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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「1人1人の決意を演技で見せる!すごい映画『ドラえもん のび太の月面探査記』」

2019/03/25 07:00 投稿

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岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/03/25

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/03/17配信「国家のピンチにすぐ脱ぐプーチン大統領!月着陸を信じないロシア愛国ガイド・ボンさんの巻」の内容をご紹介します。
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2019/03/17の内容一覧


見るならどっち? 『キャプテン・マーベル』と『ドラえもん のび太の月面探査記』

 映画『ドラえもん のび太の月面探査記』なんだけど。たぶん、2019年の今、月面探査記をやるということは、完全に「アポロ着陸50週年」に当てた企画なんだけど。
 こっちはね、『キャプテン・マーベル』と、もう本当にまったく逆で、とにかく徹底的にお話にこだわっている。
 見た限り、シナリオにまったく矛盾がないし、あと、キャラクターの動き、「演技」というのかな? それがメチャクチャ素晴らしいんだよ。
 今回の『ドラえもん』は、セリフではなく動きで気持ちを伝えてるんだよね。

 まあ、『ドラえもん』映画の中盤によくあるシーンとして、一度、戦闘の場から日常に帰って来て、「それでも、僕たちはあそこに戻らなきゃいけない!」と決意して、もう一度、日常から抜け出すシーンがあるんだけど。
 今回の『月面探査記』では、それがセリフではなく、本当に行くかどうかは個々人の決心に任されている。

 ドラえもん達は、一度、家に帰るんだけど。
 のび太は、自分の部屋の中でパーカーを着るシーンが、すごくカッコいいんだよ。
 パーカー羽織って着る時に、手をカメラの方に向かってシュッと抜くんだけど。この袖の入れ方だけで、のび太の決意というのが伝わってくるというか。「あ! 演技でのび太の決意を説明してる!」って思って。
 しずかは、玄関を出るところで犬を抱きしめる。
 ジャイアンはね、それまで、そんな描写は見たことなかったんだけど、ジャイアンの家って駄菓子屋さんじゃん?(編注:正しくは雑貨店) その駄菓子屋さんを、夜中にこっそり抜け出すんだけど、シャッターを50センチくらい開けて、その間から抜け出てくるんだ。
 で、ちょっと空を見上げてから、もう一度、シャッターの中を見つめる。つまり「自分の日常」を振り返ってるんだよね。それを見つめて出ていく。

(中略)

 スネ夫は、橋の上で迷ってるんだよね。
 橋の上で、ずーっと本当に行こうかどうか迷ってて。スネ夫はやっぱり怖いから。
 そんな中、つい下を見ちゃうんだよね。下を見ると、橋の上だからさ、下が川で、川には月が映っている。月っていうのは、これから戦いに行かなきゃいけない場所なんだ。
 川の水面に写った月は、水面だから揺れてるんだよね。それを見たスネ夫は、フッと「あ、俺は月に行くかどうか、こんなに不安な気持ちだから、月も揺れてるんだ」というのに気がついて、上を見ると、月がパーンと浮いている。
 この「月の揺れ」というのをスネ夫の気持ちに重ねる演出が、すごく上手かったよね。

 この辺の、黙って動きだけで演技させるっていうのは、劇場版の『クレヨンしんちゃん ヘンダーランド』と同じなんだよね。
 『ヘンダーランド』っていうのは、シリーズ唯一のホラーモノで、僕も『モーレツ! オトナ帝国』が好きは好きなんだけど、ところが、作品としては『ヘンダーランド』が一番だと思ってるんだよ。
 唯一のホラー作品で、とにかく悪役のスノーマンというのがメチャクチャ怖いんだけどさ。

 最後、しんのすけは、すごい恐怖が待ち受けているとわかっている中、ヘンダーランドに1人で行くんだけどもさ。そこで「5才児が1人で家で準備して、いよいよ向かう」という描写があるんだ。
 電車にも1人で乗って、切符の買い方を駅員さんに聞いて、ボタンを押して買って、座席に座って。
 最後、トラックに乗せてもらってヘンダーランドまで行くんだけど、そこから降りる時にも、「どうもありがとうございました」ってちゃんと真面目に挨拶して、ヘンダーランドに乗り込んで行く。
 この辺の「5才児が1人前に成長していく」というところを見せたという意味で、実は『クレヨンしんちゃん』の劇場版って、『ヘンダーランド』の時点で一度終わってるんだよね。
 あそこまで描いちゃったら、一度終わっちゃってて、その後、ひまわりが生まれてからの劇場版というのは、いわゆる「パート2続編モノ」という『Zガンダム』的な役割だと僕の中ではなってるんだ。
 まあ、そんな中でも、また一時期、『戦国』とか『オトナ帝国』という異常な作品が生まれたりしたんだけど。ただ、『クレヨンしんちゃん』というお話自体は、もう『ヘンダーランド』で完成しきっているというふうに、僕はちょっと思ってます。

 そんな感じで、今回の『ドラえもん』は「他のキャラと絡まずに、1人1人が決意して、1人で行動する」というスタンスを見せてくれた、すごい作品だと思います。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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