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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『ひとの気持ちが聴こえたら』解説:アスペルガーを治療する脅威の技術TMS」

2019/06/26 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/06/26

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/06/09配信「「南キャン山ちゃん結婚」『なつぞら』『進撃の巨人』など時事ネタ+アスペルガーを天才にする脳治療レポート!」の内容をご紹介します。
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2019/06/09の内容一覧


「わかる」ようになった、アスペルガー症候群のジョン・ロビソン

 では、ここからは『ひとの気持ちが聴こえたら』という本のまとめを、ザッと話します。
 この本のプロローグから始めます。

 2008年4月、今から11年前、この本を書いたジョン・ロビソンは、ボストンのベス・イスラエル病院から会社に戻る途中、iPodで聞いてたソウルミュージックが、突然感じられるようになります。
 ロビソンは、自閉症患者、いわゆるアスペルガー症候群で、それまでは「悲しげな音楽」とか「楽しげな音楽」とか、そういう曲調しかわからなかったんです。
 他人が喧嘩してても「ああ、怒ってるんだな」くらいしかわからない。「なんで彼が怒っているのか」というのが、全く理解できなかったんですね。
 それまでの彼にとって、音楽というのは「技術を持ったテクニシャンが正確な音階やメロディーで操作する音の連続だ」というものだったんです。その曲のテーマなんていうのは考えたこともなければ、説明されたところで何を言ってるのかもよくわからなかった。
 でも、ロビソンは、運転している最中に、急に「これは誰かに向けたメッセージであって、自分の思いを伝えるために書かれ、歌われているものだ」とわかるようになったんです。

 ロビソンは、その数時間前に、ベス・イスラエル病院で、ある実験的な治療を受けていました。
 「そのおかげで、こんな変化が起きた」というプロローグから、この本は始まります。

 その数ヶ月前、ロビソンは自閉症のワークショップで講演していました。
 ロビソン自身は、1970年代はKISSというバンドと一緒にツアーに参加して、火を噴くギターというのを発明したりしてました。
 あとは、ピンク・フロイドがイギリスからアメリカに来た時には、ピンク・フロイド自身から直々に指名を受けて、コンサート音響の全てをセッティングしています。
 なぜかというと、このロビソンは音に関してはメチャクチャわかるからなんですね。音楽に関しては何ひとつわからないんですけど、音に関してはすごくよくわかる。
 なので、「ああ、ここのこの電源によって雑音が入ってるんだ」とか、「ああ、この接続ケーブルにこういうトラブルがあるんだ」ということが、音を聞くだけで全部わかるんですよ。
 だけど、音楽に関しては、何一つ良いとか悪いとか思わないんですね。

 今現在のロビソンは、そういった音響関係の仕事を辞めて、自動車の修理会社を経営しています。
 彼は、自分自身が「自閉症スペクトラム」とか、「アスペルガー症候群」というふうに呼ばれる病気だということが、40歳の時にわかった、と。
 ただ、「自分は周りの子供とは違う」というのは、彼にも子供の頃からわかっていたんです。だけど、「なぜ違うのか?」というのはわからなかった。
 この診断が下されたのは、この実験を受けるだいたい10年前の1997年、彼が40歳の時なんです。既に40歳になっていたロビソンには、もう、1人で生きていく方法がわかっていたので、「アスペルガー症候群だと言われて、逆に気持ちが楽になった」と言っています。
 なので、そういった自分の経験を、自閉症に関する本とか体験記としてまとめたものを本にしたら、それがわりとベストセラーになって、ワークショップに呼ばれるようになっていたんですね。

 そのワークショップでの体験です。
 彼がワークショップで講演を行うと、自閉症の子供を持つ親たちのほとんどは、ロビソンが自立し生活しているという話に勇気づけられる反面、「しかし、自分の子供達はダメだろう」と思い込んでいた。
 なぜかというと、「自分たちの自閉症の子供は、テレビを見てゲームするくらいしかできない」というふうに、まあ、親達は勝手にそういうふうに思い込んでいるわけですね。
 ロビソンは、一生懸命「いや、そんなことないよ! 自閉症というのは、そのおかげでこの部分が強くなるという才能でもあるんだから、それで食っていけるし、生きていけるよ! 俺を見てよ!」と言うんだけど、なかなか親たちには通じないんですね。

 ある時、そんなワークショップが終わると、地味な外見の娘が近づいてきて、「私はリンジー・オバーマン博士です」と自己紹介したんです。
 ロビソンは「本当かよ? 博士って言ってるけど、見た感じは地味な姉ちゃんじゃん」と思ってたんですけど。
 そのリンジー博士は、「自分はベス・イスラエル病院で、成人の自閉症患者相手に心の知能指数を上げる実験を行うプロジェクトに参加している」と語りました。
 彼女の話によると、TMS……「Transcranial Magnetic Stimulation(経頭蓋磁気刺激)」、つまり「頭蓋骨を経て磁気を通じて刺激を与える」という治療をTMSというんですけども。そんな新しい技術を使って脳の蓋層に電磁波の信号を送るという実験だそうなんですけども。
 ロビソンはその話を聞いて「ちょっと怖いな」と思ったんですけど、自分自身も、自閉症の研究に関する本も書いているくらいだから、その好奇心から研究への協力を約束しました。

 このロビソンは、20歳の頃、音響の仕事で成功して、いい暮らしというのをしてました。
 キャデラックに乗って、高級な服を着てたんですけども。しかし、その頃から友達がいなかったそうです。
 自分としては「ただ単に論理的なだけだ」と思っているんだけど、周りの人は自分のことを「思いやりがない」とか、「ロボットみたいだ」とか、「他人に無関心だ」といって笑ったり嫌ったりしてるんですね。

 音楽業界では、確かに成功したんですけど、自分ではその成功が実感できなかったんです。
 なぜなら、この成功というのは、例えば「パーティーに出て友達に取り囲まれること」なはずなのに、自分の周りには理解者がいないし、自分を好きだという人もいない。
 いつの間にか、ロビソンは周りから誤解されて、その誤解も訂正すればいいんだけど、誤解されていることもよくわからなくて、いつの間にか爪弾きにされて、音楽業界から追い出されてしまったんですね。

 その後は、ゲーム会社に入ってコンピューターゲームのデザインをやったり、あとは電子工学の仕事や、コンピューターのエンジニアもやったんですけど。
 上司から「君は他人の無能さをすぐに指摘する嫌なヤツだ」と、「協調性がない」というふうに言われて、クビになりました。
 ロビソンは、この時に「会社で成功するのは、社交性があって他人の感情に訴えるのが得意な、自分と逆のタイプだ」と気付き、そういった人間を「ズルいヤツ」というふうに呼んでいました。
 そういうズルいヤツばっかりが成功して、自分みたいな人間は、結局はクビになってしまうんですね。

 この本ね、本当に時系列がバラバラに書いてあるんですけども。
 ロビソンは、リンジー・オバーマン博士からの提案を受け入れて、いよいよ彼女の上司であり、この実験の主導者であるアルバロ・レオーネ博士と会うことになりました。

 アルバロ博士はTMSの働きをこんなふうに解説します。
 ファラデーの電磁誘導の実験というのを、まあ、誰でも中学か高校くらいでやったと思うんですけど、覚えてますか?
 電池を電線に繋いで、それをテスターに接続すると、、ああ「1.5ボルト」とかいうふうに表示されるじゃないですか。その電線に強力な磁石を近づけたり離したりすると、テスターの針が上下します。これが、TMSの原理である、電磁誘導です。
 脳の近くで、強力な電磁石を一定のリズムで動かすと……電磁石自体を動かさなくても、電位が発生する場所を動かすだけでいいんですけど。脳内で同じ現象が起こる。つまり、脳の中に流れている電位差というものが、微妙に動くのだと思ってください。
 極性やパターン次第で、脳の機能に影響を与え、働きを高めたり、逆に抑えたりもできるんだそうです。

 この実験を安全に行うためには、「働きを高めるために使わない」ことだそうです。
 脳は脳梁と言う、中央のバイバスみたいなもので、右脳と左脳が繋がっていて、右脳の働きを強めた時には、絶対に左脳の働きが制御されるという原理があるので、電磁波で一部分の脳の働きを上げちゃうと、意図せず別の部分が抑えられてしまって危険なんですね。
 なので「治したい部分の逆の部位を下げる」と。そうすることによって、自分が狙っている部位の活動を上げることができる。
 こんなふうに、博士は説明しました。

 興味があったロビソンは、過去のこのTMSを使った事例というのを調べてみました。
 すると、2003年のニューヨーク・タイムズに、すごく面白い記事がありました。「1日限りの名画家」という記事です。
 僕、これ、本当の記事を読みたくて、原文の英語のタイトルから検索したんですけど、ちょっと見つからなかったんですけども。
 ノンフィクション作家のローレンス・オズボーンという人が、オーストラリアでTMS実験に参加しました。彼は作家ですから、絵が全く描けないんですよ。本当に絵が描けないんですけども、TMS実験を受けた後では、絵が描けるようになったんですね。
 猫の絵というのを描いたんですけど、これがもう、プロ並みなんですよ。メッチャクチャ上手かったんですよね。
 しかし、その「プロのような絵が描ける」という能力は数時間で消えてしまった。
 そういうニューヨーク・タイムズの記事を読んで、ロビソンは、この実験にすごく将来性を感じます。

 実験の責任者であるアルバロ博士は、自閉症患者に対して、こういった仮説を持っていました。
 「自閉症患者が他人の感情がわからない原因は、言葉になっていない表情とか身振りとかの仕草が理解できないからだ」と。

 例えば、「ま、そーっすね。やってみましょーか(適当)」と、「まあ、そうですね。やってみましょうか!(真剣)」というのを、同じ言葉としてしか理解できないんですね。
 「いいんじゃないっすか? 素晴らしいと思いますよ(皮肉)」と、「いいじゃないですか! 素晴らしいですよ!(称賛)」の違いというのを、全く見分けられないんです。
 なので、トラブルが多発するんですね。

 自閉症患者というのが、他人の感情がわからないのは、言葉になっていないシグナルが理解できないから。
 これについて、「脳内にそのための配線がないからだ」と言う人もいれば、「配線が複雑になりすぎて乱れている」と言う人もいるんですけども。
 アルバロ博士は「他人の言葉以外の表情や仕草を理解するための配線、頭の中の回路自体は存在するけれど、機能していない」という仮説を持っていました。
 なので、「TMSを使えば、感情回路を活性化させ、この回路を生き返らせることができるはずだ」と考えたんです。
 そして、「その回路というのは、おそらく前頭葉のここにあるんじゃないか?」というふうに、研究書によって何箇所かのターゲットまで、すでに決まっていると説明しました。
 ロビソンも「これはいけるんじゃないか?」と思いました。

 しかし、家に帰って「実験に参加することにした」と家族に言うと、妻は反対します。
 実は、ロビソンには、奥さんがいたんですね。

 これがすごく良い組み合わせで、奥さんは抑鬱症、つまり鬱病の患者なんですね。いつも物事の悪い部分だけを見てる人なんですよ。
 しかし、自閉症の自分には、それが気にならない。
 むしろ、この奥さんは、物事の悪い部分をちゃんと見てくれるので、ロビソンが他の人と話している時にも「ちょっとあなた、あの人、あなたのそれを嫌がっているわよ」みたいなことを、他人より先に気付いて、ロビソンに言うことが出来るんです。
 なので、実はベストパートナーだったんですよ。

 奥さんは心配して反対するんですけど、だけど、ロビソン自身は自分を変えたかった。
 なぜかというと、ロビソンは自分のことを「お金は儲かっているんだけど、社会の敗北者だ」と思っていたからです。空気を読めず、無神経で、自分の傲慢さに気が付けないので、彼には友達もいないんですよね。
 もちろん、社会がロビソンを見る目というのは、それとは違っているんですよ。あくまでも彼は、成功している事業者で、自動車マニアで、家族思いで、本も売れたという、成功者だというふうに、周りは見ている。
 でも、実際のロビソンは、子供の頃からずっと「お前は変だ」と言われていて、それが自閉症という病気だということもわかった。しかし、「治療法がないから受け入れるしかない」と思っていた。
 この病気のおかげで、音響エンジニアとか、自動車修理の才能があることもわかっていた。しかし、社会の敗北者であることは耐えられない。やっぱりそういうことに関しては「受け入れるしかないけど、耐えられない」と思っていたんですね。
 なので、ロビソンは実験を受けることにしました。

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