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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『風立ちぬ』解説:失われた美しいものとして描かれた身分制」

2019/04/27 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/04/27

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/04/14配信「『風立ちぬ』作品内で宮崎駿がカミングアウト!「自分は、きれいな女の子がいたら必ずチラチラ見てしまうような男だ!」」の内容をご紹介します。
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2019/04/14の内容一覧


ファーストシーン・失われるもの

 では、ここから『風立ちぬ』の本編に入ります。
 これがファーストシーンです。
 実は、さっき話した「風立ちぬ」というタイトルと、ヴァレリーの詩を見せるだけで、35秒もとってるんですよね。もう本当にゆっくりしている。
 ここから1分くらい掛けて、ようやっと「朝もやの中に古い農家の屋敷が建っていて、そこの雨戸が開け放たれて、主人公の二郎が寝ている」という場面が描かれます。これも、やっぱり30秒くらい掛けて、ゆっくりゆっくり行くんですよね。

 一番最初のカットは、水田の上を流れる朝もや。ものすごく綺麗です。
 この映画の中では、いくつもの「失われるもの」が描かれます。その1つが、こういった日本の水耕農家。田んぼが作る田園風景ですね。これは失われるものとして描かれるんですね。
 この映画の中では、いろんなものが「これもダメだ、これもダメだ」って描かれるんすけど、その中でもすごく大きいものが、この田んぼが作る田園風景です。

 その次のカットでは、雨戸が開け放たれています。
 主人公である二郎の家について「素封家である」と絵コンテに指示が書いてあります。
 「素封家」というのは何かというと、「身分はないけれど、大金持ちな田舎の家」のことです。その村の庄屋さんとか、村長さんとか、国会議員さんとか、弁護士さんお医者さんというような立場のある家じゃないんだけど、お金はある。そういう地方の旧家のことを素封家と言ったんですね。
 絵コンテには、わざわざ「素封家であります」という指示があるんです。

 そして、次に映るのは、そんな家で眠っている13歳の少年、堀越二郎。
 ここまで、水田をたっぷり10秒見せて、雨戸の開いている家で5秒見せて、寝ている二郎に25秒という、すごくゆったりとして見せ方してるんですね。

 時は大正6年、1916年です。世界恐慌の3年前で、第1次世界大戦をまだやっている真っ最中の時代です。
 さっきのカットにあった開け放たれていた雨戸。これが何を意味しているかというと「使用人はもう起きている」ってことなんですね。
 僕らはスヤスヤと寝ている堀越二郎を見てるんですけども、雨戸が開いているというところで気が付かなきゃいけないのは「ということは、使用人だけは、その家の子供が起きるより前に起きて、次々と雨戸を開けている」ということなんですよ。

 さっき「この映画の中では失われたものを色々と語っている」と言ったんですけど、そのうちの1つは、この水田だらけの風景だけではなくて、それを可能にしている「使用人」とか「身分制」なんですね。
 「ある家に生まれたものは、それだけで身分が高い」と。堀越二郎が生まれた家は身分はなかったんだけど、少なくとも素封家であり、家は金持ちだった。
 でも、それよりもっと貧しい人達は、女中であったり、売られて行った先で働いていて、家の子供がぬくぬくと寝ている間に、朝早く起きて、雨戸を開ける仕事をしなければいけない。
 そういう身分制というのも、この映画の中で語られる「宮崎駿が失われることを惜しんでいる美しいもの」の1つなんですよ。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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