。
例えば、中盤の砂漠地帯での戦いとか、ベルファストという軍港、あとはジャブローという南米。こういうふうなところへアムロを行かせることによって、地球全部が戦争状態にあるということを見せる。
それも、「船の上から眺めているだけ」ではなく、時々、下に降りて、土地の人と混ざることによって、いろんな経験をしていく。
アムロがガンダムを盗んで脱走した時の、たまたま会った砂漠のお爺さんとの「水、ありませんか?」みたいな会話って、僕らは単なる繋ぎのシーンとして見てるんですけども。そうではなくて、あれは本当に「どうやったら、地球全体が戦争状態にあるという極限状態を見せられるのか?」という、富野由悠季なりの工夫なんですね。
あとは、「この『母をたずねて三千里』を、俺もちょっとやってみたい」というか。「アムロ・レイという少年の目線を通じて、地球1周をさせてみたい」という、そういう野望が混ざっているんだということを、ちょっと覚えておいていただければありがたいです。
すみません、面白いお便りを頂いたので、こうこうさんには6月のステッカーを1枚差し上げます。
【画像】ステッカー では、今回の『コアファイター脱出せよ』という話。
コアファイターというのは、ガンダムのお腹の中に入っているカプセルの部分が広がって、飛行機の形になったものです。
(模型を見せる)
これ、35分の1のスケールだから、かなり大きいサイズで作ってあります。
窓も、このように、OPの「まだ怒りに燃える~♪」という時にアムロ君が乗り込むシーンのように、ちゃんと窓がせり出てくるという、なかなか良いプラモデルなんですけど。
これを使って弾道飛行をする話です。
弾道飛行というのは何かというと、「軌道速度に達しないロケット・ミサイルの飛行経路」だと思ってください。
この弾道飛行のモデルになっているのは、富野由悠季さんが子供の頃に憧れたX-15という、ロケット飛行機のコースだと思います。
X-15というのは、2分間の加速でだいたいマッハ5からマッハ6くらいの速度に達するんですけども。そのX-15と同じく「宇宙高度」と呼ばれる、だいたい高度10万メートルあたりをかすめて南米まで直行する予定でした。
つまり、普通の飛行機として、大気圏の中をビューっと飛んで行くのではなくて、本当にミサイルの飛び方なんですね。「最初に思いっきり加速して、石ころが飛んで行くみたいな形で、ジオンの制空権の遥か上を飛び越えて、南米ジャブローまで行っちゃおう」という計画だったんです。
「最初の30秒がツラいぞ」というふうに、アムロ君は連邦軍の士官に教えられます。
まあ、怪我をしているので、サラミスのカプセルと一緒に降りて来た士官なんでしょうけども。
「中央カタパルトを使ってコアファイターを発射させる」と言います。つまり、コアファイターの足のところに、橋桁みたいなやつをカチャッとくっつけちゃって、これを中央スチームバルブで思いっきりバーンと引っ張る。
それと同時に、コアファイターの後ろのブースターを思いっきり吹かすことによって、30秒間加速する。
たぶん、この加速によって、5G、重力の5倍の圧力が掛かるんじゃないか、と。つまり、毎秒50メートルの加速で行くんじゃないかと、僕は考えています。
毎秒50メートルということは、発射して1秒後は、まだ秒速50メートルなんですけど、7秒後には秒速350メートル、つまり音速に達します。そして、30秒後、加速の終わった時の終端速度は秒速1500メートルですから、マッハ4.5ですね。時速5000キロくらいだから、まあまあな速度なんですよ。
アムロ君は、これでジャブローまで行こうと考えます。
果たして、アムロのこの大胆な計画は成功するのか?
では、機動戦士ガンダム講座、第14回、「コアファイター脱出せよ」前半の解説をお楽しみください。
では、どうぞ!
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